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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第1章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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水利設計計画書 ~衛生基盤整備における優先順位分析~

「次は風呂だ」

思わず呟いた。

いや、トイレがあるなら当然次は風呂だろ。

「そこに作ろうかな?」

入り口にトイレを設置したのは、鉱山で働く連中が“仕事中でも気軽に使えるように”という配慮だ。

「風呂は入り口付近には必要ないよな~」

出入りするたびに湯気が逃げるのは嫌だし、衛生的にも落ち着かない。

だから風呂は、奥に作ることにした。

……その前に。

「そんなに使わないと思うけど、食堂と厨房を作るか」

トイレと食堂の間の壁は厚めにしておこう。気分の問題だ。

少し余裕をもって四十人程度使える仕様にする。

会議用長机(1.8m/二人掛け)

折り畳み椅子40脚

広さは余裕をもって100平方メートル

厨房は10メートル四方

「生成――食堂、厨房」

床が振動し、岩壁がみるみる整っていく。

調理台、魔力コンロ、魔法冷蔵庫(低温維持魔法付き)、そして長テーブル。


「完璧だな……うん、完全に社員食堂」

「社員?」

「ダンジョン所属の仲間たち。つまり社員だ」

「……初めて聞きました、その概念」

紅い瞳がわずかに瞬く。

理解はしていないが、とりあえず受け入れてくれたようだ。

________________________________________

さて、これで心置きなく風呂に取り掛かれる。

とりあえず男湯だけで済むのは……ラッキーなのかアンラッキーなのか、微妙なところだ。

まずは脱衣所。

広さ10m×5m

縦50cm×横1mの棚を7×7並べよう

「……棚の数が多いですね。そんなに入浴するのですか?」

「働く人は汗をかく。風呂があると労働効率も上がるんだよ」

「……労働効率?」

「清潔は士気を生むんだ」

「……理屈は理解しましたが、妙に情熱的ですね」

________________________________________

で、肝心の風呂場だ。

まずは大きめの泉、20m×20m

次に熱湯の泉、10m×10m

両方から水を流し込んで、10m×10mの大浴場を作る

大浴場には風の魔法で強めの水流を起こして――ジェットバス化!

「……風呂で戦闘訓練でもされるのですか?」

「違う! これはリラックスだ! 文明の象徴だ!」

「……理解不能です」

「いいんだ、そのうちわかる」

________________________________________

さらに、前世との違いを出そう。

「中で体をこすることを“義務”にする!」

「義務……?」

「垢スリだ! 全員に支給予定!」

「マスター……その“アカ”というのは何ですか?」

「人の皮脂と老廃物が混ざった――まあ、汚れだ」

「……汚れを収集するのですか?」

「そう、有機物は魔素が高い!」

エリザベート、完全に目が点になる。

だが俺は続けた。

「つまり、廃棄物も垢も全部魔素に換算できる!

 “塵も積もれば山となる”――略して“チリツモ”ダンジョン運営だ!」

「……“チリツモ”……?」

紅い瞳が小さく揺れ、理解不能のまま復唱する。

そして、少し考えたあと、ぼそっと呟いた。

「やはり理解不能です」

________________________________________

仕上げにミストサウナを追加。

2m×2m×2mの密室を作り、火と水の魔法でミストを発生させる

休憩所にはベンチ5個

洗い場・石鹸等は不要。ダンジョンがすべて分解吸収してくれる。

湯気が立ち上り、岩肌がしっとりと光を返す。

香りはほんのりミネラル系。

「おお……完璧だ……!」

「マスター、これは……」

「そう、“ダンジョン温泉”だ!」

(実際は温浴効果ないだろうから銭湯って言うべきなんだろうけどね)

「……温泉?」

「人を癒やし、魔力を回復し、そして垢で魔素を稼ぐ万能施設!」

「……なるほど。理解しました」

「おっ、珍しくすんなり!」

「ですがやはり、発想が狂気的です」

「褒め言葉として受け取っておく」

________________________________________

【現在のステータス】

項目内容

ダンジョン名鉱山拠点「第一巣」

新設備食堂・厨房・脱衣所・大浴場・ジェットバス・ミストサウナ

効果清潔維持・魔力回復(微)・魔素回収効率上昇(垢補正+1%)

ボス吸血姫エリザベート(理解不能度+50%/好奇心+10%)



文明というのは、剣でも魔法でもなく、

水回りから始まる。


食べて、流して、洗って、また働く。

命を回す仕組みさえ作れれば、世界は勝手に回る。


“聖域”と“便所”の境界線なんて、

案外、紙一重なのかもしれない。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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