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ダンジョンの社会的貢献を目的とした地位向上のすすめ ~奪わず与え従え支配するダンジョン育成記~  作者: 不可思議 那由多
第1章 対外接触と社会実験の始動 ~循環構造の外部展開と制度設計の初期実装~

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夜間作業報告 ~混沌下における秩序構築手法~


しまった。

俺としたことが――こいつらの寝床、用意してねえ!

蜘蛛たちが全員きれいに拘束してくれたのに、

すっかり満足して頭から抜け落ちていた。

いや、初仕事だし仕方ない。うん、たぶん。

「……色々聞きたいことはあるが、先に帰るか」

________________________________________

「エリザベート、その三十代の男、拘束を解いて連れて帰れるか?」

「催眠状態にあります。歩行指示を出せば、問題ありません」

初仕事を終え、ほっとしたのだろう。

大分緊張が解けた声色で返答が返ってきた。

「よし。じゃあそっちは任せた。俺はジジイの方を担当しよう」

看守の部屋からナイフを拝借し、二人の拘束を解く。

老人――ジャックは立ち上がろうとしたが、足がふらついている。

「……こりゃ無理だな。仕方ない、抱えるか」

骨の腕でそっと持ち上げる。思ったより軽い。

「エリザベート、羨ましいとか思ってもいいぞ?」

返事はない。

無表情でトーマスを歩かせている。

……まるで屍(または照れ屋)である。

他の囚人たちは、蜘蛛たちに引き続き監視を任せた。

今夜くらいは大丈夫だろう。

というわけで――ダンジョンへ蜻蛉返り。

おかえり、我が家。

________________________________________

「エリザベート、こいつらの事情を聞いておいてくれ。

 多分囚人だろうけど、罪の重さによっては扱いを考えないといけない」

「……了解しました」

紅い瞳が淡く光る。

彼女が静かに口を開くたび、催眠下の二人の口がゆっくり動いた。

________________________________________

【トーマス(26)】

•元冒険者。

•幼馴染と共に活動していたが、彼女が負傷して引退。

•その後、仲間運が悪く、酒の席で喧嘩。

•一発殴ったら、相手が不運にも死亡。

•罪状:過失致死。

•量刑:鉱山奴隷5年。

「……典型的な脳筋だな」

「はい。思考経路が単純。暗示抵抗も低いです」

「褒めてるのか?」

「事実です」

________________________________________

【ジャック(70代)】

•元行商人。

•小商会を営んでいたが、番頭に資金を持ち逃げされ破産。

•借金返済不能で奴隷落ち。

•現在は病気で衰弱中。

•量刑:懲役12年。

「量刑が重いのは借金奴隷ってことか。

 命より金の方が重罪って、世知辛いね」

「……」

沈黙。

特に感想もないのだろう。

そこまで人類の世情に明るいとは思えないしね。

________________________________________

「ま、どっちも悪党って感じじゃないな」

「はい。魔素汚染の反応もありません。……再利用、可能です」

「言い方怖いって」

「事実です」

________________________________________

「じゃあ今日のところは休ませよう。

 部屋の隅に寝かせて、蜘蛛さんを二体新たに生成し、軽く糸で縛っておく」

「了解しました」

彼女が指を動かすと、床の魔法陣から細い糸が伸び、

二人をゆるやかに固定していく。

「エリザベート、初仕事お疲れ様」

「……私は、命令を遂行しただけです」

「それでも“助かった”んだよ」

短い沈黙。

彼女はほんの一瞬だけ視線を落とし、

掠れるような声で答えた。

「……了解。……ありがとうございます、マスター」

________________________________________

紅い瞳がわずかに揺れた。

そこにあるのは、まだ曖昧な心の残響。

恐怖と困惑――

そして、初仕事を無事終えた達成感に滲む、かすかな安堵。

________________________________________

【現在のステータス】

項目内容

種別ダンジョンコア(スケルトン融合体)

ダンジョン名鉱山拠点「第一巣」

ボス吸血姫エリザベート(覚醒段階:Ⅱ)

支配対象トーマス/ジャック(催眠安定・尋問済)

状態捕獲・監禁安定、眷属休息中

備考初の“人間捕獲”完了。ボスの情動反応:安堵+微感情形成。




初仕事のあと、思ったよりも現実的な問題が多い。

寝床、管理、設備、そして――感情。


支配より難しいのは、生活を回すことらしい。

感情を扱うのも、魔力を扱うのも、案外似たようなものだ。


どちらも、少しのバランスで壊れてしまう。


だからこそ、面白い。

壊れたらまた作ればいい――

俺の“突貫工事”は、きっとこれからも続く。


※感想・ブクマ励みになります!

読んでくれる一人ひとりが、このダンジョンの“魔素”です。

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