どうやら私、今日、婚約破棄されるみたいですね
どうして侯爵系と王族の婚約破棄を行うのでしょうか。わざわざ誕生日パーティで。王家の未来が心配です。あとついでに元実家の未来も心配です。よそ様に迷惑をかけなければよいのですけれど。
「ミネアさん。事情をお聞かせくださいますか?」
ある朝、私は傍付きのメイドから奇妙な質問をされました。頭おかしいのでしょうか。まずは朝の挨拶をするべきでしょう。あと仕える主人に対してさん付けはおかしいと、私ずっと前から思っていたのですが直してくれませんね。
「おはよう、シャーリ」
眠け眼を擦り挨拶をしますが、シャーリは応えてくれません。おかしいですね、耳が遠いのでしょうか。
「事情をお聞かせくださいますか?」
「何の事情かしら」
「しらばっくれても無駄です。屋敷の使用人は全員知っているのですよ」
「いえ、だから。何の話か見当もつかないの。まずはそこを教えてくれるかしら」
はぁとワザとらしくため息をつくシャーリ。貴女の態度は侯爵令嬢の傍付きとしてはおかしいのだと何度も伝えたのに、態度が変わりません。彼女は時々耳が聞こえなくなるのでしょうか。この3年間、ずっと不思議で仕方ありません。
シャーリが渋々と教えてくれた話は、婚約破棄の話でした。トルマリン侯爵家の長女である私は、数日後の誕生日パーティで第2王子で在らせられるカイト様との正式な婚約を発表する予定です。恐らくは、その発表を取り止めるという事でしょうか。前世でよく読んでいた婚約破棄ものを思い出してしまいます。
「私は存じませんが、カイト様がそのおつもりであれば私に拒否することはできませんわね」
「婚約破棄されたミネアさんに何の価値があるというのですか? 私の将来はどうなるというのですか?」
「さぁ」
「さぁ、って」
婚約破棄をされても私は侯爵家の令嬢であることは変わりません。シャーリの将来は、シャーリの行動次第で大きく変わるのでしょうが、それについて私に出来ることはもうありません。
いつものように手伝いもしないシャーリを捨て置いて身支度を整えます。
「シャーリ。本日の予定はどうなっていますか?」
「自分で確認してください」
「それもそうね」
傍付きの仕事は多岐に渡るのですが、シャーリは一つもした事がありません。不思議ですね。何故シャーリが私の傍付きになったのでしょうか。政略結婚だったお母さまの娘だから、でしょうか。
お父様は側室のファティマ様に与えたお屋敷で1年の殆どを過ごされていますし、ファティマ様の娘をとても可愛がっていると聞きます。とても定番の、恋愛は地位の低い側室と行う、と言う物ですね。幼い頃からお父様の傍付きをしていた侍女を側室に、そして寵愛を全て注ぎ込む。実に恋愛ものの定番ですね。
私のお母さまもお父様に愛を求めていないようで、若い男性が常に傍にいます。贅沢三昧は見ているだけで胸焼けをするほどですけれど、どうして悪趣味なドレスばかりお母さまは買うのでしょうか。お母さまの美的センスに幸あれと、毎晩祈っています。
私はこの世界に転生しました。前世は日本人で、30代の女性。仕事は毎晩大変だったと記憶しています。転生したばかりの頃はもっとはっきりと覚えていたのですが、10年以上もこの世界で暮らしていると殆ど思い出せなくなりました。
現代知識チート、と言う物は行いませんでした。協力してくれる味方は私の周りにいませんでした。だから、何をしても全て横取りされたでしょう。それに侯爵令嬢として学ぶことがあまりにも多く、他の事をする余裕がありませんでした。お嬢様の生活を甘く見ていたというのが、この世界最初の教訓でした。
屋敷の中は掃除をする使用人がお喋りをし、庭の手入れはされず、私は誰からも無視をされていました。無視をしないのは教育担当の先生方と料理長だけ。そう気づいた時には悲しくなりましたが、1年で慣れました。ネグレクト上等です。自分のやりたいように出来ると考えれば、実に良い環境です。
