第二話 魔法の開発
俺が生まれてから一年が過ぎようとしていた。この1年間で様々なことがわかった。まずはそれを整理してみたいと思う。
まず初めにサリラント家の現当主は俺の父親のエルドレットではなく俺のおじいちゃんの兄ザックイヴァンらしい。サリラント家はアレンタルト王国の東部全域を支配している特級貴族でかなりの権力を持っている。ちなみにエルドレットは東部地域の南側を支配している。
次に俺たちの住むこの街についてだ。街の名前はサリノア。サリノアはアレンタルト王国でも王家支配地を除いて二番目に発展している街である。サリノアの特徴は赤レンガで作られた建物や海に近いため沢山の船、サリノア山からの傾斜する土地に建ち並ぶ赤レンガの街はそれはまた絶景である。サリノアはあらゆる地方から物などが集まり貿易の街と言われるほど盛んである。前世では聞いたことない地名だから割と最近の街なんだろう。
そして魔術剣術学校についてである。この世界で無双するにはやはり学校には行くべきだと考えた。どうやらサリラント家では10歳を迎えたら学校に行くことが可能になるらしい。さすが魔術剣術に力を入れている家系だ。アレンタルトで有名なので言うとハリル魔法大学とエルリラート剣術学校が合併した王立アレント魔法学院や他にもリラット剣術学校、国立インバス魔術剣術大学などがある。まぁ学校に関してはいまのところはなんとかなるだろう。
それから学校を調べる際に知ったのだが昔とは魔法の常識が大きく変わっていた。まずはじめに魔法系統が変わっていた。
昔は「火系統」「水系統」「風系統」「黒魔法」「治癒魔法」の基礎五系統だった。
しかし今は新たに地系統、雷系統、結界魔法、召喚魔法が追加、新たに白魔法が発見され追加された。そのため今は
「火系統」「水系統」「風系統」「地系統」「雷系統」「黒魔法」「白魔法」「治癒魔法」「結界魔法」「召喚魔法」
の基礎十系統となっていた。
他にも変わったことがある。昔は詠唱展開魔法で詠唱を唱えながら魔法陣を展開するやり方や展開魔法で魔法陣を展開するやり方が主流であった。
しかし今は昔よりも大幅に詠唱が短くなったため詠唱魔法が主流となっていた。これにはとても驚いた。
三大魔法式の攻撃魔法、治癒魔法、防御魔法は変わっていなかった。正確には9つ以上の魔法式があるが今は置いておこう。
こんな感じで俺の住んでいた世界はガラリと変化を遂げていた。でもなぜだか嬉しい。ので良いこととする。現代魔法も覚えていかないと……。
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2歳になり足や手がよく発達してたくさん走れるようになった。
俺の住む家は父親の名前を取ってエルド邸と呼ぶことにしようと思う。今日はエルド邸にある図書室に行ってみた。バレると俺の専属メイドであるウハイル・ミラに怒られちゃうのでバレないように自室を出て図書室に向かう。
図書室に入ると本の独特な香りが匂ってくる。前世でよく嗅いだ匂いだ。図書室はでかく2階建てになっている。魔法書の棚に向かうと軽く500冊は超える数の本があった。
「初級魔法書、白魔法の発見、天格と魔法、人類が発展させた魔術、聖剣と魔剣、古代魔術の秘密……多々興味深いのもあるが大体読んだことがあるな……。」
俺は前世で読みまくったせいかほぼ読んだことがあった。
「近代魔法書……。」
これは面白そうだ。近世、中世、古代の魔法書は何周もしてしまったからな。俺は近代魔法書を手に取り服の中に隠した。すると前から少女がやってきた。
「……」
少女は無言だったが間違いない。姉であるレイラだった。レイラとは久し振りに会ったため俺は平らなロリお○ぱいに飛び込もうとしたが愛想をつかれた。……。悲ちいでちゅ。
レイラは無言を貫き図書館を出て行った。なんなんだ……。その数分後ミラがやって来て俺の股間に手をかけ持ち上げた。
やーん。エッチぃ。
まだ子供で未発達だからなのか中々な巨乳で美人のミラに股間を触られても興奮はしなかった。不思議な感覚だ。
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その日の夜、俺は近代魔法書を読んでみた。分厚い本だがすんなり読めた。古代魔法書よりも読みやすい。
近代魔法書には色々なことが書かれていた。もう知っているが基礎十系統や主流な魔法、魔法式などが載っていた。他にもここ最近開発された魔法についても知れた。中々面白い物であった。
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今日から魔法を少しずつ使っていきたいと思う。理由は単純に魔法を使ったことがないから。だって魔法が使えるってわくわくするじゃん!!!絶対楽しいじゃん!!!
