「おまけと、三人組と、とんち勝負」
「なぁー、小崎のおっちゃん! これとこれ買うからさ、もう一個おまけしてよ!」
「そうそう!俺らいつも来てんじゃん、ねー?」
「うんうん、常連割ってやつだよ!」
近所の小学生悪ガキ三人組が、元気よくコンビニに乗り込んできた。
「おまけかぁ……そうだなぁ、じゃあ有名な“とんち勝負”で決めよう」
「なんだそれ!やるやる!」
「OK。じゃあ問題!」
小崎はレジカウンターで腕を組み、厳かに言った。
「“この飴を一つだけあげても、おまけじゃないって言える方法は?”」
「え!?え!?どういう意味!?それってどうやったら——」
「ヒントは“言葉の使い方”。さぁ、3人で考えてごらん」
「うーん……『あげるけど、おまけじゃない』って言えばいい?」
「ブッブー。ちょっと惜しい」
「じゃあ“落としたやつ拾っただけ”とか!?」
「うーん、それだととんちじゃなくて嘘になっちゃうな」
三人が唸る中、小崎はニヤリと微笑む。
「答えは、“これを買ったら、この飴は『おまけではなくサービスです』って言う”」
「……なにそれ!ずるい!」
「煙に巻いたな!おっちゃん、ズルいぞ!」
「サービスとおまけってほぼ一緒じゃん!」
「でも“サービス”って言葉にした時点で、もう“おまけ”じゃないんだよ〜」
わちゃわちゃ騒ぐ三人の背後に、ぬっと現れる影。
「こら、お前らああああああっ!!!」
学校の先生らしき女性が、鬼の形相で現れた。
「またここで騒いで!通報される前に迎えに来たんだからね!」
「やべっ、逃げろ!」
「う、うそですごめんなさーーい!!」
三人はズルズルと捕まり、引っ張られていく……その瞬間。
「先生、この子たち、ちゃんとお金払ってお菓子買ってましたよ。とんちには負けてましたけど」
先生が少しだけ表情を和らげる。
「……ふう。小崎さんがそう言うなら、今日は多めに見ます。でも!次はないからね!」
「は、はいっ……!」
「べ、べつに、感謝なんかしてねーし!」
「お、おっちゃん、今日のはちょっとだけ面白かったかもなっ!」
「オレは……オレは……また来てやってもいいぜ?」
三人組はぶすっとしながらも、どこか顔が緩んでいた。
頑張れ、小崎くん。
今日も君の“とんち”が、誰かの心をあたためている。