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二番寮に帰ってきた女たちに事情を話すと、「久しぶりにお風呂屋もいいわねぇ!」、と八人程が集まった。中にはライトミィもいる。
「クララ、大丈夫だった?」
「はい、お仕事途中で休ませてもらって今は元気です! ミチルさんから精霊避けも借りました」
「ならいいの。貴女は明日から窓掃除に回ってもらう事になったわ、私は引き続きタオル回収だから別々になるけど、精霊避けを外さないようにね」
ありがとうございます、と心配してくれるライトミィをありがたく思い、先輩に恵まれたなぁ、とクララは心がじんわり暖かくなる思いだった。
風呂屋には着替えと金銭だけ持っていけばいい、と言われたので古着屋で買い物をした際に貰った買い物袋に着替えと髪留めと財布を入れて風呂屋に向かう面々について行く。
「どこのお風呂行くの?」
「一番近い店でいいでしょ」
「そんなにお風呂屋さんあちこちにあるんですか?」
クララの疑問にライトミィが答える。
「谷底の町は結構、風呂屋は多いと思うわよ。繁華街の方は男湯が多いと思うけど、今日行くのは女湯ね」
「そうなんですね」
「今日は夕飯も風呂屋で食べるから」
「ご飯屋さんもついてるんですね!」
「繁華街だと近くの飲食店から出前取るんだけど、今日行く店は中に食事処が入ってるわ」
クララはワクワクしながらスピアーズ商店前の通りを歩いていた。帰りにスピアーズ商店がまだ開いてたらメモ帳とペンを買おうと思いながら。
風呂屋は東方風の店構えをしていた。
「オリエンタルですね!」
クララがはしゃぐと女たちも楽しそうだ。
「谷の都は西側に東方街もあるのよ」
「東側じゃないんですね」
「東側は貴族街や昔からの町だから、新しい移住者は住みにくいかもね」
東方は独特の文化圏で、美味しいものも多いと聞いていたクララは風呂屋で食べる予定の夕飯も楽しみになった。
受付で六〇パルを払い、タオルと湯浴み着と館内着、ジュース引き換え券を一枚もらう。「これは?」、とジュース引き換え券を見ていると「休憩室にてジュース一杯と引き換えます」、と書かれていた。
「一階がお風呂で、二階が休憩室や食事処よ」
さあ行こう、と女たちの後をついて行くと直ぐに更衣室に着いた。
鍵付きロッカーに荷物を入れて鍵はリストバンドと一体になっている。
服を脱いで(クララは精霊避けの首飾りをつけたまま)ワンピースタイプの湯浴み着に着替え、フェイスタオルだけ持って洗い場へ八人でぞろぞろ向かう。更衣室と洗い場の仕切り扉の辺りで「混んでないと思うけど、はぐれたらそのまま各自好きに動いて、待ち合わせは休憩室ね」、と誰かが指示を出した。
洗い場は一人用の仕切りがついてて隣に誰がいるかわからないようになっていた。クララは髪と体を洗い、髪が肩につかないようにまとめてフェイスタオルを手に浴場に向かう。
洗い場は少し天井が低くて湯気が凄かったが、湯船が並ぶ浴場は天井が高くなっていた。
「ふあー」
七つある湯船それぞれが大きいな、と口を開けて感心していたら後ろからライトミィに声をかけられる。
「入り口で止まらないの」
「あ、はい、すいません」
とりあえず近くの湯船に入ろうとするとライトミィに止められる。
「それ水風呂よ」
危ないところだった。
「湯気が出てるかどうかは確認しなさい」
全くである。クララはきょろきょろしながらお湯の色が黄色い湯船に浸かった。なんらかの薬湯だろう、湯船の隅には何か草っぽいものが入ったガーゼの袋が浮かんでいた。
「ふわー……気持ちいいですねぇ」
心配しているのか、見張りなのかライトミィも隣で湯に浸かっている。
「そうね」
「あの、今日お仕事どうでした? 途中で抜けちゃってすみません」
「いいのよ、私から提案したんだから。仕事はね、タオル回収は火の交信室に行く以外は楽な仕事だから一人減っても一日くらいなら何とかなるわ」
お互いに髪をまとめた頭の上にフェイスタオルを載せてゆったりと脚を伸ばした。