それから数日、誰も手伝ってくれない中で誕生日パーティの準備を進めていき、当日を迎えました。何も言わなければサボる使用人も、お父様に目を付けられる事は怖いのでしょう。誕生日パーティの様な催し物では働き者の振りをして駆け回ってくれています。
パーティの客がやってきて、料理とワインで客を迎えて、招待客が全員揃いました。
「皆様、本日は私の誕生日パーティに来て頂き、嬉しく思いますわ。今後とも、トルマリン侯爵家と仲良くして頂けましたら、私はもっと嬉しく思います。さて、堅苦しい話はここまでにして。皆様、本日のパーティ、ぜひ楽しんでいってください」
主催者としての挨拶をすれば、あとはもうワインを飲んで料理を食べるだけです。寵愛の無い長女、寵愛を受ける次女。社交界で知れ渡った常識のおかげで、誰も私に話しかけようとしてきません。
ちらと視線を向けると、妹がいました。次女のアクアマリンはカイト様と並んでパーティ客とお話ししていました。あらあら、まるで貴女が本日の主役の様ですね。カイト様と並んでいる姿は、まさに婚約者。つまり、これも定番なのでしょうね。
会場の空気が盛り上がり、メインイベントがどうやら始まるようです。カイト様に呼ばれるまま、私は一段高いステージにやってきました。
「シャーリ! 本日をもって、お前との婚約を破棄する!」
「あら、おめでとうございますカイト様」
しんと静まり返る会場の空気。まぁ婚約破棄を目の当たりにすれば、誰でもそうなりますね。
「何がおめでとうなのだ?」
「いえ、アクアマリンと婚約なされるのでしょう?」
「そ、そうだ! お前なんかと違って」
他にも何か仰っていましたが、定番の台詞すぎて途中で飽きてしまいました。アクアマリンは大人しそうな顔をしてカイト様の腕を抱いていますが、本性を知っている私からするとどうぞお二方お幸せに、という感想です。
カイト様の宣言を聞き、投げられたワイングラスを避けた後、パーティの再開を告げて私は会場から出ていきました。その足で私は自室に戻り、準備していた自分用の宴会料理を食べます。ローストビーフ、ロールキャベツ、コーンスープに川魚のマリネ。料理長に再現してもらった料理は会場でも評判でしたが、料理長も粋なことをしました。あんな塩気も出汁も薄い料理を出す嫌がらせをする程度には私の味方でいてくれたようです。
もちろん自室に運んである料理は下処理も塩気もしっかりとしていて、頬が綻んでしまいます。
「明日からは大変そうですね。今日ぐらいは我儘に過ごしましょう」
トルマリン家の葡萄園で作られた最高級ワインを飲むと、深い葡萄の香りの後に熱いアルコール特有の喉越しが訪れます。今日はいい夢が見れそうです。
誕生日パーティから半月が経ちました。今の私はもう侯爵令嬢ではありませんでした。王都から馬車で三日の距離にある小さな町にやってきて、小料理店で働いています。店に主人は、トルマリン家の屋敷にいた料理長。私の悪だくみに付き合って、一緒に追放されてくれました。他にも数名のメイドが私についてきてくれました。私はどうやら、私が思っていたよりも味方が多かったようです。
料理長が作る料理は安くて量の多い大衆料理、塩気の強い労働者向けの料理、少し贅沢な肉料理と魚料理、個室で食べられる高級料理と実に幅広いものです。朝と昼は多くの客で賑わい、夜は少しお高い料理でゆったり楽しむ。屋敷で料理関係の仕事をしていた料理長とメイド数名は、実に有能でした。目利き、値引き交渉、皿洗いを含めた雑用。実によく働いてくれます。
私も負けじと働いていますが、専門家の動きにはなかなかついていけません。ですので私は私なりに店に貢献をしてます。例えば、トルマリン家の葡萄園で働く人たちとは仲がいいので、品質がやや落ちてしまったワインや型崩れの葡萄を安く仕入れさせてもらっています。トルマリン家の領地は広く、羊牧場もあれば農園もあります。側室の屋敷にこもっていたお父様の代わりに私が仕事をしてきましたので、とても仲良くさせてもらっています。
