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谷の都であんやくするパンダ。
かわいい、かわいい、妖精パンダリオン。
勇気のない子のせなかをおすパンダリオン。
きょうもあの子をたすけるのよ。
「はー、お腹いっぱいです!」
「クララ食べ過ぎじゃない?」
「今日はジムも図書館も行ったので大丈夫です!」
「ジムはともかく図書館は関係ないわよ!」
きゃらきゃらと喋りながら大食堂を後にして寮に向かう雑用係の女の集団。
まだだ、とパンダは女たちを先導しながら光らせた耳を会話に傾ける。
「クララ、明日も休みでしょ?なにするの?」
「明日は行ってみたいカフェがあります」
「いいなー、美味しいもの食べてきなよ」
「はい!」
ここだ!、とパンダは後ろを振り返る。後ろを見たまま先導するなんてお茶の子さいさいだ。
「クララはあした、カフェにいくのね?」
「うん、そうだよ」
「ならいっしょにアンジェリカもつれていくのよ。なにも予定がなくて家にいるだけの休日なのよ」
嘘ではない。アンジェリカは今日も明日も自主的に家の手伝いをしようとしていた。他のパンダが確認している。
「アンジェリカさんも一緒!楽しそう!いいね!」
クララからのその言葉を了承と受け取り、パンダはアンジェリカの元にいるパンダにゴーサインを出す。
「アンジェリカ、あしたクララがアンジェリカとカフェに行きたいっていってるわ。どうする?」
アンジェリカは裁縫の練習に端切れを使ってパンダサイズの服を作っていた。今は型紙を布に載せている最中なのでどんなにビックリしても型紙と布が机から落ちるだけ、と判断したパンダが言い出す。
「え!?クララからカフェの誘い!?そ、そんないきなり!?」
「ほらほら行きたいの?行きたくないの?」
「行きたいわ!」
よし、と頷いたパンダは一気に決めてしまう。
「じゃあ、あしたの十時に精霊殿のまえでまちあわせね」
これはクララの意見もアンジェリカの予定も反映してないパンダが勝手に決めた時間と待ち合わせ場所である。
しかしクララもアンジェリカも同時に頷いた。
「アンジェリカさんとお出かけだー!」
「クララ、アンジェリカちゃんと仲良いの?」
同寮の女にそう聞かれてクララは一瞬考える。
「谷の都に来た初日から色々お世話になっています!」
「なるほど」
「刷り込みね」
「最初に世話になっちゃうとね」
「私もミチルに絶対的信頼置いてるわ」
「わかる」
「帰ったらクララの部屋行きましょうよ、カフェのレベルは知らないけど、この子適当な格好して行きそうで心配」
「オーキッド衣料品店の娘さんだもんね、アンジェリカ。オシャレしてきたらバランス取れないわ」
うまい方向に進んでる、そうパンダはほくそ笑んだ。クララだけが女たちが何を言っているのかわからなくて目をぱちぱちさせながら寮に帰って行くのだ。
「あ、明日、クララとお出かけ!カフェ!どこの!?」
「そこまではわからないのよ」
「何着て行こう!?」
泣きそうな顔をしたアンジェリカはクローゼットを開けて並んでいるワンピースやチュニックを見る。
相手はあの何処か芋っぽいクララだ。持ってる服で一番上等なのは制服に違いない。あまり派手な服では釣り合いが取れない。かと言ってダサい服なんて持ってない!当たり前だ!
「パンダ!どうしよう!」
「パンダ的にはムリした格好はしなくていいとおもうの。キレイめの格好より、ナチュラル路線のお洋服がいいとおもうわ」
その言葉にアンジェリカはチュニックワンピースを一着取り、姿見の前に立ってみる。
これなら、素朴な感じもオシャレな感じもあるし、刺繍に合わせて柄タイツを履いて……、靴は……、髪型は……、リボンは……。
黙々と考えるアンジェリカを兄の一人が「夕飯だよー」、と呼びに来た。




