15話、とてつもなく大きな鶏肉(8)
「宴の時間じゃー」
(あんたは年中、宴してるじゃない)
心の中でつっこんだリリの目の前には大きな鶏肉の塊。
ガランティーヌを囲むように五人と一羽は、傍から見ると異教の宗教をしているようにも見える。
その一行は肉に齧りつき酒を煽る。
リリも久々のまともな食材にワクワクしていた。
「リリ、美味しいよ! ちょっと生なのが面白いね!」
ラーナの言葉に一抹の不安を覚えたリリももも肉に齧り付く。
「んーこれは…………大味!」
次は中に巻いた詰め物をスプーンですくって口に運んだ。
「………………生焼け! パンが邪魔!」
(あっれーー? 鳥なんだから今まで一番期待してたんだけどなぁ)
美味しいと食べるラーナ、対して頭を大きく傾げながら食べるリリ。
他の四人の反応も様々だ。
無言で食べるクリスタと外側のもも肉だけを食べるクラウディア。
普段と変わらないテンションで食べ進めるアン、そしてパンだけを掬って口に運んではしかめっ面をするイヴァ。
(あっちゃーこれはやっちゃった雰囲気、失敗したーどうしよう?)
リリは皆の反応を見て、期待ほど美味しくなかったのを感じ、一番毒舌そうなクリスタに声をかける。
「クリスタちょっといい?」
「どうされました、リリ様?」
「わたし的にはあんまり上手にできてない気がするんだけど、どうしたらいいと思う?」
「恐らくですが、熱が中途半端に入ってるのが問題なのではないでしょうか?」
「やっぱりそうよねー」
予想通りの答えに、リリとクリスタは頭を悩ませる。
「このサイズですし、専用の設備があるわけでもないので、しょうがないといえばそれまでなのですが……」
「そうよねぇ、クラウディアはどうしたらいいと思う?」
(クラウディアならなんか分かるかな?)
「わたくしは火の入れ方よりも、ソースがないことが問題なのではないかと思いますわ」
「ソースねー」
「ロック鳥は思っていたよりも肉の味が薄いですもの」
(それは、ごもっとも)
「確かに、大味なのは予想ついたのに見落としてたわ」
反省をするリリの横で一人だけバクバクと頬張るラーナが感想をいう。
「ボクはもっとピリッとしてたほうが好きだなぁ、こんなにたくさんあるんだからボク的には文句はないけどねぇ」
「ラーナはそうよねー、ちなみにアンは?」
うんうんと頷きながらリリはアンにも聞く。
「あたしには聞くな! 料理はわからん、まぁ不味くはない」
(不味くはない、かぁ)
大失敗では無いが、大成功でもない。
皆の反応を見る限り、どちらかと言えば失敗であろう。
「よしっ! 両方試してみよっか」
「両方ですか?」
「クリスタは、フライパンで焼いてくれる?」
「はい」
「わたしはソースを作るわ、あとはラーナの希望通り、胡椒を多めに振ってみましょ」
「かしこまりました」
二人はそそくさと準備を始める。
フライパンで肉に焦げ目をつけ、そのフライパンに白ワインを入れ残った肉汁と混ぜる、香りづけにローズマリーの枝を入れ煮詰めていくと、薄茶色のソースが出来上がった。
「さぁ、これでどう?」
改めて肉を頬張る五人。
「ん! これはいけますわね」
「ボクもこっちのが好きー! やっぱりピリッとしてる方が美味しいね」
先程よりも明らかに反応のいい二人。
クリスタとアンを見ると、二人とも少しだけ笑みをこぼしながら食べている。
それを見ていたリリはホッと胸を撫で下ろした。
(あーよかった、苦労して倒したのに美味しくないって、辛すぎる)
安堵したリリに、黙々と食べていたクリスタがボソリと呟く。
「ロック鳥の肉は、ほのかに木の実の香りがしますね」
聞いていた他の四人も、意識をして口に運んだ、
(たしかに、ヘーゼルナッツの匂いがほのかにする)
「サンドワームの匂いだねっ!」
「ロック鳥はの主食はサンドワームだからかな?」
「なるほどですわ、それで香ばしい香りがするのですね」
「よしっ、これはオッケー! 次はレバーペーストもたべましょ!」
リリが両手を振り上げ、レバーペーストを両手で指す。
「さぁさぁ、パンにつけてどうぞ、こっちは自信があるわ!」
それを聞いた皆が、それぞれがレバーペーストをパンに乗っけて食べる。
「おっこれは酒に合うなー、ウマい!」
「んーーー苦くてトロッとしてピリッとして美味しい!」
「わたくしもこんなに濃厚で香り高いレバーペーストは初めて食べましたわ」
(すっごい美味しい! 鮮度がいいからかなぁこっちは成功してよかったぁ)
「ラーナの血抜きが上手だったからこんなに美味しいんだよー」
「そう? えへへ」
ラーナはリリの言葉に照れるように笑った。
その手には、パンの上にペーストが乗っているのか、ペーストが手につかないためにパンがあるのか、どちらかわからないぐらいの量を乗っけて口に運んでいる。
それを見たリリは、思わず笑ってしまった。
このあとたくさんの肉を食べ、残りはイヴァに閉まってもらい晩御飯を終えた一行は、満腹の腹を抱え、眠たい目をこすり、保存用の肉の下ごしらえを夜通し続けたのだった。