……。
ゴホンッ
とにかく俺は前世で主力であった中世魔法を使ってみたいと思う。中世魔法は主に詠唱展開魔法を用いる。俺は中世魔法書で読んだことを頭の中から引き出す。
中世魔法の系統は火系統、水系統、風系統……。火だとエルド邸が燃えるのが怖いし、水だと水没するかもしれないから最初は風を使う事にしてみた。そういえば中世初級魔法は近代魔法の上級に匹敵するらしい。時代が進むにつれ簡単になっていったのだろう。
風系統の中世初級魔法は次の通りだ。
攻撃魔法
風波: 風の衝撃波を出す。
風刃: 風の刃で切る。
風弾: 風の弾を飛ばす。
風疾: 風を強化する。
防御魔法(補助魔法含む)
風支: 風で相手を包み支える。
風防: 風の壁を作る。
風身: 自分の身を風で纏い防ぐ。
とりあえず俺は前に一回見たことのある風支を使ってみる事にする。風支は防御魔法なので防御魔法式を使う。というかなぜミラは近代じゃなくて中世初級魔法が使えたのだろう。
俺はまず魔法陣を描く。魔法陣は指で空中に描くことができ、風系統の場合は緑色に変色する。できた魔法陣に魔力を注いでみた。
みるみる体の芯から魔力が吸われていくのを感じる。そこで俺は詠唱を始めてみた。
「汝に風の誇りと加護を与えし風神よ、風の流れと……。なんだっけ。ま、まぁいっか。風支!!!」
詠唱と共に魔法陣が緑色に発光し始める。そして俺は異変を感じる。魔法陣の上に繰り出された風支がどんどん膨張していったからだ。
……。
え、え、え、ええ!!
どういうことだ!? なぜか知らんが風支が急に膨張をし始めた。俺は何かおかしなことをしたか記憶を辿ってみる。……。あ。
「詠唱を途中で切った……。」
風支はさらに膨張し俺の部屋を埋め尽くそうとしていた。あわわゎ。
ブゥワァァンッ
「へ?」
巨大な爆発音と共に膨張し続けていた風支は破裂した。
「どうかされましたか!? セリスお坊ちゃま!?」
すぐさまミラが俺の部屋に突撃して来た。
部屋は破裂した風支によってものが散らかり散乱していた。やっちまった………。俺はそう思った。
その後ミラにはものすごく叱られた。怒ってるミラも可愛いなぁという暇はなかった。
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今俺は昨日起こった風支の爆発について考えていた。そして俺は仮説を立ててみた。
詠唱というのはその魔法を起こすためのイメージを作るためのものなんじゃないか? それで魔法陣のというのはそのイメージの媒体となって魔力を引き出すということだから詠唱だけの魔法だと詠唱だけで詠唱の力と魔法陣の力をださきゃいけないから詠唱展開魔法よりも詠唱が長くなる。つまり魔法陣の代わりを詠唱でも行なっている、ということなのでは? 昨日の一件があり俺は色々と試し、試行錯誤していた。
「汝に風の誇りと加護を与えし風神よ、風の怒りを……。 風波」
風波が膨張していく。
「消失!」
風波が一瞬にして消える。
気づいたことは、詠唱を途中で切ると魔法式が成り立たず魔法が膨張して失敗するということだ。興味深いが難しい。そういう場合は消失を使うと上級魔法以下ならば消すことができる。
1つ疑問に思ったのは消失には詠唱を必要としないで発動できるということだ。なぜか消失は詠唱がなくとも発動できた。俺は実験をしてみる。
風、風、風、風、風、風の衝撃波、風の衝撃波、発射、発射、風が発射……。
俺は風の衝撃波を頭に鮮明に思い浮かべる。
「風波!!」
大きな風音とともにエルド邸が揺れる。
「せ、すぇいこうした…?」
噛んだ。
成果はすごいぞ!! 詠唱をすっ飛ばして魔法が使えた!? うぉぉぉーー!!興奮してきた!!!
これは本当にすごい。詠唱抜きで魔法が使えた。意外と簡単に。今まで魔法を無詠唱で使ったものはいない。俺は思った。
「『創造具現』……。」
普通無詠唱なんて不可能である。
やっぱりこれスーパーレアな創造具現のおかげか……??
