眷属
お早う御座います。
すがすがしい朝ですね。
太陽は真上にあるけど。
さて、紳士・淑女の諸君お待たせしたな。
長々しい説明や世界設定等でうんざりしてたところだろ?
ははは!
そうさ!これから本編が始まるのだ!
この俺様がヒャハー!してゴブリンを蹴散らし、街に押し寄せてきたモンスターのスタンピードを俺TUEeeeする物語を楽しんでくれ!
なんてバカみたいな事を考えてないとやってられなかった。
そんなバカみたいな事を考えながら俺は、昨日から何も食べてなかったのでキッチンで軽い朝ご飯を作った。
手持ちの食材で作ったベーコンエッグだ。
「いただきます。」
……
…
美味い…
美味いんだけど…何か違う…
Creation Worldでは食事をしても、何も味はしなかったから気にしてなかったけど…
失敗したかもしれないな…
何も気にせず、食材は神話級や最高級にしてたからな…
一つ一つの味が濃い。
卵の黄身は超濃厚で、ベーコンの脂は甘く燻製の匂いも良い。
胡椒なんて…めっちゃ香りが凄い。
一つ一つの個性が強すぎて何とも言えない微妙な感じになってる…美味いんだけど…
飯を食べたら気分が少しはマシになるかもって思ってたが、俺は何とも微妙な気分で食事を食べた。
飯を食べてて思ったが、この世界、俺の設定したアイテムやスキル等がそのまま反映されているのなら、手持ちのアイテムや装備品はヤバい代物になってる事になる。
ただでさえ、ビルドシステム自体がチート級の生産能力なのに、それを自由に設定できるって事は…
「止めだ止めだ」
俺は食事を終えると、椅子にもたれかけ天井を見上げた。
また、うだうだと考えてしまった…
結局人は何処に行っても変わらないんだな。
転生しようが転移しようが、自分が自分である限りどこに行っても自分なのだと。
異世界にいったら、ヒャハー!するぞとかハーレム王に俺はなる!とか色々考えて妄想してたりしたけど…
「なぁ~んもやる気が起きねぇ~」
結局俺は何処に行っても俺だったってことだ。
「はぁ~」
俺は大きなため息をついて、メニュー画面を開いた。
要は一人でいるからダメなんだと…
そんな事は分かってはいるんだが…
「はぁ~」
俺はナビーの偉大さを実感していた。
こんな時ナビーは何時も俺を、バッサバッサときりつけ物事を判断してくれていた。
人工知能だから可か不可しかないんだけどね。
悩む人間には判断を下してくれる存在は有難かった。
人は、結果・過程・事後等に悩む。
どうすればいいのか?
どうしたいのか?
どうなるのか?
人は悩む時は答えを出していると言う。
その答えに対して悩むのだと。
結果を恐れ・過程を恐れ・事後を恐れて。
人は失った時に初めて失った物事の大事さに気づくと言うが…
そういった物事をバッサリと判断してくれるナビーの存在はでかかったんだな。
なら眷属は?
俺は一度自分が造った眷属達を呼び出せないかと、眷属一覧を開いた事がある。
案の定、呼び出す事は不可能だったが。
では、作成は?
いけた。
そこで、俺はふと考えてしまったのだ。
この世界はミソロジーじゃない。
Creation Worldの世界でも無いのかもしれない。
造られた奴らはどうなる?
俺が死ねばどうなる?
試験が終われば?
