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帰り道の血溜まりに孑孑は湧く

作者: beatrice

 私が会社からの帰りに体験したことです。

 梅雨時の帰り道、日傘を差しながら独身女性の侘しい夕飯を詰めた袋を手に歩いていました。その日は今シーズン最強の寒波が押し寄せてくると朝のニュースで言っており、吐く息は白く熱中症になりそうな程に汗をかいていました。

 早く帰ってシャワーを浴びたいと思っているとオープンカーが猛スピードで向かってくる。

 ドライバーはこちらに気付いていないのか隣席に座った私に陽気に話しかけてきている。

 轢かれると思った時には身体は宙に投げ出され身体が砕ける音を聞きながら私は浴槽に横たわっていた。

 身体が動かない私たちを横目に両親と妹は心霊写真特集のラジオに聴き入っている。

 彼らの隣に移動して家族の会話に加わると私が定年を迎えた記念の写真を送ったらしい。

 校門の前に立ちウェディングドレスを着た私の隣には卒園式の立看板が掲げてあり、すっかり大きくなった妹が私の頭を撫でている。

 ラジオパーソナリティの女性は嗄れた声で「おめでたい写真ですね」と感心しきりで何が写っているのかを事細かに説明している。

 眠気を感じて柱時計を見ると2時76分を示している。

 妹は「子どもを寝かしつけてくるね」と言って、私の膝上に居座り母乳を啜る甥っ子の首根っこを掴んで張り替えたばかりの畳の上を引きずって行く。子どもは遊んでもらっているものと思ったのか木の幹よりも太い手足を振り回し、黒板を引っ掻いたような声をあげて喜んでいる。

 藺草の匂いはいつ嗅いでも良いもので専門学校でマウスの解剖実習をした時を思い出す。腹部の皮をピンセットで摘み、Uの字状に鋏で切れ目を入れて捲り上がる。

 その中には様々な臓器が宝石のように詰まっており見たものは皆黄色い叫びをあげていた。

 早いものであれからもう一年が経った。

 幼い頃から私にベッタリだった妹も今では立派な大人になり私よりも早くに結婚して第一子に姪を産みオープンカーを乗りまわしている。

 私も仕事が忙しく妹の結婚式には出席出来ず、妹の夫や子どもにはまだ会えていないのだが近々私の家を訪ねてくることになっている。

 妹が選んだ相手がどんな人であるのかを想像しながら大きくなったお腹を撫でる。かかりつけの先生に妊娠を告げられた時は驚いたものだが時折動く子が愛おしく、悪阻による吐瀉物ですら芳しい。

 そんな私を両親は気にかけてくれて背中をさすってくれたり、自らの身体から削ぎ落とした肉を振る舞ってくれる。

 この子を宿してから既に31週目となり、ますます仕事を頑張らねばとスーツに身を包む。

 古希を迎え骨格は折れ曲がり内臓が剥き出しになった夫は私を見送りに玄関まで軽やかにスキップをしてくる。

 天気はニュースで言っていた通り朝から雨が降っていて道のいたる所に血溜まりが出来ている。

 何かがその中を漂っているので覗いてみると孑孑が湧いている。その姿に自分のお腹に宿った子の姿が重なって愛しくなりそれを掌で掬いあげ朝食代わりに啜り飲む。

 今日も寒くなりそうだと思いながら梅雨が早く明けることを願って日傘を片手に会社を目指して歩き出した。

 

ただただ狂った文章を書きたくなりました。

彼女は永遠の同じ日を繰り返し、元の世界には戻れません。

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