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クララがメルクの普段の仕事(大食堂周りの雑用だ)の話を聞いていると、アーロンがやってきてメルクに「そろそろ休め」と言ってきた。次はアーロンが火の番らしい。
実はクララには今回シフトが当てらていない。雑用係として『嵐舞』について行く面々は会議で決まり、会議の終わりに妖精パンダに同行するよう求められたクララの能力がわからなかったので、最低限の教育だけエルジャイブに任せられ、会議で選ばれた雑用係の面々は日々忙しく準備に奔走していた。
クララに与えられた役割は「雑用係のお手伝い」と「女性精霊士のサポート」である。どちらも必要と言えば必要かもしれないが、どちらかと言えば無くても構わない役職であった。
よってシフトには組み込まれず、クララの裁量で休んでいいし、働いてもいいのだ。そんな滅茶苦茶が許されているのは「妖精パンダがクララが今回の『嵐舞』に必要だと思った」事に尽きる。
妖精の言葉は精霊との交信と同じく精霊士には重たいものだった。
メルクはテントに戻り、アーロンが折り畳み式の椅子に腰掛ける。焚き火にはまだ薪を出さなくても良いだろう。
「クララさんは疲れてないか」
「まだまだいけます!」
アーロンは目にグラスを掛けている。クララの脳裏には真っ黒なグラスをかけたミシアが連想されたが、アーロンのは透明のレンズに黒いフレームだ。視力矯正のものだろう。
「アーロンさんは、普段どちらで働いているんですか?」
大食堂の奥で働いているメルクとは今回の『嵐舞』で初対面だった。サザとは廊下掃除の際に窓を拭いてるのを見た事がある。他の雑用係の男たちとも何となく挨拶を交わした事はあった。アーロンとは今回が初対面だ。
「僕は普段、気象室の雑用だよ。資料をまとめたり、東西の精霊殿と情報のすり合わせをしたり」
「気象室ですか」
「気象室は掃除は自分たちでやるからあまり馴染みはないのかな。五階にあるんだ」
「五階ですと、まだ私はあまり仕事した事はないですね」
「そうか……まあ、天気予報の手伝いだよ、将来的には気象予報士になりたいんだ」
「なれるんですか!?雑用係から!」
「なれるよ、頑張ればね」
精霊殿の大きな仕事の一つが「気象予報」である。
精霊たちから入手した情報を元に天候を予測して人々に告げる。それは人々の生活に大きく影響を与える仕事だ。
精霊殿に務めてればそんな仕事にも将来就けるのか!、とクララは口を大きく開けて感心した。




