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次の日の朝、出勤してソフィアの部屋でアンジェリカが言われた事は「待機」だった。
折角、朝から精霊士が集まっての会議なのに、「まだ見習いだから」という理由で参加を許されなかった。見習いだからこそ参加したいのに。発言権なんて無くていいから参加したかった。
ソフィアが部屋に戻ってきた時の為にお茶を用意しておこう、そうやって時間を潰し、潰しきれない時間を椅子に座って一人待っていること暫く、ソフィアが戻ってきた。
「ソフィア先輩、おかえりなさい」
「ええ、ただいま」
何やら強ばった表情のソフィアを伺っていると、キッとした瞳と視線がぶつかる。
「アンジェリカ、落ち着いて聞いてくださいね」
「はい」
なんだろうか、少しの不安が寄せてくる。
「今度の『嵐舞』、貴女も踊り手に選ばれました」
「えっ」
アンジェリカは半年以上精霊士見習いをやっていたが、殆どはソフィアから座学を受けたり魔法を教わったり、精霊殿内で済むことだけを学んできた。『嵐舞』は嵐がアンゼ=ルーカに近づいた際に町の外に出て行う儀式であり、踊り手は儀式の大事な担い手だ。
「勿論、貴女だけではありません、私とマディさん、控えはエルジャイブです」
アンジェリカが座学で学んだ『嵐舞』は最低三人で挑む、とあった筈だ。控えにちゃんとした精霊士のエルジャイブが居るとはいえ、最低三人の枠を自分が一つ埋めていいのか。
アンジェリカの目が動揺できょろきょろと忙しなく動く。
そんなアンジェリカにソフィアは「落ち着いて」と語りかけた。
「気象室は大きな嵐ではない、と言っています。貴女が成長する為にも私もマディさんも力を尽くします。一緒にやってみませんか」
ソフィアはアンジェリカの手を取って目の輝き柔らかく語りかける。
う、とか、あ、とか言葉が出せなくなったアンジェリカはぎゅっと目を閉じて深い息を一つ。
「やって……みます」
決意を言葉にしてから寒気が止まらなくなるが、それでも両足で立っているし、涙が目に溜まってきたが、まだ泣いてはいない。アンジェリカは精霊士として一歩を踏み出した。
アンジェリカが用意していたティーポットにお湯を注ぎながら、ソフィアはそういえば、と切り出す。
「パンダが会議に乗り込んできて、『連れて行く雑用係にクララを入れろ』と主張して帰っていきました」
「なんでですか!?」
『嵐舞』について行く雑用係は力仕事が多いので男が中心である。妖精パンダは何を考えているのか、アンジェリカにはさっぱりわからなかった。




