プロローグ 5
「お帰りなさい、遅かったですねマスター。」
VRロビーに帰って来た俺に声を掛けてきたのは忙しそうに作業をしているナビーだった。
「ただいまナビー。えらく忙しそうだがどうしたんだ?」
ナビーは高速でプログラム画面を3つ同時展開ではしらせながら答えてくれた。
「マスターがミソロジーでイチャイチャしている間に、新規導入部分をスキャニングしていました。」
そう言って、ナビーは簡潔に今回の新規導入部分を説明してくれた。
ストーリーモード
今までに集めてきたデータを元にランダム生成されたVR世界を試験的に行う為、別サーバーでプレイする事になるらしい。
ただし、一部の既存データを反映させる事が可能らしく現在それを行っているとの事。
多積層階層システム
アナザーワールドシステムの根幹と言えるシステム。
俺のデータで話をすると、ミソロジーの世界を頂点に下位階層に新たな世界を構築する事が可能となるシステム。
ミソロジーのデータがそのまま反映されるので、一から構築する必要が無く、ミソロジーをUPdateさせていけばそのまま下位の世界にも反映される様になるとの事だ。
後は、各調整を行っていくことで新たな世界を気軽に造り出せる様になるシステムだそうだ。
これも試験的導入で別サーバーで行われている為、今回のUPdateは別サーバーの増設と試験導入によるストーリーモードと多積層階層システムの試験運用になってるとのこと。
要は、別サーバーにストーリーモードと多積層階層システムを準備したからテストプレイよろしく!ってことだそうだ。
ナビーは今、その準備をしているとのことだ。
じゃ~最初にミソロジーに行かずにプレイしてたらどうなったんだ?と聞いたら、初期状態でプレイしていたらしい。
コイツ…っと思いながら、適当に雑談をしているとどうやら作業が終わったようだ。
「マスター終わりました。」
ナビーはそう言って開いてた画面を閉じて説明してくれた。
「マスター、今回は別サーバーによるテストプレイがメインになっているそうです。
一応、既存データを反映させることが可能らしいのですが、こちらからデータを送るだけなのでどこまで適用されているかは不明です。
また、調整や修正などもこちらからそのデータを送らないといけない二度手間っとなっております。」
要するに今回は完全なテストプレイになっているみたいだ。
こちらから修正や改善点などを送りフィードバックするみたいだ。
俺は成程と思って、また一からやるのかと考えてら、どうもそうじゃないみたいだ。
ミソロジーの5倍のデータ量で構成されており、新しいオープンワールドみたいなゲームになっているらしい。
つまり、公式で作ったデータを元にこちらのデータと掛け合わせて自動生成される仕組みになっていて、公式が作ったゲームデータベースに自分の世界観を反映させて遊べるとの事だ。
「なるほど、多積層階層システムのテストも同時におこなってるんだな。」
どうゆう事かと言うと、多積層階層システムの下位世界の自動生成プログラムのテスト。
こちらからデータを送ることで反映されてれば成功ってところか。
ま~何せよ楽しみだ。
「マスター行かれるのですか?」
俺がログインの準備をしているとナビーが声を掛けてきた。
「あぁ。っても今日は疲れてるから様子見かな。本格的にやるのは仕事が休みの日にする。」
「了解しましたマスター。ではお願いが幾つかあります。」
そう言ってナビーは幾つかのお願い事を言ってきた。
・各種簡単な動作確認。(歩く・走る・ジャンプ・しゃがむ等)
・各種攻撃モーションの確認。(剣や槍・魔法等のモーション確認)
攻撃モーションや動作はオリジナルを弄って好きなモーションに書き換えてるから反映されてるか確認して欲しいそうだ。
特に弓や魔法などといった遠距離攻撃は挙動がおかしくなりやすい為、何回もやって欲しいそうだ。
次にアイテム関連
・アイテムの使用や性能・効果等
・生産時の挙動や効果の有無等
・建築時のディテールの反映等、多岐にわたってお願いされた。
「ナビーさんや…それって、デバッグ作業ですよね…」
「違います。」
「いや、どうみても…「違います。」」
「…」
「違います。」
「いや、何も言ってないんだが…」
どうやら、頑なにデバッグ作業だと認めたくないらしい。
機嫌が悪いのだろうか?
AIにそんな感情があったかな?
まぁ~そんな馬鹿なことを考えながらログインの準備をするのだった。
「ナビー、今日は疲れてるから全部はできないぞ?」
「分かっております。あくまでもお願いなので、全てやってもらうのは次回以降になります。」
次はデバッグ作業なのね…
俺は愕然としながらログインするのだった。
「んじゃ~いってくる。」
ナビーに声を掛け、目の前に現れた画面に「データの引継ぎを行いますか?Yes・No」の画面が現れ、俺はYesを押してストーリーモードを始めたのだった。