53
「メルクさん!スープ温まりました!」
「じゃあ、鍋を火の弱い所に寄せて。こっちも温まったから」
そう言って鉄板の隅に焼きうどんを寄せるメルクは不安になった。
「スープとうどんだけで大丈夫かな……アヒージョ食べちゃったし……」
「美味しいから大丈夫ですよ!」
「何か他になかったかなぁ」
そう言ってメルクが探る箱の中をクララも覗き込む。食料の入った箱だ。
「まだ野菜もあるんですね」
「これは明日の分だね、今回の『嵐舞』は明日で終わる予想だし、長くても明後日だからこのくらいの量で済んでるんだって」
「明日のご飯はなんですか?」
「カレーだね」
「カレー!大好きです!」
そう言いながら別の食料箱も探っていたら林檎を見つけた。
「焼き林檎くらいならできるな、クララさんも食べる?」
「食べます!」
「じゃあ、二つ使おうか」
メルクはアルミホイルを用意し、林檎の芯をくり抜いてアルミホイルに包み、芯の空いた部分にバター、砂糖、シナモンを入れていく。
鉄板の火の弱い部分に置いて火が通るのを待つのだ。
そうしている内に服の乾いたアンジェリカとリンデがやってきた。妖精パンダはアンジェリカが抱えている。アンジェリカの目に涙はもう無い。
「やあ、頼んでしまって悪かったね」
「いえいえ、雑用係の仕事ですから」
メルクはそう言って木製の皿に焼きうどんを盛り、マグカップにキノコのスープを注いだ。クララは焼き林檎が焦げないように見張っている。
マグカップに口をつけたリンデは「おいしいね」とアンジェリカに話しかけ、踊り、風呂に入り、泣いて、眠くて仕方ないアンジェリカの意識を保つ手助けをする。
声をかけられたアンジェリカも「美味しいです……」、と途切れそうな意識を食べる事で保ち、膝の上ではパンダが勝手にアンジェリカの焼きうどんをつまみ食いしていた。
焼き林檎が出る頃にはアンジェリカは完全に舟を漕いでおり、とても食べれそうな状態ではない。
「パンダが代わりに食べるのよ」
「パンダには多いよ」
「私が!私が!」
手を上げてアピールするクララにメルクは苦笑いで「一個食べれる?」、と聞いてみた。
「林檎一個なんて余裕です!」
元気な子だなぁ、と思いながらメルクは林檎を切り分けてそれぞれに渡していく。
クララは熱々の林檎に息を吹きかけて冷ましながら口にする。じゅわり、と林檎の熱い果汁が溢れて砂糖の甘みと混ざっていく。バターとシナモンの香りが鼻を通って、とても上等な焼き菓子のようだ。
「美味しい!」
「うん、そうだね、とても美味しいよ、メルク」
「よくやったのよ、メルク!」
メルク自身もパンダが食べれないと言った分の量を少し食べていて「うまくいきました」、と笑っていた。
「じゃあ、片付けを頼んでいいかな、私はアンジェリカをテントに運ぶから」
「勿論です。リンデさんもそのままテントで休んで下さい」
「ありがとう」
軽々とアンジェリカを抱えて去っていくリンデに「腕力もあるのか……」、とクララとメルクが思う中、キャンプの中で水場に設定した場所へ食器を運んで魔法で湯を出し、皿洗いをし、交代の時間まで二人で色々と話をして過ごした。




