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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》一章、死の荒原
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6話、デザートフィッシュ(7)“ご飯パート1”

「ヤッホー、リリよー! 今回の一口メモ!」


「今回の名言はフランスの侯爵でリュック・ド・クラピエ・ド・ヴォーヴナルグ」



“偉「ヤッホー、リリよー! 今回の一口メモ!」


「今回の名言はロシアの哲学者、ニコライ・アレクサンドロヴィチ・ベルジャーエフ」



“自分自身にとってのパンの問題は、物質的な問題だ。

だが、隣人に対する、同胞に対するパンの問題は、精神的・宗教的な問題だ。”



「自分にとってはただのパンでも」

「全部上げるのか、半分こするのか、独占するのか」

「なにを選び、どう行動するのかは難しい問題よねぇ」

「お腹の空き具合でも変わるしねぇ」

「こういう正解のない問題って難しいわぁ」



「ここから本編でーす!」



「準備できたよー」


 ラーナがそれぞれの器に移し、声をかけた。

 リリの器は相変わらずのスプーンである。


(わたし用の食器が欲しいわね……)


「それじゃあ食べてみましょ」

「うん!」


 二人は手を合わせ、声を上げる


「「いただきます!」」


「わたしはスープから飲むわ」

「じゃあ、ボクは出がらしから」


 ゴクゴクッとリリは勢いよく飲み干し、ラーナは大きな口で肉の塊を口に入れる、二人の姿はマナーもへったくれもないが、こんな砂漠にドレスコードなどない。

 食べたいように食べるのが一番だ。


「美味しい……想像してたより美味しいわ」

「……」


(これは、なんと言えばいいんだろ? わかめスープ?)


「魚のスープというより、野菜というかキノコっぽい感じ?」

「……」


(素材や調味料を揃えてしっかり作れば、高級店でも出せそうね、素朴ながら上品な味!)


「なかなか行けるわよ、ラー……」


 リリがラーナに声をかけようとするが、苦々しい表情の前で言葉が止まる。


「だ、大丈夫?」

「うぇー、味がない……ジャリジャリするー」


 ラーナの方は外れだったらしい。

 それもそうだろう、ただですら食感が最悪で味の薄いデザートフィッシュ、その出がらしなのだから。


(まぁ革鎧よりはマシでしょ)


 そう思っていたリリも出がらしを口に運んだ。


(こっ、これは……)


「革鎧のがよっぽどマシじゃない! 本当に、マジで!」

「リリもそう思うよね」

「噛むのすら辛い!」


 二人とも苦虫を噛みつぶしたような顔をしながら見合わせる。


「どうする? 食べるものがないよ?」

「どうしよっかぁ……干物でも食べる?」

「まだ半分も焼けてないんじゃない?」

「だよねぇー」


 二人の結論としては、我慢して出がらしを食べた終えた後に、スープを飲むことにした。


(ラーナは納得してなさそうー顔がそう言ってるわ)


「ラーナ? 怒って、る?」

「だってぇ、スープじゃお腹が膨れないよー」

「ですよねー」


 ラーナの絶望した表情に、リリはおちゃらけて返した。


「この出がらしも不味いし、ボクはこうガシッとしたものが食べたい!」

「ガシッとねー、そうは言われても、もう作っちゃったしなぁー」

「リリは体がちっちゃいから良いかもしれないけど、ほとんどボクが食べるんだからね?」

「それは……ごもっとも、です」

「でしょー」


 ラーナは怒ってはいない、いないが不満は溜まりに溜まっているのが見て取れる。


(これは収まらないわ、なんとかしないと……)


「わかったわ、干物をなんとかします」

「なんとかって?」

「分かんない、とりあえず味見してから考える」

「じゃあボクも食べる!」


 ラーナは隅を一口分だけ切り取ると、小さくちぎりリリにも渡した。


(美味しくなってるといいんだけど)


「うーん、美味しくない」

「やっぱりまだ乾燥が足りてないわねー」

「これじゃ、出来るまで時間かかる?」

「そうねー、朝までとは言わないけどそれなりには……」


(まぁ生の時よりはマシになってるから、方向性は良さそうなんだけど)


 半乾きなのだからしょうがないと言えばしょうがないのだが、リリの予想通りの出来なので、これといった解決策は浮かんでこない。


「うーーん……干物自体は上手くいってるんだけどなぁ」


 リリはどうしたらいいかと頭を悩ませる。

 塩味はほどほどに効いてる、乾燥も順調に進んでいる、このままいけば味も匂いも食べられるものにはなるであろう。


(時間さえあれば、なんとかなるとは思うんだけどなぁ)


