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異世界キャンプ ~チートはなくても美味しいものがあれば充分です~  作者: 綾川 鈴鹿
《カプト地方、砂漠編》一章、死の荒原
19/115

4話、ラーナのカミングアウト(1)

前回までのあらすじ!


「地球から転移したリリは、砂漠で鬼族の少女、ラーナに出会う」

「意気投合した、わたし達の目標はごはん!」

「でも、見つけたのは革鎧!?」

「次の話は『ラーナのカミングアウト』どんな話がきけるのかなぁ?」


「さぁ本編が始まるわ!『異世界キャンプ』楽しんでみてください」


「革鎧……思っていたよりも、食べごたえあるわね」


 口を動かしながらも、リリが皮肉を多分に込めて言う。

 1時間近く噛み続けているのに、居座る革鎧は無くなる気配すらない。


(顎がもう鉛みたいに重い……今更ながら、こんなものを食べるなんて……正気の沙汰じゃない!)


 苦痛過ぎて、心の中で文句を言うリリ、対してラーナの表情は明るい。


「そう? ボクは結構、気に入ったよ? いつも食べてたファイヤリザードのステーキみたーい」


 さらっとそう言い放つラーナに、リリは唖然とする。


(っえ、よく食べてたの!?)


「ファイヤリザードって、こんなに硬いの?」

「っあ! うん……」


 急に押し黙るラーナ。

 今の会話の中で、なにかに気づいたのだろう。

 リリは異変に全く気づかずそのまま喋り続けた。


「ラーナさんはすっごく歯と顎が強いのねー。わたしはもう、顎の感覚がないわよ?」

「……そうだね」


 口ごもるラーナ、ようやく異変に気づいたリリは焦るが、表情を変えずに思案した。


(あれっ? なにか聞いちゃいけないことでも聞いた? あれぇ?)


 聞くのも無粋だろうと、リリは空気を読み、静かに口の中の革鎧と格闘をする。


(これ、柔らかくなってるのよね? 無理矢理にでも飲み込んだ方が……っあ、無理だわ)


「「……」」


 能天気に革鎧と格闘するリリ。

 対して、黙ってしまったラーナ。

 二人の間には、なんとも言えない沈黙が流れた。


「ボク……ハイ・オークなんだ、だから……」


 沈黙を破ったのはラーナであった。

 意を決しマントのフードを託し上げ、今までずっと隠していた顔をあらわにする。


(ハイ・オーク、おでこに角! これこそファンタジーだわ!!)


「可愛い!」


 リリは最初にフードの下の素顔を見ている、しかし角があることには気づいていなかった。


「角を隠す為に、モグモグ、フードを被っていたのね、モグモグ」

「怯えないの?」

「っえ? なんで怯えるの?」


(何を言ってるの? ファンタジーに鬼っ子はド定番じゃない!)


「なんでってリリ、本当にオークって知ってる?」

「もっちろん! 馬鹿にしないで、モグモグ」

「……じゃあ、なんで……」

「オークって鬼でしょ? 物凄い力が強いのよね! わたし、力が無いから羨ましいわ!」


 悲壮感を纏うラーナだか、リリはあっけらかんと答えた。


(鬼って魔王側の可能性は高いけど、わたし勇者じゃないしー、むしろどちらかと言うとモンスター枠よね、ピクシーって)


「それだけ?」


 ラーナの想像を遥かに超えた予想外の態度。

 不可思議なものを見ているかの様に、目をパチクリとさせたラーナはリリに問いかけた。


(えっ! 説明が足りなかった? えー、あー、んー)


「ほかー、モグモグ……お、大きい、そう大きい! そんなイメージがあるわ!」


 なんだか催促されているように感じたリリは、焦りながらドギマギと答えた。

 リリの返答を聞いて、ラーナはフゥーッと長く細く息を吐き、話しを続けた。


「ボク、そんな反応初めてだよ」

「っえ? わたし何か間違えちゃった?」

「いやっ、そうじゃないんだけど……良いの?」


 ラーナの表情は真顔であったが、恐らくはこれが本来のラーナなのであろう。

 先程からの漂う哀愁も、出会ったときから貼り付けられていた明るさも無い。


「良いも何も……っあ、分かった! もしかしてオークとピクシーは仲が悪かったりする?」

「そんなこと……なくも、ないんだけど……」


 口調や態度は落ち着いている。

 それでもいつになく歯切れの悪いラーナに、リリの疑問は更に深まる。


(んん? そんなに変なことを言ったかぁ?)


