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クララとパンダとアンジェリカ  作者: 間取良可
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 ーー精霊よりは肉体がある分妖精の方が自制が効く者が多い。急に飛びつくこともないだろうーーそんな考えでいたアンジェリカの目の前でクララは見知らぬ妖精によって水の中に引きずり込まれた。

「今の誰よ! クララ! クララ!」

 ケーティが続いて水の中に潜っていく。

 アンジェリカは呆然とクララが引きずり込まれた際の水飛沫で濡れた自分の服の袖を掴んだ。

「アンジェリカ! ソフィアに! ソフィアに知らせなさい! 貴女がここに居るなら水の中にいるのでしょう!?」

 ライトミィに肩をつかまれたアンジェリカは口からハッと息を吐いて手のひらに魔力で鳥を作り出す。

 歪だが、なんとか鳥だとわかる形に成形して言葉を籠める。

『雑用係が一人、蛇型の妖精に水の中に連れていかれました。救助願います』

 鳥に触れればこの声が聴こえるようになっている。

 プールの中にソフィアは必ずいる、居るのだがプールの底にいるか中程にいるかはわからない。他にも精霊士は二人プール内にいる筈なので誰かに辿り着いてくれればいい。

 鳥にはソフィアの魔力を優先的に辿るように設定して水の中に放った。

 アンジェリカは震えながらその場に座り込む。

「ご……ごめんなさい……こんな事になるなんて……」

「まだ謝罪するべき時じゃないし、謝るならクララに謝りなさい。今は落ち着いて、待ちましょう」

 ライトミィはアンジェリカの手を優しく包み、目を合わせてアンジェリカを励ます。

「ソフィアならクララを助けられる。他に誰が潜って交信してるか知らないけど、誰かがクララを助けてくれるわ」

「はい……」


 水の中で空気に包まれて精霊たちと交信していたアッディルは頭を下に、脚を上にゆらゆらとしていた。

 川の流れが悪くなった場所の話を聞いたり、雨雲ができそうな場所を聞いたり、治水や天候についての話と世間話をしていたアッディルの視界の隅に随分と歪な伝言魔法の鳥が見えた。

 その鳥の尾羽が一つこちらへふわふわ泳いできたので精霊たちとの会話を切り上げて掴むとメッセージが流れてくる。

『雑用係が一人、蛇型の妖精に水の中に連れていかれました。救助願います』

 大変だ。

 雑用係は紺色の制服を着ている。暗い水の中では見つけにくい。アッディルはプールの中を照らすようにとにかく明るくなる照明魔法を出しまくった。

 アッディルの周りから徐々に明るくなっていくと、蛇の姿の妖精にグルグルに巻きつかれた雑用係の制服を着た女が見えた。アッディルの勘では見習いのアンジェリカより年上だ。

 明るい範囲にいる内に空気で包んでやらねば、とシャボン玉を膨らますように空気の塊を作り出すも蛇はどんどんと水底の方に進んでいく。

 そこへ小さな人魚が猛スピードで蛇の頭に飛びつき邪魔をした。

 蛇と人魚が争っている内に雑用係に近づいたアッディルは彼女を空気の中に入れてやる。雑用係は水を吐きながら目を大きく開いて咳き込んだ。

 次は蛇の妖精を雑用係から引き剥がさなければ、と考え蛇の胴体を掴むと蛇の頭がベリベリと二つに裂けて両方ともが頭になり一つはアッディルの腕に咬みつき、もう一つの頭も小さな人魚に咬みついた。

「痛ーい! おまけにあんた人間に咬みついた! どこの妖精よ! 誰に教育されたの!」

 小さな人魚が叫ぶ。アッディルもこれには驚いた。人の世界に来る妖精はそうそう人を傷つける者はいないのだが、どうやらこの蛇は違うらしい。

 周りが明るくなる。アッディルが出した魔法とは違う照明魔法でプール中が照らされていく。

「ばあちゃんか? それとも他の誰か?」

 アッディルが呟いた直後、プールの底から長い腕が伸びてきて鋭く尖った爪で蛇の胴を的確に刺した。

 流石に堪らなかったのか、蛇は更に頭を二つ増やして合計四つになった頭で自分を襲った腕に咬みついていく。

 この攻撃法に思い当たる精霊士は一人しかいない、アッディルは蛇から解放された雑用係の女を抱えて水面へ向かう。小さな人魚もついてくる、この人魚は無害だろうかと思いつつ、先程一緒に蛇に咬まれたから大丈夫だろう、と楽観的であった。

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