快楽支配完成報告 ~幸福経済圏の構築と倫理的均衡~
支配が完了して一週間が経った。
奴隷には「休日」という概念がないらしい。
毎日、囚人たちは鉱山で掘削作業に勤しんでいる。
今日は職場見学でもしてみよう。
「エリザベートも行くか」
「お供いたします」
てなわけで掘削現場に来たわけだが――
……皆、健康ランドセットのまま作業してるんですよ。
うん、知ってたけどね。
昔の炭鉱も裸同然の格好だったらしいし、まぁ理にはかなってる。
俺、たしかにこう言った。
「着終わったら脱衣所にそのまま投げ入れてくれればいいぞ」
(寝汗もポイントになるから、洗うより生成した方が早いしな)
……でもさ。まさかそのまま“作業着”になるとは思わないじゃん?
「着替えずそのまま作業に入れるので便利です!」
って笑顔で言われちゃったよ。
もともと気にしてなかっただろうけど、
俺が髪の毛ダンジョンの餌にして皆坊主頭だから寝ぐせもないしな。
皆、見た目だけなら健康優良囚人って感じだ。
それでも上着そのままは危ないらしく上着無理やり短パンにインしてるのも
余計おかしい恰好になってるぞ
掘削現場は十人が掘り、十人が片付け、十人が運び出す――そんな分業制。
今は六人を採取班に出してるから、八人体制で回してるらしい。
「まぁ、頑張れよ」
「はい、体調いいし、みんなギスギスしてないので作業も円滑です」
(安眠の催眠と鎮静の催眠の効果だな)
アンガーマネジメントでは「6秒待てば怒りは消える」って言うが、
エリザベートの催眠なら“怒る前に冷静”になる。
眠気を軽くかけ、自我は残す。
だから自分で判断してる気になって、結果的に催眠が深く効く。
俺が与えるのは“行動の指針”だけ――善悪の判断は全部、俺寄り。
掘削場でジャックを見つけた。
「ジャック、ちょっといいか。商売の話だが、もう少し待ってくれ。
販路が開いたらお前の出番だ。」
「了解しました。楽しみにしています。
今はハンマーを振り下ろすのが楽しいので、大丈夫です。」
(眷属化した時点で、30代の全盛期の肉体に戻ってる。
もともと思うように動かない体に悩んでた分、
今の体が“動く”ってだけで楽しいのは当然だろう。)
食事に関しては、調味料を「塩・胡椒・砂糖・唐辛子」支給。
肉は採取班が持ち帰る分で十分。
卵も一人一日二個(この世界では高級品だ)。
以前の食事は「堅パン・具なしスープ・干し肉・ドライフルーツ」。
今は――
発酵不要の柔らかい平焼きパン、骨で出汁を取ったスープ(当然、使用後の骨はダンジョン行き)、
塩コショウで焼いた肉が二切れ、目玉焼き
山のフルーツか、簡単デザート(プリンが一番人気)。
……まぁ、そりゃ喜ぶよな。
厨房担当も忙しそうだが、楽しげにやっている。
そのうちレシピも少しずつ教えてやるか。
あ、ちなみにエリザベートも最近一緒に食事を取るようになった。
「美味しいは正義」らしい。
こうして、順調すぎる一週間が過ぎていった。
【モード】等価交換モデル(安定稼働)
【新規契約】鉱山班物資協定/次回納付期:1か月半後
【入手魔素】月16万前後(血・髪・滞在・生活循環含む)
【生産対象】鉄・魔鉄・魔石(生成補填)
【経済効果】稼働率+18%/魔素循環効率+12%
【生活状態】快眠・快食・快労働
【備考】催眠による労働安定化。囚人満足度上昇中。
“幸福は最強の拘束具”――
この章で、主人公の支配体系はついに完成を迎えました。
恐怖ではなく、安心。
暴力ではなく、快適さ。
義務ではなく、習慣。
人間たちは“自分の意思で従っているつもり”で、
実際には、主人公の構築したシステムの歯車として動いています。
そして彼自身は、それを“善”とも“悪”とも思っていない。
ただ、世界を最も合理的に回す方法として実行しているだけ。
エリザベートはそんな彼を観察し続けながら、
いつしか“人間の幸福”に興味を持ち始めています。
「美味しいは正義」という一言――
それは、吸血姫が初めて理解した“生の喜び”の兆し。
次章では、いよいよこの秩序が外の世界に波及し始めます。
ダンジョンの経済が、領地、そして国家を飲み込む予兆です。
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読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。