そんな事をグダグダと考えてしまったのだ。
「はぁ~」
俺は大きなため息をつくと、そっとメニュー画面を閉じた。
俺は椅子に深くもたれ掛け、椅子の前脚を浮かせ、後ろ足でバランスを取りながらゆらゆらと揺らしていた。
昨晩作っておいたタバコを咥え、カッコ良く火を付けようと指を鳴らして火を付けようとした。
ボン‼
目の前で小爆発を起こした。
俺はびっくりして椅子ごと後ろに倒れてしまい、倒れた反動でテーブルを蹴飛ばした。
ガシャーンとテーブルの上に乗っていた食器たちの割れる音を聞きながら俺は、大の字で倒れ込み天井を見上げていた。
俺はもう一度煙草を取り出して、小さい火と強くイメージしながら人差し指に火を灯した。
煙草に火をつけ大きく吸い込むとフーと大量の煙を吹き出した。
俺は煙草を吹かせながらままならない自分に情けなさを感じていた。
自分で制御しきれない身体能力とステータス。
過剰のアイテムと効果がヤバい装備品。
アニメや物語なら最高のシチュエーションなんだろう。
だが、現実は非情だった。
走れば制御できずに木にぶつかり、魔法は暴発する。
刀を振るえば、おそらく山も斬れると思う。
過剰すぎる力とアイテムを持て余してる自分に嫌気をさした。
「ダァァァァァ!」
俺は飛び起きると、周りの家具や小物に八つ当たりをした。
椅子を蹴飛ばし、投げ飛ばし。
テーブルを蹴飛ばし、小物を辺りに投げつけた。
気づけば天井や壁に無数の穴が開き、部屋の中は滅茶苦茶。
もはや最初の原型を留めてなかった。
俺はそのまま外に出ようと出入り口の扉を思いっきり蹴飛ばした。
バゴン‼っと音を立て、扉に足が貫通し足が挟まってしまった。
更にイライラした俺は、無理やり足を引き抜いて扉を殴りつけた。
バゴン‼
腕が貫通して扉に挟まってしまった。
俺は「あぁぁぁぁ!」と叫びながら、無理や腕を引き抜いて扉を壊して外に出た。
外に出た俺は、地面に大きな魔方陣を適当に描くと眷属作成の為のアイテムを魔方陣に並べた。
肉体を構成する血と肉と骨は…神竜の素材で良いか…。
身に着ける衣装は…いつも通りメイド服で。
装備品や装飾品を一通り一式と…
最後に、神核結晶。
神核結晶
莫大な生命力の結晶。
ミソロジーにおいて、高難易度ダンジョンのボスから採れるアイテムだ。
眷属生成時に必要なアイテムになってる。
本来、眷属生成時に必要なのは核となす神核結晶だけで良いのだが、この世界、仮想現実を現実世界に反映させる為に必要なプロセスとして各種素材や儀式的魔方陣が必要らしい。
それに気づいた時、少しイラっとした。
俺の知らない知識や常識が勝手に刷り込まれていることに。
そんな事を思いながら俺はメニューを開いて眷属の生成を始めた。
なんの事はない、何時も通りビルドシステムでデザインしてやればいいのだから。
いつも通り、ゼロをベースにして…
髪は…白でいいか。
顔と体型は…めんどくさいからそのままでいいや。
種族は…人間、ヒューマンだな。
この世界、先の戦いで人族至上主義になっている。
エルフを始め、獣人・ドワーフ・魔族等は「世界樹を焼いた罪人」として最悪の扱いを受けている。
それもこれも全てアホ教皇とアホ教皇国のせいだ。
そんな事を思いながら、デザインが完了したので生成ボタンを押した。ポチっとな
ミソロジーならそのまま目の前に現れて完了なのだが、どうやら此処では違うみたいだ。
魔方陣が眩く輝き、中に置いた素材や装備品等を溶かしだし人の形を形成したしたのだ。
正直、この時俺は美しいと思い見惚れていたのだ。
魔方陣の中で輝く素材たちは、空中に浮かび、煌めく星のような輝きを放ちながら、次第に人の形に変化していく。
その光景はまるで、夜空に浮かぶ輝く星々のように美しく、幻想的で神秘的な存在感を放っていた。
やがて光を失った魔方陣の上には白い長い髪の一人のメイドが立っていた。
俺はその光景を見てゴクリと喉を鳴らした。
目の前には、長く絹みたいな透き通る様な白い髪。
白い髪と肌に映える赤い瞳。
豪華なメイド衣装に身を包んだ爆乳の身体。
俺の理想が積み込まれた女性が目の前にいるのだ。
俺は近づきそっと彼女の頬に触れた。
暖かい…
人のぬくもりだ。
ポリゴンやテクスチャー等の無機質じゃない。
肌は柔らかく暖かで艶やかだ。
彼女の頬に触れ、撫でながらそんな事を考えていると…
「お早う御座います。創造主様。」
彼女が声を発して挨拶をしてきたのだ。
透き通る様な美しい声。
あぁ~俺は生命の創造をしてしまったんだな…
そう思った時、ゾクッと背筋が寒くなった。
何が理由は分からないが自分が怖くなってしまったのだ。
目の前にいる女性は俺が造り上げてしまった。
それが良い事なのか悪い事なのか…
ただただ俺は「あぁ…」と曖昧な返事をすることしか出来なかった。




