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クララとパンダとアンジェリカ  作者: 間取良可
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「あ、ラーズさんにもターンさんにもご挨拶できませんでしたね、またお会いできるといいんですけど」

 前を行くクララに手を引かれながらアンジェリカは繋がれた手以上に頬を熱くさせていた。

「『嵐舞』、なんだかんだ他の雑用係の皆さんにお世話になりっぱなしでしたけど、大丈夫だったんでしょうか、私、なんで参加したんでしょう」

 自分が『嵐舞』に参加した理由すら知らずに細々と雑用をし、菓子を食べ、雑用をし、食事は多めに食べていたクララをアンジェリカは信じられないものを見る目で見た。

「あれ?この道、どっちでしたっけ?」

 分かれ道で足を止めたクララにアンジェリカはここだ!、と繋がれた手を振り払って答えた。

「まだ道がわからないのに前を歩いていたの?寮はこっちよ」

 そう言って先導するようにアンジェリカは時々後ろを振り返りながら歩いていく。

「アンジェリカさん!」

「なあに?」

「アンジェリカさんの踊り、素敵でした」

 歩きながら、歩くのを止めないようにしながらアンジェリカは平静を装う。

「そう」

「ふわっとしてました」

 それは褒め言葉なのだろうか、アンジェリカはむむむ、と判断に迷う。

「なんだかパンダたちが踊るのを思い出したんです」

 妖精パンダの踊りはやや滑稽なのだが、褒められているのか?、アンジェリカは落ち込む寸前である。

「とても楽しい気持ちと、『一緒に踊ろう』って気持ちが伝わってきました」

 そこまで聞いてアンジェリカは振り返った。

 それが伝わればいい、精霊に一番伝わってほしい気持ちはそれだったのだ。

「……アナタ、ちょっと勘はいいわね」

 照れ臭くなりながらそれだけ言って、アンジェリカはまた前を向いて歩き出す。


 スピアーズ商店のある通りまで来るとアンジェリカはクララと向き合い目を見て話し始める。

「クララ、お疲れ様。雑用係としては微妙な働きだったと思うけど、事前準備や予備知識の乏しい中では頑張ったと思う。あと、私の足が止まった時、押してくれてありがとう。やり方は良くなかったけど」

「え、え、あ、ありがとうございます?」

 いきなりそんな事を言われると思わなかったクララは目を丸くしながらお礼を言う。

「でもベッドが四つしかないのにリンデ先輩に相談せずにベッドを使ったのはどうかと思う」

「それは反省しております……」

 あとでリンデに聞いた時に「寝ないから大丈夫」、と言われて本当に助かった。本来なら精霊士四人がベッドを使い、クララは寝袋でも使えばよかったのだ。

「あと、精霊士じゃないのにリンデ先輩が用意したお菓子を沢山食べたのも駄目だったと思う。あれ、私たちの魔力補給用でもあったから」

「え!?そうなんですか!?」

 雑用係テントにも同じくらい菓子が出されてると聞いて食べていいものだと思ったのだ。

「だから、もし次があったらそういうところに気をつけて」

「は、はい」

「それだけ、じゃあね。雑用係も休暇は貰えると思うわ」

「あ、はい!アンジェリカさん、お疲れ様でした!さようなら!」

 一人、家へと歩き出すアンジェリカの後ろ姿に手を振っていると、アンジェリカにはすぐパンダたちが寄ってきた。家まで送っていくのだろう。


 アンジェリカに言われた事を反芻しながらクララは寮の扉を開ける。

「ただいま戻りましたー!」

 そう言っても今の時間は皆働きに出ている。

「おかえり」

「クララちゃん、おかえりなさーい」

 寮の食堂ではライトミィとミチルがお茶をしていた。

「ただいまです!……ミィさん何故こちらに?お仕事は?」

「今日は休みよ」

 ライトミィはニヤリ、と笑ってお茶を飲む。

「クララちゃんは明日と明後日の二日間休みね、ゆっくり休んでね」

「え、あ、はい、私二日間お休みなんですね」

「朝、帰ってきてるけど、今日まで『嵐舞』の仕事をした事になるから三日分の手当が付くわよ、良かったわね」

「どうだった?『嵐舞』。女の子の雑用係で選ばれる人は居ないから聞いてみたいわぁ……あ、でも先に荷物解いてきなさいな」

「シャワーも浴びちゃいなさい」

 そうなのだ、キャンプにはシャワーはない。

 テント内で体は拭いたが、堂々と全裸になれる訳でも無いので控えめにコソコソと体を部分的に拭いただけだ。シャワー浴びたい。

「シャワーいいですね!行ってきます!」

 クララは笑顔で部屋に戻り、着替えとタオルを持ってシャワー室へ入っていった。

 ああ、帰ってきたんだなぁ、と感じる。まだ谷の都に来て日は浅いかもしれないが、ここはクララの第二の家である。

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