考えてみたが創造具現ってのは頭で想像したものをなんでも繰り出せてしまうのかも。これなら消失のことも証明できる。俺は創造具現を使い消失を詠唱なしで発動することができた。それは風波も同様である。消失というのは「無くなる」という簡単なイメージだから初めて詠唱なしで発動できたのじゃないかな。
他にも創造具現を試してみよう。
まずは頭の中で想像だ……。
強い風、強い風、鋭い鋭い、鋭い、強い風で鋭い刃のような風……。
そうそう、そのまま、そのまま……。想像しろ……考えろ……。
…………。
「風鋭!!」
鋭い形をした風が窓を貫く。
パリンッ
窓が一瞬にして割れた。
「何事ですか!? セリスお坊ちゃま!? ……はぁ!? 窓が!!」
今日も今日とてミラに怒られてしまった。反省しています……。ほんとすみません。
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それよりだ。風鋭なんて魔法はこの世に存在しない。なのにできちゃった。やっぱりそうだった。仮説は正しかった。頭の中で想像したものはなんでも繰り出せてしまうようだ。
……。
やばい能力すぎる。
今日は中世中級魔法を繰り出してみる。
「風圧弾!!!」
圧縮された風弾が高速にで発射された。
もう中級魔法を繰り出せるようになってしまった。詠唱なしで。やったぜ。日々成長ですな。
そんなことをしていたら俺はふと思った。創造具現で今までにないような魔法も繰り出せるのでは………。よし、新しい魔法を作ってみよう。
……うっわっ! なんだか超興奮してきた!!
自分で魔法作れちゃうって俺すごすぎるだろ!?
……。
いや……。自分を棚に上げすぎるのはやめよう。鼻を高くしたって良いことなんてないからな。危ない危ない。今度から注意しよう。スーパーレアスキルを二つも持っているからって調子に乗るのはダメだ。
俺は新しい魔法の案を考え出す。
水弾は初級魔法だから……。
水を伸ばして伸ばして縄みたいに? するのはどうだろうか。
とりあえずやってみよう。
水、水、水、縄、縄、縄、水の縄、水の縄……。
「水縄!!」
バシャッ
あ、あれ? 失敗した。何がいけないんだ? イメージが足らないのだろうか。
うーん……。縄と……蛇とかか。蛇が食らい付いて鞭のように攻撃する。よし!! これで行こう。
水、水、水、縄、水蛇、水蛇、蛇みたいに食らいつく感じ、鞭みたいに攻撃……。
「水鞭蛇!!!」
俺の言葉と共に蛇のような形をした水流が鞭のように柔軟に部屋の窓に食らいつく。
うおぉぉぉ!!! バカカッコいい!!! 興奮する!!!
バリンッ
あ、やっちまった。
「何かあったのですか!! セリスお坊ちゃ……ま。……またですか!?」
ミラにいつも以上に激怒された。
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今日はまたミラに怒られるのは嫌なので訓練室1にバレないように向かう。
ササッ
「ふぅ……。」
バレずに訓練室に潜入を完了した。ふふっ。甘いな。メイドたちよ。
今回はこの三日間ほどに作り出した魔法の復習をしてみようと思う。
風系統
風鋭: 風を鋭くし突き刺す。
水系統
水鞭蛇《ウォトスニップ》: 水流を柔軟にし蛇のように喰らい付く。
雷系統
雷爆撃: 目標を電撃で貫き爆破する。
電一閃: 雷爆撃の縮小版。
雷爆撃は先程作り出した。これは作り出すのに一番手こずったのだが一番カッコいい。かっこよすぎて失神しても知らねーぞ♡
雷爆撃は発動した途端目標に指定したものや人に直接電撃を喰らわせられる。光り輝く白雷が天から標的を貫き爆撃することができる。まぁ、とにかくめっっちゃカッコいい。雷爆撃は規模がでかすぎるからそれを縮小させたのが電一閃だ。簡単に言えば雷爆撃の小さい版で簡単に繰り出せる。簡単なのは俺だけかもしれないが。
一通り復習してみた。中々いい出来だったと思う。全て高い出力を持っていたし。やるなぁ、俺。
最後に電一閃を魔力全開、最大出力で使ってみようと思った。俺は鼻の穴を開けながら興奮状態で魔法を放つ。
「電一閃!!!!」
次の瞬間真っ白な電撃が空中を龍のように暴れ回る。
バチバチバチバチバチッッッ!!
あまりの威力の強さに後ろに飛ばされていた。衝撃に耐えるためか俺は目を瞑っていた。
目を開くと訓練室は焦げ茶に染まり大爆発を起こしていた。で、電一閃恐るべし……。
「今の音はなんです………か!?!?」
ミラを筆頭に数名のメイドたちが唖然としている。
「……。あははっ…………。」
俺は苦笑いをした。
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そんなことがあったが俺は魔法の扱い方に慣れていき理解していった。俺は知識は有していたが、実践することで本当の魔法の扱いを知った。
流石に電一閃のような強烈な魔法は危険なのであまり使わないがこれからも魔法開発や実践に勤しみたいと思う。
「やっぱり魔法は基礎が1番大事だよなぁ……。」
そう思い今日から毎日基礎魔法の練習と魔法開発、能力の研究をするようになった。