 リリは思い返すが、特に変なことは言ってない、はずだ。


「……モグモグ、じゃあわたしからも聞きたいんだけど、いい?」

「いいよ?」

「先に謝っとくわ、不躾なことを聞くけど、モグモグ」

「うん、なに?」

「なぜ、街から追い出されることになったの?」


 出会った時のリリは、色々な意味でテンパっていた。

 なので、ずっと気になっていた、しかしタイミングを外し聞くに聞けなかった疑問。

 それをこの機会にぶつけることにした。


「街に入れない理由……ね」

「無理には言わなくてもいいわよ?」

「……リリは、本当になにも知らなかったんだねー」

「……?? モグモグ」

「まぁいいよ、助けてくれたリリには話すつもりだったし」


(ラーナさんは、見た目も態度も普通だと思うんだけど? むしろ可愛らしい方よね?)


「ラーナさんは、なにか街から追い出されることをしたの?」

「なにかって?」

「特別な因縁? みたいな?」


 リリは素直に気になっていたことを聞いた、そこに悪意どころか善意もない。

 異世界への多少の期待感はあっただろうが、ピクシーライフを楽しもうという気持ちのみ。


(転生物ならよくある展開! 出会った人が特別な人だった! 良いわ、あがるー!)


 ラーナにはハイ・オークと知っている人から悪意のない言葉をかけられたのは久々だった。

 なのでなのか、とても歯切れが悪い。


「なんで、リリが聞くのさ……」

「だってー、なにかって言われても、思いつかないもん!」


(もしかしたらオークの姫とか? こんなに可愛いんだもの!)


 妄想をすればするほど、リリの心は高揚していった。


(それは燃える展開じゃない。姫を救う大魔法使いの妖精……良い! 萌える!)


 ラーナから返ってきた返事は、リリの思いもよらないものだった。


「特になにもしてはいない」

「していないのに、街から追い出されたの?」

「まぁね」


 淡々と答えるラーナ。


「それはひどくない? 怒ってもいいのよ?」

「まぁいつものことだから」

「いつもって、割り切れるものじゃないわよ!」

「気にするだけ、無駄だからね」


 言葉の節々から垣間見える厳しい境遇、しかし他人事かの様に達観した態度で話すラーナ。


「ひどいって思わないの?」

「思わない……しょうがないからね」

「えー、わたしならイラッとしちゃうわ、もーってね、モグモグ、モグモグ」


 過酷な環境、それを気にしていないラーナ、どちらに対してかは分からないが、リリの中で怒りが湧き上がる。


「ありがとう、でもこれは当たり前だから、気にしないでいいよ」

「そんなこと言っても、気にするわよ!」

「ボクはハイ・オークだからね」

「ハイ・オークだから? 角があるからってなんだって言うの?」

「……そっか」


 ラーナの目は真剣で、覚悟をもって打ち明けてきたであろうことはわかる。

 それでも、リリにはなぜそうなっているのかが理解できないのだ。


(やっぱり魔王側だからってこと? ファンタジーじゃ大抵そうだし)


「ヤッホー、ラーナだよー!」

「ヤッホー、リリよー!」

「リリは怖いもの知らずだねぇ」

「まぁね」

「世間知らずとも言うけどねっ!」


(後書きのラーナって言い方がきつい!!)


「「次回『ラーナのカミングアウト』その2」」


「異世界って理不尽だわー」



一週間26日までは3話投稿する予定です。

7:30、13:30、21:30の予定ですが、前後する可能性があるのでご了承ください。

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