選択
「お待ち下さい!」
馬車から、ドレスを着た少女とメイドが飛び出して来た。
「お待ち下さい‼お嬢様‼」
どうやら少女が飛び出し、メイドが必死に止めようとしているようだ。
少女はメイドを振り切って、俺達の前に来た。
見た目は10歳前後ってところかな。
「あなた達いい加減にして‼」
俺の頭の中に???が浮かんだ。
何言ってるのこの子?
「彼女達が、あなた達を襲った事は謝罪するは!報酬ならここにある!これで護衛を開放して下さる‼」
少女は、報酬の入った革袋を俺に突き付けた。
「ロゼ。」
「畏まりました。」
俺はロゼに取りに行かせた。
ロゼは、少女から革袋を受け取ると、俺に渡してくれた。
中身を確認してみると…ヒーフーミーヨー…金貨30枚ってところか。
俺は、それを確認すると笑ってしまった。
「アハハハ…‼良かったな隊長さん。お前の命の値段は金貨30枚程度だそうだぞ。そこらに転がってる奴隷以下だとさ。」
俺は声を出して笑った。
騎士を笑い、少女を笑い…そして、煽った。
金貨30枚入った革袋を少女に投げ返すと、俺はアイテムボックスから金貨100入った革袋を取り出し、少女に放り投げた。
「それに金貨100枚入ってる。合わせて130枚だ。それで、こいつを買ってやるよ。」
ちなみに、何故、俺が金貨を持ってるかと言うと。
最初の頃に、コンソール機能を試したのを覚えているだろうか?
実は、コンソール…使えていたんだ。
俺が入力したコマンドは金貨を出すコマンドでは無くて、所持金を増やすコマンド。
つまり、アイテムボックスに直接放り込まれていたんだ。
アイテムを整理している時に、金貨が入っている事に気づいて、ナニコレ?ってなってたんだが…
コンソールの事を思い出して、「あ!」ってなった訳だ。
俺はクツクツと笑いながら少女を見た。
少女は「っく」っと声を漏らすと、俺を睨んで叫んだ。
「そんな事出来る訳無いでしょ‼」
「ならどうするよ。」
「それは…」
少女は言い淀む…
俺はチラッとメイドを見ると、メイドは苦虫を嚙み潰した様な顔をしていた。
「ま…街に戻ったら、追加の報酬を出すは‼足りなければ、お父様にお願いして…」
少女が話しているのを、俺は手で制止させてメイドを見た。
「そこの世間知らずに説明してやれよ。」
メイドは、眉をピクッと動かすと、俺達に頭を下げ少女に話始めた。
「お嬢様、この方はエルフです。」
「見れば分かるは…」
「この方達を街に連れていく事は出来ません。」
「何故?事の成り行きを話せば大丈夫ではないの?」
「えぇ…街に入る事は可能です。」
「なら何故よ!」
「エルフは罪人です。「世界樹を焼いた罪人」として忌み嫌われております。」
そう、俺は罪人として嫌われている。
街に入ろうものなら、衛兵に捕まるだろう。
仮に捕まらなかっても、剣を突き付けたれ追い出されれば良い方だ。
ましてや、教会関係者に目を付けられれば大変な事になる。
「それぐらいは知っているはよ。」
「なら、創造して下さい。あの方達が街に入ればどうなるかを。」
「罵声…石が飛んでくるとか…」
「それだけではありません。ゴロツキや教会関係者に見つかれば襲われます。」
「それは…」
「あの方達はそれを口実に確実に暴れます。そうなればどうなるか。」
「…」
「連れて来た私達が責任を問われます。暴れなくても私達は、あの方達を庇護する事もできません。」
「見捨てろと言うの…」
「はい。家名に傷が付きますので。」
「…」
パチパチパチ、俺は拍手した。
「流石、一番最初に俺達を警戒していただけはある。」
メイドは顔を歪め、少女は「え!」って顔をしている。
「そのメイドはな、俺達に気付いていながら救援を出さなかったんだよ。分かるか?」
