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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第1章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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【閑話】排出物利用研究ノート ~善意と便意の狭間における倫理観~

「あっマスター、ただいま戻りました!

今日はオーク2匹に、ボア3体狩れました!

今、食堂で解体してもらってます!」


トーマスが上機嫌で報告してくる。

後ろには採取班の面々もぞろぞろと続いていた。


ダンジョンのポイント換算は“部位ごと”ではない。

そのため結果的に、肉の上等な部分ばかりが囚人たちの食卓に並ぶことになる。

効率的には正しい。

だが、どうにも腑に落ちない。


――と、ふと気づく。

彼らが手にしている袋から、妙な臭気が漂っている。


衛生管理バッチリのダンジョン内で、あの匂いはおかしい。

まるで汚物を大事に抱えているようだ。


「……お前ら、その袋、なんだ?」


トーマスが笑顔で答える。


「えっ、う◯こですけど?」


汚物だったーーーーー!!


「なんでわざわざう◯こ持ち歩いてんだよ!!」


「だって、マスターが言ってたじゃないですか。

“排出物はダンジョンにとって有益”って!

だから、無駄にしないように、採取中に出した分は全部持って帰ってきてるんです!

……さすがに小の方は液体で管理難しいので、やめてますけど」


採取班全員が、誇らしげに頷いた。


「もしかして……“おしっこ”持って帰ってこなかったから怒ってます?」


――そっちかよ!!


俺が元凶なのは確かだが、

この方向で真面目に努力されると、なんかもう負けた気がする。


「……いや、いい。気持ちは分かった。

でもな、もうその場に放置で構わん。

頼むから、持って帰ってくるな」


「えっ、でもポイントが――」


「いいから! 俺のポリシーに反する!」


「……わかりました。じゃあ、次からはダンジョンに帰るまで我慢します」


「……いや、無理すんなよ。

漏らしたら元も子もないからな」


――何故か、とてつもなく疲れた午後だった。


【衛生指針】排出物持ち帰り制度:即日廃止

【理由】精神的疲労過多/管理コスト過大

合理を突き詰めた結果、善意がトイレを越えた回。

真面目に頑張る彼らを叱れない俺が一番の敗者かもしれない。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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