プロローグ 4
倉庫街に着いた俺たちはアイテムや素材の補充と整理を行っていた。
整理を行っている最中、ゼロが話しかけてきた。
「ご主人様、この後はどうなさいますか?」
おそらく、少しでも気を引きたかったのだろう。
しかし、夜勤明けで疲れている上に、新しい機能の確認も早く終わらせて寝たいと考えている。
今回はゼロには諦めてもらおう。
「そうだな…夜勤明けで眠いから、動作確認と新たに追加されたものを確認したら寝るつもりだ。」
俺は作業を続けながら答えた。
「そうですか…わかりました。」
ゼロは少し寂しそうに返答し、黙々と作業を続けた。
俺はそっとゼロの後ろに近づき、優しく後ろから抱きしめた。
ゼロは作業を続けつつ、俺の腕に抱きしめられて少し驚いた様子だった。
「すまないな。かまってやれなくて。」
ゼロは作業を中断して、腕に触れる俺の手を見つめながら微笑んだ。
「いえ、ご主人様が疲れているのはわかっています。でも、寂しいです。」
そう言ってゼロは俺の腕に身を預けるようにしてきた。
「お前はいつも俺に尽くしてくれるな。」
「それが私の存在意義ですから。」
ゼロは俺の腕に身を預け、目を閉じて安らぎを感じているようだ。
周囲を見渡すと、部屋の光が彼女の黒髪を照らし、穏やかな雰囲気が漂っていた。
倉庫街の中でもこの場所は特に静寂で、心地よい風が心を落ち着かせてくれる。
しばらく2人のこの時間を堪能するのだった。
「お手数をおかけして申し訳ございません。」
そう言ってゼロは俺の腕から離れた。
「いつも凛として真面目なお前にしては珍しいな。何かあったのか?」
そう、いつも真面目で凛としているゼロがここまで自分の弱みを見せて甘えてくるのは珍しいのだ。
一番最初の眷属であるゼロは眷属の中では「母神」に位置する。
つまりゼロは俺の次に偉く、このミソロジーの世界の中では一番偉い存在になる。
なので、常に真面目で凛としており、皆の母親的存在にあたるのだ。
ゼロは少し震える声で言葉を紡いだ。
「いえ特には御座いません。ただ…こうしないといけない気がしただけです。」
ゼロはそう言いながら顔を下に背け、俺の胸に触れてきた。
「すまないな、ゼロ。名残り惜しいが時間がないんだ。これで許してくれ。」
俺はゼロの頭を優しく撫でながら言って、そっとゼロの額にキスをした。
「ゼロ、アイテム整理とチートの確認は終わった。次に動作確認に向かうが大丈夫か?」
ゼロはそっと俺から離れ「大丈夫です。」と答えると身だしなみを整えて、いつもの凛とした真面目モードに戻った。
ちなみに、チートの説明はいらないよな?
よくあるアイテム増殖系だ。減らない・取得・使用でMAXの無限収納。これに生命力も含まれている。
ちなみにステータスもMAX・限界突破・攻撃・防御限界突破・MP減らない等だ。
無敵にしないのは攻撃を受けるとよくバグるからだ。
そんな設定を思い出しながら、俺たちは倉庫街を後にし、訓練所に向かった。
訓練所に着いた俺たちは一通りの動作を行った。
無敵設定の案山子に殴る蹴るや剣で切ったり、魔法で攻撃したりと色々試した。
何故そんなことをしているのかって?システムが更新されると色々と不具合やチートが反映されなかったりすることがある。
昔、システムが更新された時、無敵コードが切れていて訓練所の案山子を殴った際、訓練所とその周辺が半壊したことがあって、正直泣きそうになったよ。
だからこそ、こうしてチェックしておかないと何が起こるか分からない。
それでも不具合やバグは起こるんだけどね。
「一通りチェックは終わったから、ゼロ。俺は一度戻る。」
俺は一通りのチェックを終え、新システムの確認をする為に、ゼロに話しかけた。
「そこでゼロに頼みがある。この世界に新システムが導入されている事は知っているな。」
「はい、多積層階層システムですね。」
「ああ、そうだ。だからゼロ、お前とベアトリーチェでこの世界の管理と新たに追加された物等を調べて欲しい。」
俺がそう言った瞬間、ゼロの顔が強張った。
「それは、ご主人様が戻られないということでしょうか?」
「いや、先にも言ったが、向こうに行くと戻ってこれるかが分からないからな。おそらくは大丈夫だと思うが、念のためだ。」
俺はゼロに近づき、優しく頭を撫でながら答えた。
「招致致しました。創造主様の御心のままに。」
ゼロは俺から離れ、綺麗に頭を下げて返事をした。
それを確認した俺は、ミソロジーを一旦後にし、現実世界に戻った。
俺は気づかなかった。
頭を下げたゼロの頬から一滴の涙が零れていたことを。
ゼロ
ゼロの画像
AIイラストで生成しています。
衣服が違ったり、顔の形が違ったりします。
こんな感じのキャラクターだと認識して貰えればうれしいです。