「もっと早く乾燥したらいいのにねー」

「打つ手がないのよねー」


 二人とも小首をかしげ悩んでいると、ラーナが考えなしに発言した。


「もっと風が強ければ、早く乾くのにねっ!」

「強い風ねぇ……っあ、そっか!」


 その言葉にリリの中で何かが閃いた。


「風がないなら作ればいいのよ!」

「どういうこと? 扇ぐの?」

「違うわ、魔法でやるのよ」

「魔法で?」

「まぁまぁ、見てなさいって!」


 リリは焚き火からでてくる煙を魔法で集めだす、まるで煙の玉だ。


「なにこれ? ボクこんな魔法、初めて見たよ?」

「いま考えた、わたしのオリジナル魔法よ!」


 得意げに話すリリ、ラーナは驚いてはいるが冷静に答えた。


「ふーん、そうなんだぁ」

「この凄さがわかってないわね?」

「精密な魔力操作が必要なぐらいは分かるよ、流石ピクシーだね」


 ラーナの口ぶりから察するに、ピクシーならこれぐらいは出来て当たり前のようだ。

 しかし、リリはそのことには全く気づかずに更に得意げに答えた。


「イメージ通りなら完璧よ!」


(オリジナル魔法を作っちゃうなんて、わたしってやっぱり天才ね!)


「なら大丈夫じゃない? 魔法はイメージだって言うし」

「へぇー、イメージが重要なのね」

「リリ凄いじゃん、オリジナルの魔法なんて出来たんだねー」


 これは完全に社交辞令だ。

 なんならリリはもっと出来ないとラーナは思っていたのだ。


「もっと褒めていいのよ!」

「わーすごーい」


 手を焚き火にかざしながらも、見るからに満足げなリリだが問題はまだあった。


「でもこれじゃあ、燻製は進むけど、乾燥は変わんないのよねー」

「うーん、じゃあ風の流れる道を中に作ってあげたら?」

「ラーナ! ナイスアイディアよ」


 リリは上げた手は降ろせないので、心の中で親指を立てた。


「ん? そう?」

「煙で対流を作ればいいのよ、助かったわ!」

「どうやってやるの?」

「せっかくのオリジナル魔法なんだし、渦巻状にしてみるわ」


 リリは一度魔法を解くと煙がボワッと広がる、二人をオレガノの爽やかな香りが包む。

 軽く手を振り、身体を伸ばしたリリは改めて魔法をかけ始めた。


(イメージが重要なのよね! ならコンベクションオーブンみたいに熱風をグルグルと回せば……)


「んんっ…………できたっ!」


 リリの目の前には渦巻く煙の球が出来ていた。


「さっきから思ってたけど、詠唱もなしに魔力足りるの?」

「わっかんない!」

「っえ? 分からないの?」

「全く持って分からないわ!」

「えー」

「疲れる気配はないわね」

「ピクシーだからなのかなぁ?」


 ラーナは呟くと首を傾げ考える。

 その横で真面目に魔法をかけるリリ、内心では小躍りをしていた。


(もしかしてチート能力!? やったわ! やっと異世界転生らしい展開になってきた)


「わたし、自分の才能が怖いわ!」


 思わずそう零すリリ、どんどん緩む頬が止められずニマニマとしていた


「戦いには使えないけどね」

「それは気にしなくていいじゃない!」

「ふーん、本当に?」


 ニヤニヤと見つめるラーナ、リリは核心を突かれて声を張り上げる。


「いい夢ぐらい見させてよ!」

「調子に乗りすぎなんだよぉ」

「今ぐらいいいじゃない!」

「リリ? このままモンスターに向かっていったら、死ぬよ?」


 ラーナが優しくも冷静に淡々と言うので、リリの背筋が凍る。


「……確かに」

「凄いことには間違いないけど。戦いはボクに任せてね」

「わかったわ」

「リリが死んじゃったら大変だもんね」


 当り前のようにラーナから「死ぬ」という言葉が出てきたので、ここは地球とは違ってモンスターという身近な危険があることをリリは改めて認識した。


(まぁわたしも死にたくはないですしー……気をつけよっ!)

「ヤッホー、ラーナだよー!」

「ヤッホー、リリよ!」


「リリ! 無詠唱魔法使えたんだね!」

「空飛んでるのも魔法なんだから、今更じゃない?」

「あー確かに!」

「細かい話しは分かんないんだけどね」

「いつか本編かSSでボクが説明するよ!」

「ありがとっ!」



「「次回『デザートフィッシュ』その8」」



「異世界って理不尽だわー」



現在は、1日1話投稿です!

13:30、もしくは21:30にアップする予定ですが

前後する可能性があるのでご了承ください。

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