これも現代知識チートになるのでしょうか。単に働く人を労い、褒めただけなのです。道具が壊れて困っていると聞けばトルマリン家の資金で直し、獣害で畑が荒らされたと聞けば柵の補強と獣の討伐を行いました。本当に、それだけのことでとても喜ばれました。
その甲斐あって、私は今でもトルマリン家子飼いの傭兵団を含めた、様々な人と仲良くなりました。給金は惜しまず、出来ていない所は注意をし、出来た所は褒める。本当に、それだけしかしませんでした。
それだけで、小料理店が大繁盛しました。
ある晩の事です。明らかに身分を隠しているお客がやってきました。
「この店の料理は旨いと聞いている」
「そうなんだ?」
元侯爵令嬢であることを隠しているため、私は言葉遣いをとても崩しています。私の態度が気になった、たぶん護衛の騎士たちが不機嫌そうにしています。
「個室のお客さんは高くておいしい料理が食べられるよ。ああ、でも。この店は何でもおいしいから、お金が無くても大丈夫だからね!」
「おい貴様!」
少しからかってみようと悪戯心が沸いてしまいましたが、仕方ありません。推定貴族の男性が推定護衛の騎士を止めてくれた後、何も知らない様子でそれを眺めます。
「それで、お客さん。お金いっぱいあるなら、個室がおすすめだよ」
「では、個室へ案内せよ」
「はいはーい。店長ー! 個室3名~!」
口調からすると貴族確定のお客様を案内します。さすがに王族がお忍びで来るほどのお店ではないので、子爵の人でしょうか。上客なら身分は気にしません。今日もいっぱい稼ぎましょう!
私が侯爵家を追放されてから半年が経ちました。たったの半年で、私の店はとても繁盛しました。レシピ強盗未遂事件があってからは店を改装して大きくし、その分だけ傭兵団の人を何名か店員兼護衛として雇うことにしました。特に年下傭兵のイディス君は毎日元気に働いてくれています。最近は頭を撫でようとすると嫌がるので、少し残念です。でも撫でるのを止めるとしょんぼりする所が可愛くて、つい意地悪をしてしまいます。実にかわいらしい自慢の弟分です。
レシピ強盗未遂事件以外にも、色々とありました。実家の嫌がらせで仕入れ値が倍以上に上がったこともありました。葡萄などの原材料が値上がりしたので、砂糖漬けや濃縮果汁などの加工品の形で仕入れる事で上手いこと対応できてよかったです。
その関係で自称旅の商人と出会いました。時々もらす一言から、貴族と関わりのある商人だと気づいていますけど、きっと向こうも私が元令嬢だと気づいているでしょう。彼との会話はとても楽しいですし、冷や冷やします。腹の探り合い、身分の隠し合い。刺激の少ない小料理店の日常と比べると、とても刺激的で少し癖になってしまいそうです。
もちろんと言うのか、意外というべきか。例の護衛を連れた推定貴族の人もいます。月に1度くらいの頻度で、ふらりとやってきます。この人は自称旅商人とは別の意味で刺激的です。迂闊なんです、この人。ついうっかりで自分の身分がばれる様なことを口にします。冗談とはいえ、こくぼにならないか、とは何ですか。国母ですか? 王族が気軽に遊びに来るお店ではありませんよ、ここは。知らぬは推定貴族の人だけ。お陰で苦労性な護衛二人の方とは仲良くなれました。本当に、毎度毎度お疲れ様です。
私が侯爵家を追放されてから1年が経ちました。大きな事件もなく、平凡な日々です。私の小料理店では週三日制度で余暇の多い業務形態にしています。私の場合は残り四日で仕入れ先への訪問や簿記の真似事をして店の経営状況把握、新商品開発をしています。新商品と言っても作り置きで日持ちする物が殆どのため、日々の業務はあまり変わりません。季節のフルーツを砂糖や蜂蜜漬けにしたり、旬の魚を仕入れて塩漬けや日干しにしたりですね。
