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祭壇に入って直ぐに弾き出されたクララはソフィアに叱られていた。
「クララ、祭壇には精霊士しか上がってはいけないとエルジャイブに聞いていませんでしたか?」
「聞いてました」
「では何故?」
「アンジェリカさんを励まそうと思って……」
「それは素晴らしいことです。感謝します。でもね、一歩間違えれば貴女が命を落としていたのですよ」
ずぶ濡れのクララは数日間エルジャイブの講義を受けていた。その中には「嵐の中の精霊は暴走状態だから、人を傷付ける恐れがある」という事も聞いていたのだ。
風の精霊に絡まれて上空に飛ばされたり、水の精霊に呼吸ができないくらい迫られたり、精霊士か魔法の使い手でなければ対処のしようがない事がある。
「申し訳ありません……」
「……一先ず、キャンプに戻りましょう。アンジェリカは精霊たちの心を掴んだようですし」
花火を纏って踊るアンジェリカに、風も水も花火と競ってはしゃぎ、雷火の精霊も弾けている。
とぼとぼ戻る途中で、ずぶ濡れの髪と服をソフィアに魔法で乾かしてもらったクララはキャンプの入り口でバスタブに入っていたマディに話しかけられた。
「クララ、やっちゃったねぇ」
「はい、やってしまいました……」
「今度から前もって『やる』って言っといてくれりゃいいんだよ。あたしもビビった新人の尻を蹴っ飛ばしたことはたくさんあるからね」
「マディさん、煽らないでくださいな」
ケラケラ笑いながら熱い湯をメルクに要求するマディにソフィアは頭が痛くなる思いだ。
「クララ、お夕飯を頂いてきなさい、私は衣装に着替えたら行きますから」
はい、と返事をしたクララに少しだけ笑いかけてソフィアはテントに入っていった。
「メルク、もっと熱い湯をだしんしゃい。年寄りは中々あったまらないんでよ」
「いやもう熱湯ですよ!?」
そんなやり取りを聞きながらクララは夕飯を囲む一団へと合流した。
「クララ、あとで俺からも説教だが、今はとりあえず食え。アンジェリカにはあれくらいで良かったかもしれん」
前もって危険性を教えていたのに祭壇へ入ったクララにエルジャイブは思う事があったが、側面から見たらアンジェリカへのナイスフォローだったとも言えるので、どの程度叱るかを悩んでいた。そんな時はとりあえず食べるに限る。食べている内に考えがまとまるかもしれない。
サザが適当に盛りつけたプレートを受け取り、クララは焼き飯をスプーンでかきこんだ。
「美味しい!」
「おう、そうかそうか」
どんよりしていた目を輝かせたクララに、サザも笑顔で応えた。
ソーセージを焼いていたアーロン(積荷を何処に運ぶか指示していた雑用係である)にクララは「それもください!」と更に瞳を輝かせ、その場にいた全員から温かい目でみられた。