「…」
「こうなる事を理解していたからさ。」
メイドは顔を歪め、少女と女騎士はメイドをみていた。
「俺と護衛の騎士達が揉める。最悪、お嬢様を使って仲裁に入ればってところか。」
「…ええ。」
メイドは苦虫を嚙み潰した様に顔を歪め、返事をした。
「さて、お嬢様。交渉の再開だ。どうするよ?」
「どうするって…」
「そこの金貨で俺にこの騎士を売る、もしくは見捨てる、騎士の謝罪に何を差し出すかだ。」
「それは…」
「なら、私が行きます。」
メイドが少女の前に出て、自分が身代わりになると告げた。
「駄目だ。それを決めるのはお前じゃない。お前の雇い主だ。」
メイドは顔を歪めると、少女を説得しだした。
「良いですかお嬢様。」
「駄目よ‼」
「よく聞いて下さい。」
「嫌よ‼」
バチン‼メイドが少女の頬を叩いた。
「アンナ!あなたもよく聞きなさい。」
どうやら、この女騎士隊長はアンナという名前らしい。
「事の顛末は、あなた方護衛の浅はかさが原因です。」
「しかし…メイド長…」
あのメイド、メイド長なんだ。
「本来ならばアンナ、あなたの命をもって償い、幾何かのかの謝罪金をもって、あの方々に慈悲を請わなければなりません。」
「はい…」
「幸いにもあの方々は、お嬢様にも私にも興味がないご様子。なので、命を取られる事はないでしょう。」
なるほど…このメイド長、お嬢様やアンナって騎士隊長に話してるんじゃなく、俺に釘を刺しにきたか。
「ですからアンナ、自分の馬にお嬢様を乗せ、急いで街に、領主様の下に帰りなさい。
幸いにも、この方々が襲撃者を全滅させてくれております。
恐らくはまだ、私達が生きている事を知られていないはずです。
その隙に戻りなさい。良いですね。」
「嫌よ‼マリア…マリアはどうなるのよ!」
メイド長は首を左右に振った。
あのメイド長、マリアって名前なんだ。
未だ、嫌々する少女をメイド長のマリアはバシン!っと頬を叩いた。
「聞き分けて下さい‼これはお嬢様の仕事です。」
嫌々する少女を叱りつけるメイド長。
「これはお嬢様にしか出来ない事なんです。」
メイド長のマリアは、少女を優しく抱きしめ話し、少女の顔をじっと見つめた。
「お嬢様、どうか正しきご判断をお願いします。」
メイド長はそう言って、少女の頭を撫でて立ち上がった。
「なぁ~ロゼさんや…俺、めっちゃ悪人にされてない?」
「え?違うのですか?」
「いや…そう演じてたけどさ…」
「演技だったのですか?素だと思っておりましたが。」
「それ…酷くない?」
「ご主人様なら大丈夫ですよ。」
俺とロゼはヒソヒソと話していた。
「お嬢様、よろしいですか?」
「えぇ…もう大丈夫よ…」
メイド長の問いかけに、少女は覚悟を決めたみたいだ。
「アンナ…アンナの代わりにマリアでお願い…残った馬車とかは好きにしていいから…」
少女は泣きながらお願いしてきた。
「だが断る‼」
「何故ですか‼」
鬼畜ですね…ロゼがボソッと嘆いたが、聞かなかった事にした。
「何故も…そこのメイド長に、うまく転がされてる様で気に食わん。」
「「…」」
バシン‼ロゼに頭をしばかれた。
「ロゼ…」
「何時まで遊んでいるのですか?」
「…」
「興が覚めたならそれで良いではないですか?お金も人も要らないのですから。」
「…はい。」
ロゼに怒られ、俺は女騎士を開放した。
とはいえ、タダというのはな…
少女とメイド長は、目をパチパチさせていた。
「ロゼ」
「はい。ピィィィィー」
ロゼが指笛を吹くと、女騎士達が使っていた馬が駆け寄って来た。
「馬2匹で手打ちにしてやる。いいな。」
少女とメイド長はポカーンとしながらコクコクと首を縦に動かし肯いた。
俺達はそれを確認すると、急いで馬に乗り逃げる様に去った。




