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クララとパンダとアンジェリカ  作者: 間取良可
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 『嵐舞』を終えて家に帰ったアンジェリカは仕事をしている家族には会えず、家政婦にだけ挨拶をして部屋に戻り、荷解きをした。妖精パンダを一体だけ部屋に連れて。


「ど、どうしよう……私、クララに言い過ぎちゃったかしら?でも言わなきゃいけないと思ったし、言わないとクララ同じ失敗しちゃうかもしれないし……でも言い方悪かった?き、嫌われちゃうかしら……!」

 使用済みのタオルや衣類などの洗濯物と未使用に終わった靴下などを仕分けしながらアンジェリカはわあわあとパンダに訴えた。

「おちつくのよアンジェリカ。アンジェリカはなにも悪いことしてないわ。良いことをしたのよ。それがわからないクララじゃないわ」

 『嵐舞』で使った衣装をトルソーに着せながらアンジェリカはパンダの言葉に何度も頷いた。

「そうかしら、そうかもしれない」

 パンダはここで攻めの姿勢を取る。

「クララはアンジェリカのことをわかってくれるわ、ともだちなんだもの!」

 え!、とアンジェリカは頬を染めた。友達、友達、アンジェリカが持ってなくて、とても欲しいけど作り方がわからないもの。

「とととと友達なんて!まだ早いわ!『友達になって』とも言ってないんだし!」

 パンダはアンジェリカに見えないようにニヤリと笑い、いっちょうあがり、と全てのパンダと感覚を共有した。

 個にして全、全にして個。それが妖精パンダリオンであったのだ。


 アンジェリカは片付けを済ませ、普段着に着替えると家族に帰宅の挨拶をして回った。三つ子の兄が二組いるアンジェリカは祖父、祖母、父、母、兄、兄、兄、兄、兄、兄、と挨拶回りが大変だが一人一人に抱きしめられて労われるのが大好きなのだ。

 それが終われば祖母の元に行き修行中の針子たちと一緒に売り物の服にボタン付けをして昼まで過ごした。

 アンジェリカは元々は家の手伝いをする将来を思い描き、小さな頃から祖母に針仕事を教わっていた。布に糸を通す事は楽しく、針子として見習い、一人前となるのが夢でもあったのだ。

 しかし半年前にパンダたちに囲まれて、

「アンジェリカはできる子ね、お針子しながら精霊士にならない?いま人手不足なの」

 と誘われて、二足草鞋で出来るなら、と頷いたのだ。

 実際には精霊士として覚える事が多すぎて家の手伝いはできなくなった。

 こうして休日に針と糸を触れる時だけ手伝っている。腕は中々であるが、いつも仕事ができる訳ではなかったので常に下っ端の仕事を手伝っていた。


 昼食は家族揃って……という訳にもいかない。それぞれの仕事時間が違うので祖父、祖母、兄の内二人と家政婦の作った昼食を食べる。

 兄たちはやたらとアンジェリカと一緒の食事を喜ぶ。いつも夕飯は一緒に食べるのに変なものだ。

 世の兄たちはそんなに妹と一緒の食事を喜ぶのだろうか?、と疑問に思ったこともあったけど、兄の居るリンデに聞いてみたところ「うちの兄?一緒に食事?喜んでくれるよ、もの凄く」、と返事がされたので世の兄は妹が大好きなのだ、とアンジェリカは納得した。


 午後も針子の仕事を手伝って、端切れでブローチにもなるし髪飾りにもなるリボンを作ったりした。そうしている内にオーキッド衣料品店は閉店時間となり、仕事場の掃除と店内の掃除を手伝って、少し遅めの夕飯の時間だ。

 家政婦は通いなので夕飯を作り終えたら帰っている。祖父と父と兄の一人が経理をしているので後から食べると言う。母も父たちと一緒に食べるらしい。祖母と兄の内の一人が食事を温め直して並べてくれたので礼を言って席に着いた。

 祖母は静かに、兄五人はやや騒がしく食事を取り、アンジェリカはそんな兄たちを見ている。

家族と取る食事と、ソフィアと食べる食事は、クララと一緒に食べる事とは少し違うのだな、とそこで気付いた。


 シャワーを浴びてパジャマを着たアンジェリカは部屋でトルソーに着せた『嵐舞』の衣装を見ていた。

 慌てて用意した物だが、着心地と動きやすさは良かった。でもマディの衣装を見てしまうともう少し派手にしてもよかったかと思うのだ。

 アンジェリカは部屋にある小箱の中から一つを取って中身を出す。中からはレースが数種類出てきた。

「もっと飾っても良かったわね……」

 次があれば一から自分で手作りしたいな、そう考えると楽しくなってくる。自信のある衣装であれば、『嵐舞』の祭壇前で尻込みせずに済んだのだろうか。

 もっと、魔法が上手く使えれば、もっと一人前に近ければ、もっと、色々、優れていれば。

 ぐるぐる考えだす自分の思考を止めたくて、レースを箱にしまいベッドに潜り込んだ。

 明日と明後日はお休みだ。なにをしようか、アンジェリカはこれといって決めていなかった。

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