プロローグ
小崎正則、25歳。
勉強も運動も才能も、そして運すらない——だけど人の良さだけは誰にも負けない。
中学卒業後、美容師の道を志し、専門学校に進学。
夢に向かって邁進していた……はずだった。
だが、突如として訪れた大病。
思うように体が動かず、夢を諦め、療養生活へ。
何もできず、外にも出られず、悔しくて、情けなくて、誰のせいにもできなくて——
けれど、そんな時間があったからこそ、彼は今ここにいる。
体調が回復したあと、小さな一歩として始めたコンビニのアルバイト。
それが、気づけばもう5年目。
愛車は、5年乗り続けるママチャリ。
チェーンはゆるくなり、カゴは少し凹んでるけど、まだまだ現役。
趣味はアイドルの応援。推しの笑顔を見ると、なんかもうちょっと頑張ろうって思える。
毎日同じ棚を補充して、同じレジに立ち、同じようなやりとりを繰り返す。
でも、その中には、ちょっとしたドラマがたくさんある。
学生が試験前にエナドリを買っていく日も、
常連のおばあちゃんが天気の話をしていく日も、
クレームを受けて心が折れそうになる日もある。
それでも、小崎は笑う。
笑って、へこんで、また笑って。
この世界は、きっと捨てたもんじゃない。
頑張れ、小崎くん。
その優しさが、きっと誰かの明日を変えている。
そして君自身の明日も、少しずつ、変わっていくんだ。