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クララとパンダとアンジェリカ  作者: 間取良可
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 雨の中をクララと妖精パンダは歩く。精霊殿から寮まではそんなに離れていないが、ライトミィはパンダをクララにつけた。クララからすれば「ちょっと心配しすぎなのでは?」、と思わなくもない。体だってリンデから健康だと言われた、仕事を休むほどの事ではないのだ、結果的には。

「クララ、ちょっとムッとしてるのかしら?」

 大きな葉っぱを傘にしたパンダはクララの隣を歩きながら軽い調子で聞いてきた。

「ムッとしてる、って程じゃないの。でも、ちょっと今は自分の感情がわからないかもしれない」

「そういうときは、ごはんをたべて、ちょっと寝るといいのよ。たいへんだったんでしょ、今日は」

「パンダ何で知ってるの?」

 クララは不思議に思う。パンダもこっそり水の交信室にいたのだろうか? それにしては騒ぎの時に出てこなかった。

「精霊の庭にいるパンダが『ケーティから聞いたのだけど…』って教えてくれたの。ケーティはおおごえで怒鳴りながら犯人の身元を捜索中」

 ケーティ、今日話をしたばかりなのにそんなにも蛇妖精のことを調べてくれてるのか、とクララは感動した。今度会ったらお礼を言おう。

「ケーティ、いい子だね」

「ケーティのことはパンダたちも好きよ」

「精霊の庭、ってどんな所?」

「『庭』とは名ばかりの広い世界よ、こっちの人がすむ世界よりさきにあったの。海もあるし、山もあるし、雪も雨もふるわ。パンダの里もあるのよ」

 そこまで話したところで寮に着いた。クララとしてはパンダの話をもう少し聞いていたかったが今日は雨だ、葉っぱの傘のパンダは早く雨宿りするべきである。

「パンダも寮に寄ってく?」

「もうおひるどきだからおじゃましたらわるいわ。それに、寮には精霊避けが玄関にあるのよ。ルールはやぶりたくないのがパンダなの」

 だからバイバイ、とパンダは手を振って精霊殿の方に戻っていった。


 寮の玄関には雨の日は靴の乾燥台が置いてある。小袋に炭を入れたものも複数置いてあり、それを靴の中に入れて乾燥台に置いておく。

 普段は自室と談話室ではスリッパ、それ以外は靴を履いてるのだが乾燥台に靴を置くので靴下で寮に入った。

「クララちゃん、おかえりなさい! 大変だったわねぇ、リンデちゃんから連絡きてるわよ」

「ただいまです、ミチルさん。連絡?リンデさんから?」

「今日起きたトラブルでクララちゃんが先に戻る、ってパンダから聞いたから管理人の私にも連絡しておきます、ですって」

 パンダは沢山いるので連絡事項を伝えておくととても便利だ。なにしろ中身が繋がっている。

「妖精に攻撃されたのですって?」

「攻撃と言うほどでは…」

 これは連絡ミスではなかろうか、クララが思うもミチルは否定する。

「水に落とされたなら十分攻撃よぉ、邪妖精ではない、ってリンデちゃんは連絡くれたけど、邪妖精なら逆に真っ二つに斬ればいいから楽なのにぃ」

 おっ、不穏なことを言っている! クララは谷の都の女性は強いなぁ、と思いながら昔教科書で読んだ邪妖精について思い出す。

 確か心が悪に染まり判断力を失った精霊や妖精だ。肉体が無くとも目に見えるようになり、人域と獣域の境界付近にしかいられなくなる…だった気がする。

 その条件なら確かにあの蛇妖精は邪妖精ではないのだろう。人域ど真ん中の谷の都にいたのだから。

「とりあえず部屋で着替えてらっしゃいな、お昼ご飯はどうする? おうどんで良ければ作るわぁ」

「わーい! うどん食べたいです!」

 クララは麺類も好きだ。


 黄金色のスープの中にある白いうどん…ほかほかと湯気と香りをあげる丼、クララは食前の祈りを短く済ませて箸を持つ。

 ずるる、とすすっていい食べ物なのだがクララはあまりすするのが上手くできないので箸でうどんをせっせと口に運ぶ。

「美味しい!」

「まあ、良かったわぁ」

 ミチルさんの料理は本当にハズレが無いなぁ、なんて思いつつ食べる食べる食べる。

 食べ終わると体もほかほか温かくなっていた。

 冷たい水を飲んで口の中をさっぱりさせて空いた器をキッチンに運ぶとクララは気になった事をミチルに聞く。

「ミチルさん、お昼ご飯代はどうしたらいいですか?」

 ミチルに朝食を用意してもらう時は材料費だけ給料から天引きされている、昼食も同じだろうか。

「うーん、今日はサービスってことで。実はおうどんは残り物だったのよ。片付けを手伝ってもらっちゃったわ!」

「いいんでしょうか?」

「いいのよー」

 ありがとうございます、とクララは使った食器を洗って水切り籠に入れておいた。

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