「制服とポテトと、新人の春」
五月。初夏の香りが漂いはじめる頃。
制服姿のツインテールがよく似合う女子高生、工藤遥が、明るい笑顔でバックヤードから飛び出してきた。
「いらっしゃいませ〜!」
店内に響くその声は元気そのもの。
ホットスナックの補充をしていた小崎が顔を上げる。
「……いやー、元気だなぁ」
「えっ、小崎さん、聞こえてますよ〜!」
「褒めてるんだよ?」
「ならよしですっ!」
新人らしいミスもまだあるが、接客に対する前向きさと素直さが、店の空気をやわらかくしていた。
「このレジ、ちょっと固いですよね〜。私、3回連続で引き出し閉まりきらなくて怒られたんです〜」
「僕も最初のころ、あのレジ閉めるたびに手挟んでたよ」
「うわ、それはそれで大丈夫ですか!?」
ふたりのやりとりを、飲み物棚の前にいた常連の大畠さんが、ふと足を止めて聞いていた。
「……なんだか楽しそうだね。君たち、いいコンビじゃないか」
遥は照れくさそうに笑いながら、ぴょこんと頭を下げた。
「ありがとうございますっ!」
「いえ、こちらこそ。若い子の元気な声は、こっちも元気になるよ」
夕暮れが近づいてきても、遥の明るい声は変わらない。
「いらっしゃいませ!……あ、大畠さん、今日はいつものパンでいいですか?」
「おっ、覚えててくれたの?うれしいねぇ」
頑張れ、小崎くん。
そして、工藤さん。
その明るい笑顔と声が、今日も誰かの一日を、ちょっとだけ楽しくしている。




