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以前登場した赤竜ターンの竜騎手ラディくんですが、他のキャラと名前似過ぎてたんで「ラーズ」に名前が変わりました。
よろしくお願いします。
夜が明けると同時に雑用係の男たちとエルジャイブは起きて動き出した。ラーズと赤竜ターンが来るまでに片付けを終わらせたかったのだ。素早く荷物を外に運んだ雑用係用テントに火の番を買って出ていたリンデが入り、二段ベッドや机や絨毯などを片付けていく。
消えるように失せていく家具たちは実際に消えている訳ではなく、リンデの屋敷の一室に瞬間移動させられているだけである。
クララを含む女たちが起きる頃にはキャンプは精霊士用テントと調理場代わりの魔法の火だけが残されるのみであった。焚き火も無い。
「え!?もう片付いてる!?」
今日も頑張るぞ!、とテントから出てきたクララは驚き、近くに居たアーロンに「起こしてもらえたら手伝えました!」、と訴えたが、アーロンは「リンデさんしか女性用テントに入れなかったし、リンデさんが忙しかったものだから、すまない」と謝られてしまった。
謝られたら仕方ない、とクララは仕事を得られなかった事を諦めるしかないのだ。
マディやソフィアも起きてテントから出てくるが、周囲の様子に驚きもしないでお茶を淹れて飲んでいる。アンジェリカだけが「なんで!?」、と驚いていたが。
朝食にパンとスープを食べたらリンデの送還魔法で妖精パンダを谷の都に還す事になった。
「じゃあ、みんな、またあとでね」
それだけ言ってパンダは魔法陣に吸い込まれていく。吸い込まれていく姿がちょっと不細工でクララは笑いそうになったが唇を噛み締めて我慢した。
「リンデ先輩、召喚魔法はどのくらいで使えるようになりますか?」
アンジェリカはパンダに手を振ってから真剣な顔でリンデに聞く。
その問いにリンデは悩むように空を見上げてから答える。
「アンジェリカが今の努力を続ければ十年。今以上の努力をすれば五年ってところかな」
「……ありがとうございます、頑張ります」
クララには分からない話だったが、アンジェリカの道は険しいようだ。
精霊士用テントの片付けも調理場の片付けも終わって待機していると、谷の都方面から大きな影が飛んでくるのが見えた。四本腕の赤竜ターンだ。
「最終確認です!黒いシールが上面、白いシールは下面です!間違わないように!」
荷物を積み込む段取りを書いた紙を持ったアーロンが呼びかける。クララは手を挙げて「はい!」と返事をした。周りの男たちは特に返事はしなかった。
「ターンからテレパシーだ、聞こえたかリンデ?」
「聞こえたよ、結界を張って待機、だ」
リンデはたちまちに結界を張ってターンが降りてくるのを待つ。クララは魔法魔術をなんの動作も無く使うリンデを見てて周りの男たちに聞いてみた。
「結界魔法ってそんなに簡単にできるものなんですか?」
周りの雑用係たちは「それは無い」とアーロンとサザを指差す。
「アーロンは魔法も教えてくれる学校に通ってたから自分だけは結界で覆えるけど、それも難しいんだってよ」
「サザは有翼種だから飛ぶ時に防風結界張るけど、それも血筋が成せる技だって」
「そうなんですか」
「そうなんですね」
クララとメルクは初めて知る事に口を開けて納得した。
赤竜ターンと竜騎手ラーズが降りてくる。周りの草木は風で暴れるが、結界内のクララたちには風ひとつ来ない。
ターンの首からラーズが降りて来るとエルジャイブが谷の都に嵐は行ったかと尋ねる。
「いやぁ、小雨だけっすね。『嵐舞』お疲れ様でした」
「よし、なら早速撤収作業に入っていいか」
「どうぞどうぞ、ターンの尻尾側にタラップ出しますね」
軽々とターンの尻尾を登ったラーズは尻尾の付け根にあるワイヤーを巻くと尻尾を登る為の簡易タラップが出来る。「どうぞ!」、とラーズが声を上げたのを切っ掛けに雑用係たちは荷物を積み込み始めた。
来る時よりも食料や消耗品が減った分、軽い箱が増えている。テント用品の入った重い箱もソフィアとリンデが魔法で持ち上げて運んでしまい、荷積は早く終わった。あとは各自手荷物を持って乗り込むだけだ。
「はい、クララちゃんはここ」
ラーズに場所を指定されて敷物の敷かれたターンの背に行けばハーネスが来る時よりも多く用意されていた。
なんて良い人なんだろう!
「ラーズさん!ありがとうございます!」
「送った後に同僚にクララちゃんの話したら『もっとハーネス増やした方がいい』って言われたんすよ」
「同僚さん?」
「ヴァルキリヤって、見た目が女の子みたいな男っす」
「ヴァルキリヤさん……!!」
竜騎手は良い人が多いなぁ、と思いながらガチャガチャハーネスを装備していくと見事に「ハーネスぐるぐるちゃん再び」、となった。




