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ソフィアが四時間踊った後、マディが踊っている最中に空が晴れた。
マディは周囲に礼をし、祭壇を下りる。
次には誰も祭壇に入らなかった。
「お、終わった……んですか?」
「終わりね」
祭壇方向を見て困惑するクララにアンジェリカが答える。
「もう雨風の精霊いないもの。みんな何処かに行ったか、少数は谷の都に行ったわ」
「そもそも嵐になるくらいの精霊が集まって谷の都に行こうとするのは何故なんでしょう?」
「大体は観光気分よ」
「え?嵐が起こる理由ってそんな事なんですか?」
「人が住んでなければ嵐の認識も無く通り過ぎて解散して終わりなんだけどね、谷の都は人が昔から住んでるし、色々な精霊の通り道にもなってるから仕方ないわ」
祭壇からマディが戻ってきて、バスタブに入る。あまり雨も降ってなかったので濡れてないが、とりあえず熱い湯に入りたいらしい。クララが湯を熱めに出した。
「はぁ〜、極楽、極楽。今回は早めに終わったね、もう夕方近いから帰りは明日になるかね?」
「エルジャイブに聞いてきます」
アンジェリカがエルジャイブを探しにその場を離れる。クララは湯をバスタブに注ぎながらマディに聞いた。
「マディさん、長いときの『嵐舞』はどれくらいかかるんですか?」
「んん?そうだねぇ、人が吹っ飛ぶくらいの風が吹く時は七日七晩二人ずつ踊ったねぇ。あの時は流石に倒れる精霊士も出たもんだ」
「そんなに!?」
精霊士は大変な仕事だな、とクララは改めて思った。
踊り手が居なくなれば楽団も曲を締める。
盛大に全員が音を奏でて指揮者に従い、音を納めて終了だ。
魔力を楽団の銀霊たちに供給する役割のリンデも椅子から立ち上がり拍手を送る。
銀霊三十人がふわふわとしながらその拍手を受け取り、満足して笑い、リンデに礼をした。
「ああ、素晴らしい演奏だったよ。途中、中座してしまった事をまずは謝らせておくれ」
「構いませんよ、リンデさん、何せ貴女はまだ生きてる身、にも関わらず最低限の休憩だけで我々に付き合ってくださった。こちらこそ感謝を」
「それに貴女や、エルフの彼……エルジャイブにも感謝を。魔力が無ければ我々は演奏しながら消え失せていたでしょう」
「このように集まって演奏する場を用意して下さったことも、我々はあなた方生きている皆さんに感謝しかないのです」
銀霊たちから口々に礼を言われるものだから、リンデは笑顔になって「次は大きなコンサートホールでやりたいものだね」、と言った。
それを聞いた銀霊たちはまた盛り上がるのだ。
マディの言う通り、帰りは次の日の朝になった。エルジャイブが魔法で出した鳥に伝言を乗せて谷の都に飛ばす。
アンジェリカがそれを伝えると、マディはバスタブから上がって「じゃあ、着替えるとするかい」と乾燥魔法を使いながらテントに入って行った。
クララはエルジャイブに指示を仰ぎに行き、アンジェリカは着替えの為にテントに入って行った。




