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テントに戻ってきたアンジェリカを見てソフィアもマディもギョッとし、マディはすぐさま自分の荷物の中から精霊避けの鉛の首飾りを取り出し、アンジェリカにかけてやった。
その途端にアンジェリカはハッとした顔をし、手で顔を覆い隠す。
「……すいません……申し訳ありません……」
涙声で謝るアンジェリカにソフィアもマディも温かい目で励ましの言葉を送る。
「嵐が近いですから、心が揺さぶられることはよくある事ですよ」
「わたしも若い時はよくやったもんだよ」
「でも……でも……」
穴があったら入りたいアンジェリカは今すぐベッドにあるタオルケットに包まりたかったが、それをやるのは恥の上塗りだと耐えていた。
ここに妖精パンダがいたならもっと落ち着けたのに……と、無い物ねだりもしておいた。
パンダたちは「パンダ、嵐が来ると飛んでっちゃうの、小さいから。だから『嵐舞』にはついていかないわ!」と付いてきてくれなかった。
そもそも勇気の妖精なのだ。こんな意気地なしには愛想を尽かしたのかもしれない。
情けなさに精霊の所為ではない涙が出そうになった。
「すみませーん!バスタブどこに置きますか!」
大声を出してテントに入ってきたクララにアンジェリカの涙が引っ込んだ。
その瞬間にマディがアンジェリカの口にキャラメルを放り込む。甘い。
「まだアンジェリカちゃんの出番まで時間があるからね、甘いものでも食べてゆっくりおし」
クララへの対応はソフィアが出たようだ。
「ケーキも食べるかい?」
「……食べたいです」
「じゃあ、お茶も淹れよう。美味しいケーキだからね、美味しいお茶もなけりゃ始まらない」
ちょっとずつ、アンジェリカの心は落ち着いていった。
「バスタブの置き場よね?」
「はい!でもなんでバスタブを外に?」
クララは白い猫脚バスタブを重たい素振りも無く持ってソフィアに言われた場所に置く。
置いた場所は祭壇に近いキャンプの出入り口。
「祭壇で踊ると雨でびしょ濡れになるから、キャンプに戻ったら服のままお湯に浸かるんですよ、その方が手っ取り早いですから」
「豪快ですね!」
「うふふ、豪快ね」
空はどんどんと黒い雲が集ってきている。
嵐は近くまで来ていた。




