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「アンジェリカさん、お昼はどうしましょう?」
アンジェリカはクララに聞かれて直ぐに答えを導き出す。
「大通りに出て屋台で買って、公園で食べましょう」
昼を少し過ぎた時間なので混んでる気もするが、アンジェリカは屋台街にクララと行ってみたかった。屋台街で何か食べる時は兄と一緒の時で、アンジェリカはいつも公園で待たされて兄たちが色々買ってきてくれる。
けれどアンジェリカは自分で買い食いをしてみたかった。クララと一緒なら迷うのも楽しそうだ。
「屋台ですか!谷の都では初めてです!」
クララも笑顔で提案を受け入れてくれた。
早速雑貨屋のある通りから大通りに出て屋台のひしめく方へ向かう。人通りも多くなっていく。
肉の焼ける匂いにクララのテンションも上がっていった。
串焼き、焼き饅頭、ベビーカステラ、ホットドッグ、フルーツ、水餃子、クララの目は様々な屋台を通り過ぎながら体は人を避ける。
「アンジェリカさん、アンジェリカさん、なにを食べましょう?」
クララ同様に右へ左へ視線を向けるアンジェリカは少し悩んだ後に通りを真っ直ぐ見る。
「ピタパンサンドの屋台がある筈なんだけど、そこにしたいな、って思ってて」
「ピタパンって薄いパンですよね?」
「そうよ」
アンジェリカは前に食べて美味しかったものを挙げた。慎重なタイプなのだ。
「まだ屋台も結構ありますから、取り敢えず歩いてみましょう」
クララはそう言いながら、やはり右へ左へと視線を動かす。焼き団子を売ってる店を見て、そこから香ってくる香ばしさにつられそうになった。
アンジェリカが「あったわ!」、と声を上げるのを見れば、そこにピタパンサンドの屋台があった。
「ありましたね、ここにしますか?」
「……でも、クララは屋台街は初めてでしょう?端まで行ってみましょう。こういうのは全部見てから決めるものよ」
アンジェリカの「全部見てから決めるもの」というのは祖母からの教えなのだが勿論クララはそんな事は知らない。アンジェリカの言う通りに端まで見てみたいな、と思い頷いた。
そこからもジュースだけ売る屋台や、飴細工の屋台、焼きそば、ケバブ、パン屋から出店している甘いパンの屋台など様々にあった。
「うーん、やっぱり私はピタパンサンドだわ」
「私はピタパンサンドと、その近くの焼き団子が気になりました」
焼き団子に蜜をかけた「みたらし団子」が気になって仕方ないクララはピタパンサンドと一緒に買ってしまう事にした。「みたらし団子」だけではお腹はいっぱいにならないと判断したからだ。
「じゃあ、戻って並びましょ」
屋台街は長く、人通りも多いので中々いい運動になるな、とアンジェリカは思っていたがクララには運動にもならない距離であった。この二人、どうしてもズレがある。
公園にはテーブルと椅子がセットになってるフリースペースもあるのだが、昼時なので全て埋まっていた。
クララとアンジェリカはベンチに腰掛けて買った食べ物をお互いの間に置く。
クララは鶏ハムとチーズと野菜を挟んだピタパン、みたらし団子とごま団子(見たら食べたくなった)、オレンジジュースを。
アンジェリカはポテトサラダとレタスを挟んだピタパンとオレンジジュースだ。
食前の祈りを済ませて二人でピタパンサンドにかぶり付く。
「美味しいです!」
「そうね、美味しいわ」
クララの一口は大きく、アンジェリカがまだ半分しか食べていないのにピタパンを食べ終わってしまった。次はみたらし団子を食べる。
クララは餅は初めてではない、以前ミチルの朝ご飯に出てきた事がある。しかし、屋台で買った焼き団子は外側はパリッとし、たっぷりに伸びる。かかっている蜜も香ばしい香りと甘さが優しくて、とても美味しい。
伸びる餅を見てると妖精パンダを思い出したが、何かの間違いだと思うことにした。
みたらし団子を食べ終わると、アンジェリカもピタパンを食べ終わっていたので二個入りのごま団子を一つ差し出す。
「え!?そんな、貰えないわよ」
「今日、お付き合い頂いたので!感謝の気持ちです!」
えーうーんー、と唸ったアンジェリカだが、「気持ちなら……」、とごま団子を受け取った。
ごま団子は餅の外側に胡麻が目一杯付いていて、店頭で揚げられていてまだ温かい。
それを齧れば胡麻が奥歯でぷちぷちと音を鳴らし、餅は柔らかで、中に入っている餡は良い香りがする。
「このお団子、餡に胡麻が練り込まれてるのね」
アンジェリカの感想に「なるほど!」、と頷いてクララは二口でごま団子を食べてしまった。食べやすくて美味しい。みたらし団子より甘いのでこれくらいの大きさでいいのかもしれない。
そう思いながら飲んだオレンジジュースは酸っぱく感じて、餡とオレンジジュースは相性悪いんだな、とクララは学んだ。




