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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》二章、カルラ・オアシス
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10話、姫騎士とメイド(3)

 ソフィアの勢いに押され、アンとクリスタは渡されたサンドワームをそのまま口に放り込む。

 クラウディアはサンドワームを握ったままプルプルと震えて動かないままだ。

 ディアナとエマに関しては、貰う事すらせずに捨てている。


(もー、ソフィアが無礼な態度をとっているから、怒らせちゃったじゃない、他人の振りできないかなぁ)


「っお!? 美味い! これはエールが欲しくなるね」

「クラウディア様、毒ではないようです」


(まぁ誰であれ喜んでもらえるのは嬉しいものね。一昼夜かけて乾燥させたかいがあったってもんよー)


 ちょっぴり微笑ましい反応に、周りの冒険者もエールを呑み直し普段どおりのギルドに戻っていく。

 ギルド内の空気が解けていくのを感じたリリは、改めてアンに話し掛ける。


「ありがとうございまーす。アンさんにも気に入ってもらえて良かったです、討伐の証明も取れたと思いますし、そろそろ報酬を頂いてもいいですか?」

「あぁ、そうかそうか、待たせて悪かった! これでいいかい?」


 アンは受付の台にドンッと袋を置いた、随分と重そうに見える。


(これって、結構貰えているんじゃない?)


「ありがとうございまーす、イヴァ受け取ってください」


 リリが、お嬢様風のお辞儀をしながらアンに返事をする。

 イヴァは口を開かずに受付台の袋を受け取った。


「見ない顔だね、あんたはダークエルフか? こんなところで会えるとは、珍しいな」

「あぁ、サンドワームに食われそうになった妾を助けてくれたのじゃ」

「そうかい」

「じゃから、こやつらを少しだけ助けてやろうと思ってな」


 イヴァは金貨を袋ごと収納魔法にしまった。


「ダークエルフに黒魔法とはまた厄介な……」

「なんじゃ?」

「まぁオーケーだ、このギルドは不干渉がモットーだからな」

「ほぅ、見どころがあるなお主」

「ルールを守ってる以上はだがな」


(それは不干渉なのではなくて、面倒くさいだけなのでは? 黒魔法って収納魔法の事? アン、厄介って言っていたわよね、何のことがイヴァに問いたださなきゃ)


「それでは、わたし達は帰りますねー」


 リリはソフィアに言い残し、ギルドを出ようと振り返る。


「お待ちなさい! そこの無礼な亜人共」


 帰ろうとするリリ達を止めようと、ディアナがいきなり声を掛ける。


(随分と上から目線じゃん、無礼はどっちよ? もしかしてそこの姫騎士さんはとーっても偉い人で、怒らせちゃった? ならソフィアに謝らせよー)


「申し訳ありません。わたし達は急いでいるので、出来れば早く出たいんですけど……イヴァもソフィアも、とりあえず謝って! お願いだから謝って!」


(嘘も方便なんだから、話しを合わせてよ?)


「っえ? 妾かや? そんな、妾は悪くないのに謝る気なんてない、リリこそ嘘をついているから謝るべきじゃ」


(えー!!)


 イヴァの言葉に被せるように、ディアナが声を張る。


「あなた達いい加減にしなさい、この方を誰だと心得ますの?」


 ディアナがクラウディアを崇めるように手で指している。

 クラウディア自体も満更ではなさそうだ。


(イベントフラグ? 答えたら面倒くさくなるよね……無視してもいいかなぁ?)


 悩み抜いたリリは、正直に答えることにした。


「すみません、知らないです」


(厄介事はごめんなんだってー、小麦粉や卵や肉を買って、久々のまともな食事を食べたいんだってー)


 リリは焦りからか、念願の普通なご飯と初の報酬で浮かれてしまったのか、気づいたら素で答えていた。

 その時、ダンッと足で床を叩く音が響いた。


「あなた達、お嬢様がリューネブルク家の時期当主、と知っての狼藉ですか?」


 エマが静かに、しかし確実にリリ達に聞こえるように言う。


(っえ? なんで怒るの? そんなに悪い対応したっけ? ヒステリー起こしただけってことは……ないわよねぁ)


 リリもラーナも無視を決め込んでいたが、イヴァには納得いかなかったようだ。


「しるか人族風情が! 百年も生きられんくせに、いきがるでない!」


(やめてー、その反応は面倒くさくなるじゃない!)


 聞いていたクラウディアが、ため息をつきながら言い返した。


「なぜ長命の種族は、自分達が偉いと思っていらっしゃるのかしら? フードで隠していますが、あなたダークエルフですわよね?」

「そーだ、そーだ。妖精族の嫌われ者が!」


 クラウディアの言葉に、周りの冒険者がついて来る。


(やっちゃったぁ! フラグ突入しちゃったかな?)


 リリは顔を手で覆い隠した、もうめんどくさくなることは確定的だ。


「なんだと? 妾達を敵に回すか?」


(おい年長者、落ち着け! そして、わたしとラーナを勝手に仲間に入れるな! ソフィアは構わない、むしろ連れてって!)



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