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ソフィアがコーヒーを飲みながら、アンジェリカに声をかけた。
「マディさん、最初は長く踊ると仰ってたから、アンジェリカは少し仮眠をとってきなさいな」
「え、大丈夫でしょうか……」
「起き抜けに踊らせるなんて、そんなことはしませんから精霊避けを着けて少しだけ眠りなさい。コーヒーの効果でちょうど良く起きれますから」
「じゃあ、少しだけ休ませてもらいます、失礼します」
そう言ってアンジェリカがテントの中の二段ベッド(アンジェリカは上の段だ)に潜り込み緊張していたのもあり、直ぐに寝付いてから三時間。
「え、マディさんまだ踊ってるんですか?」
マディの後の踊り手はアンジェリカなので踊っていても不思議ではないのだが、テレパシーで「まだまだ踊れる!」と言っているらしかった。
アンジェリカを起しにきたソフィアも少し不安げで、このテントの中ではもう一つの二段ベッドの上の段でスヤスヤと寝ているクララだけが幸せそうだ。
「とりあえず起きて、テントの中でいいから体を動かしておいてくださいね。インスタントでよければオニオンスープを出せると雑用係の方たちが仰ってたから」
「はい、あとで頂きます」
交代でソフィアが二段ベッドの下段に入った。少し休むようだ。
広いテントの中でアンジェリカは体を伸ばす。猫獣人の血を引いているので体は柔らかい。
テントの外に出て、祭壇方面を見るとマディがまだ宙を飛んでクルクルと踊っていた。
精霊の見えるアンジェリカの目には楽しそうにマディと踊る精霊たちも見えていた。
温かい飲み物を貰おうと焚火のあった場所に行くと、焚火は消されて魔法による火、その上に焼き網や鉄板が置かれていた。料理用に焚火からかまどに変えたのだろう。
有翼人の雑用係であるサザが火の番をしていたので何か飲み物はあるか聞いてみる。
「おう、すぐに飲めるのはオニオンスープだな。あとは少し待ってもらえればココアも出せる」
「オニオンスープでお願いします」
マグカップに注いでもらったスープをふぅふぅと冷ましながら一口飲んだ。しょっぱさばかりが際立つ味だが、それでも外は寒いし美味しく感じる。
「なんか食うか?」
「さっき、休む前に食べたから大丈夫です」
「あ、私は貰うよ」
サザの言葉に反応して上げた首を更に上に上げるとリンデがいた。
「ひとまずエルジャイブと交代してきたんだ。サザ、何が食べれる?早く出来るものだと嬉しいな」
「ホットドッグかホットサンドなら早いですよ」
「ならホットサンドがいいな、あとスープもおくれ」
はい、と返事をしてサザは近くに置いてあったホットサンドメーカーを火にかけて食材の入った木箱から食パンの入った袋を取り出す。
食パンの上にチーズとハムを置いたらホットサンドメーカーで挟んでおけばあっという間にできてしまう。
皿に載せてリンデに渡すと、彼女は「同じものもう一つ頼む」、とサザに伝えた。アンジェリカはそんなに食べるのか、と思わずリンデを見てしまった。
「魔力を使うとお腹が空いてね」
言い訳のように言ったリンデはホットサンドにかぶりついた。
黙々と食べる時間の後に、食べ終わったリンデが「エルジャイブが戻ってきたらもっと食べると思うよ」と言ってオニオンスープを飲み干し、精霊士用テントで休むと言って引き上げていった。
アンジェリカが祭壇を見上げれば、マディはまだ踊っていた。




