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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》二章、カルラ・オアシス
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13話、ロック鳥(4)

(ロック鳥……何処かで聞いたことがあるような……)


 月明かりに反射して黄金の巨大な翼は美しく光り、猛禽類のように鋭く曲がった嘴は、ナイフのように尖っている。

 馬車ぐらいなら片脚で持ち上げられるであろう脚には、一本一本が人ほどの大きさの爪、前に見たサンドワームがエサのミミズに見える、そんな圧倒的で絶対的な存在感なのだ。


(あっそうだ、ママの日記に確か書いてあった! 弱点とか書いてあったっけなぁ?)


 ラーナは日記の中身を必死に思い出していた。

 日付はうろ覚えだ。


 〇〇年〇〇月〇〇日


 毎日、毎日、偵察ばっかりでつまんなーい。

 そんなに話すことも、調べることもないってーの。

 そういえば今日の朝にわたしすっごい上空にすっごいでっかい鳥を見た気がしたのよねー、だから、とりあえずは追ってみることにしてみたわ。

 っま、見つけちゃったからしょうがないわよねー。

 でも残念なのは、全力で走ったのに追いつけなかったのよー、ほんとーに残念だわ。


 後で聞いてみたらロック鳥っていうらしいんだけど、みんな適当なことを言ってばかりで嫌になっちゃう。

 ドラゴンより大きいとか、ワイバーンと同じぐらいとか、言ってることが全然違うじゃない。

 もう嫌になっちゃう。

 だからわたし決めたわ、自分で取りに行くことにしたの。

 街の外ならパパにも手伝ってもらえるし、これなら余裕だわ。

 ラーナちゃんには、見たときに感動して欲しいから、見た目や特徴は敢えて書かないけど、なかなか美味しかったわ。

 ラーナちゃんも会いたかったら、シンボルマークを探すといいわよ?


 かしこ


(ママ……役に立つ情報が一つもないよ)


 ラーナが必死に思い出した日記の内容。

 それは他愛もないものだった、心の中で少しだけガッカリしたラーナのすきを見て、ロック鳥はそのまま馬車に爪を立てた。


「っあ!?」


 最初はその大きさと荘厳な佇まいに怯んでいたのだが、すぐに心持ちを立て直したラーナは、腰から抜いた毒ナイフをロック鳥に投げる。


 キンッ! キキンッ!


 ロック鳥がだす風圧にも負けず、何とかロック鳥の脚にあたりはしたが、ロック鳥はラーナの事を気にも止めてなかった。


(脚は硬過ぎる! ちんけな投げナイフじゃ傷すらつかない、じゃあ次は……)


 打つ手を考えるラーナに、ソフィアの声が届く。

 その声はいつものちゃらんぽらんな声色ではなかった。


「ラーナちゃんやめるんだ、ロック鳥の狙いは私達じゃあない、馬車のサンドワームなんだ」

「知ってるよ!!」

「勝てない相手でも引かない鬼族の矜持は」


 ロック鳥の行動から自分たちは狙われてないのだ、そう推測したのかソフィアの言葉に被せるようにイヴァも声を上げる。

 その声は震えており、ラーナに語りかけるような口調だった。


「そうじゃ、いくらラーナでもロック鳥には敵わない……」


(うるさいな、集中できない)


 しかし、ラーナにはその言葉は届かなかった。


「お前達は黙ってろ! 気が散る!」


 吠えるようにソフィアとイヴァを一蹴したラーナは、改めて毒ナイフを投げつける。

 今度は目に向けて投げたのだが、それもやはりロック鳥の気すら引けなかった。


「この距離じゃ駄目だ! もっと近づかなきゃ!」


 珍しく焦りながらそう言うラーナだったが、背中からしっかりとした木の葉状の短剣と、片方に幾つも窪みのある短剣を取り出し、すぐさまロック鳥に向かって走り出した。


(このナイフでも心もとないけど、やるしかない)


 その姿を後ろで見ていたソフィアが呟く。


「なんであの子は、あんなにも強大で凶悪な敵に向かっていくんだ……鬼族はそこまで戦いが好きなのかい?」


 ずっと黙り呟きを聞いていたアンが、岩に背中を預けたままソフィアに優しく喋りかける。


「ソフィー、リリ嬢ちゃんはどこにいると思う?」

「……ん、リリちゃん?」


 アンの言葉を聞いて、イヴァが全てを察したかのように答えた。


「馬車の中じゃ」


 静かに静かに答えた。


「それじゃあ……」


 ソフィアもラーナの行動の意図が分かったようだ、そのまま押し黙る。

 イヴァが震えながらも、つぐんだ口を開く。


「本来なら妾が……妾が行くべきなんじゃ」

「そんなことは……」

「妾はテレポートが使える、短い距離じゃが連続で使えば馬車の中に入れるじゃろう、リリを見つけた後に外に出るのも……恐らくは、難しくはないのじゃ、じゃが……」


 イヴァは自分の両手を前に出しては自分で見つめる。

 出した両手は、杖が持てないほどガクガクと震えていた。


「無理もないさ、あんたは魔道士で本来は冒険者ですらないんだろ?」


 横で見ていたアンがフォローをする。


「ロック鳥なんてものは、攻撃魔法を持たない魔道士が刃向かえるやつじゃない、ソフィーも言ったろ? 天災だって、そんな物はな、過ぎ去るのを震えながら待つのが普通なんだよ」


 そう言いながらイヴァの頭に手を置いた、そのアンの手も微かに震えていた。


「ヴォオオォォォォー!!」


 その瞬間に物凄い雄叫びが三人の耳をつんざく。

 雄叫びの方を見た三人は悲しそうにそっと目をつむった。

 なぜならそこには上空へ咆哮を上げ終え、ナイフを落とし両手をだらりと下げた、力無く立つラーナの姿があったからだ。

 ロック鳥はラーナをちらりと見たが、そのまま夕日の向こうへと飛び去って行ってしまった。


(間に合わなかった……リリ、どうか無事でいて……)


 ラーナは自分の頬を両手で思いっきり、パンッ! と叩くと振り返った。

 もうすでにいつもの表情だ、しかし頬にはしっかりと手の跡が付いている。


(ボクが読み違えたばかりにあんなに接近させちゃったし、怪我してないかな?)


 ラーナは既に気持ちを切り替えていた。

 いつものテンションで三人の安否を確認する。


「イヴァ、ソフィア、アン、無事だった?」

「いやっ、妾達は大丈夫じゃ、大した傷は一つもない」

「それよりもラーナちゃん、ごめんよ、私はリリちゃんが馬車に乗ってるのを気づかなくって……」


 いつもなら空気の読まない能天気な二人。

 だが有り得ないほど辛そうに、ラーナに声をかける、それはリリとラーナの仲の良さを、そして思い合っていることを知っているからだ。


(なんて声をかけたら良いんだろう? ボクこんな経験ないから分かんないよ)

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