娯楽が少ないので自称謎の旅商人を巻き込んでボードゲームを広めました。この世界の文明度は中世か近世ぐらいでしょうか。羊皮紙がありましたので、漫画専門の図書館を提案すると、謎の旅商人がひと月で漫画図書館を作ってくれました。以前から漫画の話をしていたので、準備を進めていたのでしょう。この世界に腐女子が生まれるのは何時になるでしょうか。耽美系の小説はありましたので、案外早いかもしれません。少し、謎の旅商人にこの話をしてみましょうか。きっとすごい顔をしてくれるに違いありません。
弟分な傭兵は、今日も気合の入った稽古をしています。狂犬というあだ名があるようですが、しっくりときます。この子はワンコです。お腹を撫でたらウレションしちゃうんじゃないかと思ってしまう位、ワンコです。餌付けに成功してしまったので、毎日私の手料理を食べたがっています。よく食べるので作り甲斐があります。何度かからかったおかげで、今では素直に頭を撫でさせてくれています。照れ隠しに顔を背けるところも、本当に可愛い弟分です。
年の頃は分からないですが、まだ15才位でしょうか。この世界ではこの位の年になると大人扱いされますが、前世の名残からかどうしても子供にしか感じません。私には背の高い中学生ぐらいの男の子を大人扱い出来ないですね。
この弟分、たったの1年でみるみると成長しています。成長期ですね。鍛錬で引き締まった体、傭兵仕事で馴染んだ野性味、笑うと子供っぽい所を含めると、予想外と言うのか予想通りと言うべきか。この子、とてもモテます。前に買い物に付き合ってもらった時も、町の若い女の子に声をかけられていました。逆ナンです。この世界では庶民も貴族も恋愛に積極的なので、隙を見せるとすぐナンパされるようです。ちなみに、私もちゃんとナンパされます。うちのワンコがすぐ睨みを利かせるので、一緒にいるときはナンパされないですけど。たぶん、私もモテてます。
謎貴族の人も、実に足しげく店に通ってくれています。最近は本当に迂闊がひどく、彼の話を聞くだけで貴族令嬢のお茶会に出ている気分になってしまいます。情報の種類は違うのですが、お酒が回ると本当に迂闊になられまして、貴族の愚痴を何度も何度も。謎貴族の彼が酔いつぶれた後は、護衛の方々の愚痴です。最近はこの方たちも迂闊です。尊い血筋の方であるとバレて居るなら構わないだろうと言わんばかりに、謎貴族の人への愚痴を零されています。実に迂闊です。私は貴族社会に戻ることが無いので聞いても意味がないのですが、本当にその話は私が聞いても良いのでしょうか。王宮の話が出ている時点で、高位貴族とわかってしまうのですよ。
謎貴族の人は本当に謎の人です。身分を明かすでもなく、愛人に来ないかと誘うわけでもなく。そうかと思えば毒見無しに食事をして護衛を困らせたり、お酒で酔い潰れたりします。迷惑な客、と言うほどではありませんが、元侯爵家令嬢の私からしても庶民になった私としても実に対応に困る人です。意識していないですけれど、私も釣られてうっかり令嬢の話し方をしているかもしれません。仕方ないですね。貴族社会の煩わしさは、私もよくわかります。この店でだけは普段を忘れて、存分に酔い潰れてください。まぁ、私のこういう対応のせいで彼が調子に乗って飲み潰れているのでしょうけれど、私は止めません。高いお酒を沢山飲んでくれる彼は、この店一番の上客なのですから。仕方ありません。
前世の事を思い出す頻度が、どんどんと減ってきています。田舎で暮らしていた人が都会で暮らすようになったならば、今の私の様になるのでしょうか。店員仲間と女子会を開いて恋バナをするのはとても楽しいですし、仕事も充実しています。前世では報連相以外で男性と会話をしてこなかった私ですが、今の私は仲の良い男性も何名かいます。薔薇に似た花束を持った男性にプロポーズされたことさえあります。だから前世を忘れたいわけでもなく、単に毎日が楽しいから思い出す頻度が減ったのでしょう。
