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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》二章、カルラ・オアシス
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11話、デザート対決(6)

【雲のパンケーキ ~魔法とモンスターのファンタジー仕立て~】


「なんとか間に合ったぁ! っさ、残りも仕上げましょ」


 三人はせかせかと動き、お皿に次々とパンケーキが並ぶ。


 ゴゴーン! ゴーン! ゴゴーン! ゴーン!


「ついに二の鐘が鳴ったねっ! 食べようじゃないかっ!」


 鐘の音と共に、勢い良くキッチンに入ってきたソフィア、その後ろに続くアン。


(ッププ! 待ち構えてたわね、二人共けなげー)


 タイミングを見計らったように入ってくる二人に、リリはついつい吹き出した。


(どうみてもタイミング良すぎでしょ! フフッ)


 声を堪えるリリを見て、アンは少しだけ照れくさそうに頭を掻いた。

 対してソフィアは相変わらずのいつも通りだ。


「リリ嬢ちゃん、笑わなくてもいいじゃないか」

「ご、ごめんなさい……つい、フフッ」

「こう見えても、アタシだって楽しみにしてたんだ」

「ありがとっ!」


 アンとリリの会話に、クラウディア達が割って入る。


「茶番はもうよろしくて?」

「そうですわ、クラウディアお嬢様の前でふざけるのはやめなさい!」

「あんたたちが、お嬢様を待たせるなんて立場分かってるの?」


 ヒートアップするディアナとエマに対して、ソフィアが答えた。


「オーキードーキー、じゃあ始めよう。なにより私が早く食べたいしねっ」

「どっちのから食べるの?」


 リリがソフィアに質問をする。

 ソフィアは入口に置いた机に座り答える。


「先に出来上がった方から食べようかなっ? どっちだい?」


 ソフィアがリリとクラウディアに目配せをしながら聞く。

 するとクラウディアが一歩前へ出た。


「わたくしですわ! クリスタ!」

「はい、クラウディア様」


 クリスタが大きな銀製のお盆を持って目の前に現れる。

 そこには4枚のお皿、綺麗に切りそろえられたケーキが乗っている。

 クラウディアは2枚のお皿を手に取ると、アンとソフィアに向かって提供する。

 ディアナも2枚のお皿を取り、リリ達に向かって来ると雑に置いた。


「わぁお、キレイ! かわいいー!!」


 予想以上の品に、リリはテンション高めで感嘆の声を上げる!

 出てきたのはベリー系のフルーツコンフィがこれでもかと乗ったタルトだ。

 目の前の宝石の様なお菓子に、ディアナの態度の悪さなどもう意識に残っていない。


(砂漠で新鮮なフルーツって、絶対にお金がかかってるー、ありがとう御座います!!)


 勝ちを確信したのか、堂々と仁王立ちで立つクラウディア。

 リリは久々のフルーツにテンションが爆上がりしすぎて、フニャフニャにふやけた顔をしている。


(これは自信があるのも頷けるわ、だって美味しそうなんだもん!)


「リューネブルク特製、チーズベリータルトですわ! 皆様どうぞ、ご賞味を」


 クラウディアの声を合図に、ディアナとエマを除いた全員が勢いよくタルトを口に運ぶ。

 ちゃっかりクリスタも、クラウディアに気づかれないように食べていた。


「「「頂きます」」」


(これは!)


「美味しぃー、しあわせ~」

「甘ーい! 酸っぱーい! サクサクだよ? リリーこれ美味しい! 生のフルーツなんてボク初めて食べたよー、フルーツって、口の中で酸っぱさが弾けるみたいで面白いね!!」


(ラーナの感想、独特! 言いたいこと、なんとなく分かるけども)


 久々のお菓子、初めて食べるフルーツ。

 リリもラーナも対決なのを忘れ、タルトに夢中になっていた。


「ほぉー! 面白い組み合わせだねっ!」


 ソフィアは冷静に解説を始め、クラウディアに質問を始めた。


「フルーツの下に敷いているのは、トゥファルクかいっ?」

「流石は砂漠の錬金術師ソフィア=テイラーペレス様ですわね、御名答です」

「酸っぱいチーズに、砂糖漬けにしたベリーがよく合っているねっ」

「酸味の強いチーズでチーズケーキ独特の重さを減らしさっぱり食べやすくしてありますの」

「ほぅ、よく考えられているねっ! 焼き加減も素晴らしいねっ、サクサクで素晴らしい!」

「ありがとうございます、まさかチーズの名前まで当てられるとは思っていませんでしたわ!」

「私は天才だからねっ! もっと褒めてもいいのだよ?」


 ソフィアが要求するように、ほれほれと手を振る。

 クラウディアの整った澄まし顔が、少しだけ苦笑いに歪んだ。

 横で聞いていたリリは、タルトを頬張りながら思いを馳せる。


(なるほどトゥファルクのケーキ! じゃあ前世だったらポーランド料理のセルニックね、わたし本の知識しか知らないから、味までは分からないんだよなぁ)


 なのでリリは率直に感想を言うことにした。

 その上で、特に気になったことをクラウディアに聞く。


「酸味の使い方が上手ですね、でもこれならシロップ漬けにしなくても、良かったんじゃ?」

「確かにそれも一案ですわね」

「別に理由があったの?」

「リューネブルク式チーズタルトでは酸味の強いチーズを使うことでタルト生地がより軽く食べられるのが特徴ですの」

「なるほどねー」

「ただ、それだと重厚さやインパクトが薄くなりますの、だから今回はシロップ漬けにして、コンフィチュールにしていますの」


(生地を美味しく食べるためのチーズタルトって割り切った上で、バランスを取ったわけか)


「確かに普通のチーズケーキより口当たりが軽いのに、食べ応えがあるわね」


 リリはもう一口食べながら言った。


「当たり前です、クラウディアお嬢様の深い考えがピクシーなんかに簡単に分かってたまるもんですか」


 ディアナがまたも突っかかってくる。

 いい加減にリリも苛立ちを覚えだした。


(毎度のことながら、この人は……)


「今回は良いラズベリーとブルーベリーが手に入ったので、酸っぱさの角を取るためと言う目的もありますのよ」


 クラウディアは堂々と説明をする。

 細かくまで説明ができるということは、相当に造形が深いのであろう。


「甘酸っぱく爽やかなフルーツ、軽いチーズタルト、両方を甘く包み込むようにシロップを仕立てているのですわ!」


(なるほどねぇ、かなり細かく考えられているわー)


「確かに、複雑な酸味と程よい甘さが、とっても合っていて美味しいわ!」


 リリの返事に、クラウディアは満足気に頬を上げた。

 説明を聞いていたアンも、感想を漏らす。


「良く分からんが美味い! アタシもここまで美味いタルトは初めて食べたな!」

「アンはお気に召したようだね、私も大満足さっ、酸味のハーモニーたまらないねっ!」


 ソフィアも感想を言うと、ニヤニヤとしながらリリを見つめる。


「それじゃあ次はリリィちゃんの番かなっ?」


(少し緊張して来たわね……)


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