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雑用係とエルジャイブは荷解きをしながらキャンプ地にテントを張る。
精霊士たちは一度、『祭壇』予定地に行き、周辺の精霊に「ここで儀式を行いますのでよろしくお願いします」と伝えに行くらしい。
ここでクララはテントを固定する釘の「ペグ」を力強く打ち込みながらエルジャイブに聞きたいことがあった。
「事前の勉強会で『楽団』がくる、って言ってましたけど、今から楽団が来るんですか?」
それならもっと大きいキャンプを作らないと、とクララは訴える。エルジャイブは笑いながら違う違う、と返してきた。
「確かに楽団は来るんだがな、人じゃないんだ。銀霊を喚ぶ」
「え?幽霊が楽器を演奏するんですか!?」
「え?幽霊!?」
今回の『嵐舞』が初めての参加だと言っていた雑用係の男もエルジャイブの言葉に驚いている。
「なんだ、メルクも知らなかったのか?」
クララと同じく今回初参加の雑用係はメルクといった。普段は大食堂で働いている事が多い少年とも青年とも微妙に言い切れない年齢だ。
「普通の楽団を呼んでも替えの人間を何人も入れ替えながらやらないと楽器演奏なんて体力の必要な事をしてもらったら死んじまうからな、魔力さえ送れば体力は無尽蔵の幽霊に演奏してもらったほうがいいんだ。金もかからん」
ペグを次々に地面に打ち込みながらクララは骨しかない幽霊が楽器を奏でる様を想像して寒気がした。
「お供えとかした方がいいんですか?」
メルクが怖々聞くもエルジャイブは首を横に振る。
「ただの幽霊じゃねえ、幽霊の中の品行方正しかなれない『銀霊』だ。悪霊やそこらの生きてる奴より頭はいいし、生前の行いもいいだろうから供えもんなんて無くても気にしねえさ。何より、今回喚ぶのは音楽好きで死んでも楽器を離さなかった奴らばかりだからな、こういう場でも設けてやるのが一番の供えもんだ」
「幽霊にもランクみたいなものがあるんですね」
「この辺は魔法の勉強でもねぇと触れない部分だからな」
エルジャイブとメルクのやり取りを聞いていたらペグを打ち終わってしまったクララも「へー」、と参加していたが、そういう話も事前勉強会の時に教えておいてほしかったなぁ、と思いながらテントの設営に必要なロープを取りに行った。




