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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
序章 目覚めと観察の記録  ~ダンジョンという名の理性が生まれた日~

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初期構造形成記録 ~最初の空間と自我の確立過程~

どれだけの期間、根を伸ばし、魔素を蓄え続けたのか分からない。

ただ――自然と理解した。

「……これで十分ってことか」

何故かわかるダンジョンポイント:1,000,5323

(ポイントが100万を超えたから、“成長モード”から“行動モード”に切り替わった?)

(あのまま一生、成長だけして終わる種もいるんだろうな。

世の中の魔素を吸収するだけの存在。

要は世界の中では邪魔な存在って事なのか?


 神――いや、あの“上”からも「それでもいい」という感覚が伝わってくる。

 ……まあ、せっかく転生したんだ。俺は楽しませてもらうさ)


「――じゃあ、やりますか。ダンジョン生成」

脳内でそう宣言した瞬間、

体の内側から魔素が抜けていく感覚が走る。

暗闇が弾け飛んだ。

圧し掛かっていた土の重みが消え、俺の“内側”に空間が生まれる。

高さ二メートル、広さ五平方メートル。

小さな空洞だが、これが俺の“最初のダンジョン”だった。


驚いた。


床から天井を、天井から床を、壁の裏側までも――

いくつもの視点が同時に存在し、しかもそれが矛盾せず頭に入ってくる。

「……すごい。まるで、神になったみたいだ」

全能感に震えた。


――五分で飽きた。


神の視点、案外退屈である。


部屋は真っ白だった。

雪より白い壁、淡く光を返す床、無機質な天井。

そしてその中央に、虹色の宝珠がぽつんと転がっている。

――ダンジョンコア。


分かった。俺はこの宝珠そのものだ。

そして同時に、この部屋全体でもある。


宝珠は“心臓”。

部屋は“肉体”。

二つを合わせて、初めて“俺”となる。


つまり――

俺は、ダンジョンコアであり、ダンジョンそのものでもあるのだ。

もっと荘厳に祀られているのかと思いきや、

現実は殺風景な部屋の真ん中に、無防備に転がっているだけ。

「……いや、せめて台座くらい、あってもいいだろ」

小さくぼやきながら、俺は決意する。

ここから、“俺のダンジョン人生”が始まるのだ。








ダンジョンは闇の底で目覚め、初めて“自分”を認識しました。

それは誕生でも、祝福でもなく――ただの起動音です。


世界は淡々と稼働していて、

彼はその一部として動き始めただけ。


けれど、この小さな空洞から見える景色は、

確かに“始まり”の光を持っています。


人はこれを奇跡と呼ぶのかもしれないです。

彼にとっては、ただの仕様変更ですが。

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