それでも、今こうして前世のことについて考えた、考えてしまった理由があります。
「お前をマジで守れるの、俺だけだからな」
可愛がっていた弟分の意外な一面を見たからでしょうか。あるいは、薄々ながら気づいたからでしょうか。自称旅商人も、謎貴族の人も、女性に人気のある姿をしています。誤解を恐れずに端的に説明するなら、イケメンです。弟分はかわいらしい時期から知っているため遅れて気づきましたし。自称旅商人は普段顔を隠しているマフラーのようなものを外すと、あぁやっぱり美形だなと思う程度でした。謎貴族の人もかなり美形だと思うのですが。会うたびに変わる付け髭と付け眉毛のせいで顔全体の印象が残念イケメンになっていましたし、気づくのが遅れたとしてもきっと私のせいではありません。
現代知識で情報の重要性を知っているため、情報収集は欠かしません。庶民になってからも、貴族や王都の情報を可能な範囲で仕入れています。その関係で知りましたが、王立学園に庶民の学生が入学したそうです。話題になっている理由は、王立学園は基本的に大商人や貴族の子供が通う場所であるということ、入学した庶民の学生は見目愛らしい少女であること、そしてその少女は成績優秀であること。とある侯爵家の少女から一方的な対立の姿勢を向けられていること。女性嫌いで知られるとある侯爵家の長男がその庶民の少女と話をしている姿があった、など。
悪役令嬢ものか正統派学園ものの序盤の様な流れだな、と思いました。そうして前世を思い出した事でふと客観的に自分の状況を思い返した結果、私と親しい若い男性が何人もいることに気づきました、というのが一連の流れです。
気づいた所で私の生活は変わりません。私から見ても周りの人間は美男美女の比率が多いですし、中世ヨーロッパと呼ぶよりファンタジー世界と呼ぶにふさわしい文化や技術体系の世の中です。日々の忙しさで考える余裕がなかった、とはただの言い訳です。自分がまさか何かの創作物に似た世界で暮らしていると理解したくなかったのです。奇妙な話ですけれど、「貴女は小説のキャラクターです」と言われたくない不思議な感情を抱いていたのでしょう。
誰かの筋書き通りの人生、作られた運命。そう言った製作者の操り人形の生き方に拒否感を感じたのかもしれないです。
あるいは。私が彼らに抱いた感情が作者の予定通りだったらどうしようか。そう恐れる気持ちもあったのでしょう。私が現実逃避の傍ら忙しい日々を過ごしている間にも、彼らとの友好関係は強くなりました。友情か恋慕かはわかりません。前世を含めてまともに恋愛をした経験がありませんから。元メイドの子たちには気恥ずかしくて聞けていません。
「あと2年、ですね」
女性は25才は行き遅れとは言わないまでも、結婚適齢期15年遅れとなる世界です。前世では性差別と呼ばれるかもしれませんが、異世界の話なので受け入れています。それはそれとして、結婚適齢期から外れていく焦りは前世とは比較になりません。心なしか、私と親しい男性3名の圧力が増しているように感じます。
恋愛らしい初々しさの無い悩みですが、この焦りも楽しみましょうか。一言、これからの私に言えるのであれば。
「婚約破棄が怖いので、結婚を前提にしたいですね」
願わくば、この世界を作った作者の好みが婚約破棄でありますように。
冗談とも本気ともつかない、つまらない願い事を一つつぶやくと、自室を出ます。今日もきっと、謎貴族の方がやってくるのですから、気持ちを切り替えて働きましょう。ついでに恋愛に少しだけ前向きになって、生きていきましょう。
未経験ながら、恋愛はとても楽しいものらしいですから。