4話、ラーナのカミングアウト(2)
「ヤッホー、リリよ! 今回の一口メモ!」
「今回の名言はアメリカの作家、テリ・ギルメット」
『野菜は地球の食べ物だが、果物は天国の味がする』
「えーっと……」
「どっちもないんですけど!!」
「あと、関係ないけど」
[スイカは野菜なのに天国の味がします!」
「ここから本編でーす!」
「じゃあ、この大陸の歴史から話そうか」
「歴史? そんなもの関係あるの? モグモグ」
「まぁそのほうが、ボクの立ち位置がわかりやすいから……」
「オッケー、なら聞かせてもらうわ!」
(異世界の歴史、わたし興味津々だわ!)
ラーナの口調から察するに、今からの話は恐らく良くない話なのであろう。
リリは不安半分、高揚半分で耳を傾けることにした。
「そうだなー、どこから……やっぱり最初からかなー?」
「最初って大陸が出来た時?」
「んーん、もっと後!」
「流石にそうよね」
(大陸創生なんて、神話だもんねっ)
リリはそう口に出そうとして留まる、この世界には神が現存する世界なのかもしれないと思ったからだ。
「昔、このドラコニス大陸は悪いドラゴンが支配していて、人族と文明を築いてたらしいって所からかな?」
「ドラゴンって、あのドラゴンのこと? 見て見たーい!」
(本格的に、ファンタジーになってきたー!)
先程までの不安はどこへ行ったのか、リリの鼓動はまたもワクワクと高鳴る。
気持ちの切り替えが早く、悩みは数秒も持ち込まないというのは、彼女の長所でもあり短所でもある。
「あのって、どのドラゴン?」
「あのドラゴンは、あのドラゴンよ! 分かるでしょ?」
(西洋風とか東洋風とか、地竜とか火竜とか色々といるじゃない)
「まぁどのドラゴンでもいいや」
「っえ!? いいの?」
「いいのいいの、ボクもちっちゃい時に、集落の昔話が好きなおじいちゃん達に聞いただけだし」
手をヒラヒラとさせ答えるラーナ。
「へぇ……おじいちゃんの昔話ねー、モグモグ」
「壮大な嘘かもしれないけどねぇー」
ラーナはそう言うと乾いた笑みを浮かべる。
(興味なさそうだけど、まだわたしは興味津々よ!)
リリはまだ口に残る革鎧を噛み続けながら、急かすように質問を投げかける。
「その時代に人はいたの? ドラゴンと共生してたの? サイズは? やっぱり火を吹くの?」
「人はいたらしい、その時代の子孫って名乗ってる〈蛮族〉ドラコニアンが今もそこら中にいる、他は知らない」
「なるほどぉ、凄い時代ね!!」
(未知のドラゴン! 一回は見てみたいわ!)
「ドラコニアンは話しを聞く前に襲ってくるから、本当に共生が出来てたのかは分かんないんだってさ」
「蛮族、恐っ! みんなの敵って感じね」
(ファンタジーっぽいけど、こっちは会いたくないわー)
「まぁ危ない奴らだね、普通の人なら絶対に近付かない」
「モグ、わかったわ、覚えとく。モグモグ……」
(蛮族、ドラコニアンは危険! 脳内にメモメモっと)
「ごめん、話がそれちゃった、戻すね」
「っあ、はい」
口の中の革鎧が気になって、少しだけ意識が明後日の方へ飛んだリリ。
顎の感覚はとっくに無いが、とりあえずは噛み続けながら話を聞く。
「まず始まりは……」
「うん……」
「邪悪なドラゴンがこの大陸を支配していた!」
「うん、既にヤバそうな世界ね」
「その邪龍を倒すために、遠くの大陸から英雄達がこの大陸に乗り込んで来ました」
(熱い展開ね、王道ファンタジーって感じだわ!)
「英雄達ってことはたくさんいるの?」
「確か人族、妖精族、爬虫類族、鬼族の4人パーティーだったかな?」
「ふぇえー、種族が混合なんだ」
(ゲームとかのイメージだけど、人とかエルフだけかと思ってたわー)
「うん、鬼族からはゴブリンロードの祖先、エンズ一世が参加してたみたい」
「ゴブリンロードって王様よね?」
「みたいなものかな、だから鬼族の中でゴブリン族は強い権力を持ってるんだってさー」
「なるほどねぇ、モグモグ」
自分の祖先のことを、見知らぬ他人の様に話すラーナ。
(ラーナさんの故郷だし、もう少し詳しく聞きたいなぁ、でもこれって聞かないほうが良いやつよね、多分だけど、でも聞きたい、聞きたい、聞きたい)
リリは湧きあがる好奇心をグッとこらえて、口をムッと閉ざした。
「なんだかんだ色々とあったらしいけど、よく覚えてないし関係ないから、次行くね」
「っえ? 端折っちゃうの?」
(やっぱり、話しにくい内容だったのかな?)
「関係ないからね」
「えー、もう少し聞きたかったぁー」
「まぁまぁ、めでたくドラゴンを倒して平和になったこの大陸に、英雄の一族とか色んな種族が移り住んできましたと、さ」
「なるほどなるほど、それで?」
「これでお終い!」
「モグモグ……っえ?」
(終わり? じゃないわよね、流れ的には……)
「わかった! その後に蛮族と土地争いに発展したんでしょ!」
リリは得意げに言うが、ラーナの返事はすごく淡白な物だった。
「さぁ、ボクは興味なかったから、聞いてない」
「そっかー」
「普通に考えたら、英雄に逆らうような人は少なかったんじゃない?」
「あぁ確かにそれもそうね」
(あー外したー、恥ずっ!)
予想を外し内心を取り繕うリリ。
外面では分かっています、と言った顔を作っているので、ラーナは話しを続けた。
「ざっくり言えば、ドラゴンとの戦いが500年ぐらい前にあった、それがこの大陸の歴史だよ」
「ざっくりしすぎじゃない?」
「一応、前置きだからね」
「なるほど前置きねぇ、じゃあ続きがあるのねっ!」
「まぁね」
(歴史がラーナさんが街に入れない理由と関係あるの? 繋がりようのない気がするんだけど……)
リリは心の中で少しだけ頭を傾げた。
「ヤッホー、ラーナだよー!」
「ヤッホー、リリよ!」
「ボクのお話、どうだった?」
「端折り過ぎじゃない? もうちょっと聞きたかったわ」
「投稿と展開的には、長過ぎてもねー!」
「相変わらずメタいわね……」
「「次回『ラーナのカミングアウト』その3」」
「異世界って理不尽だわー」
一週間26日までは3話投稿する予定です。
7:30、13:30、21:30の予定ですが、前後する可能性があるのでご了承ください。




