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オーキッド衣料品店まで歩いて来たクララは店の大きさに驚いた。地図を見ながら歩いていたら道案内を申し出てくれた妖精パンダがクララの肩に座って「ふふん」と何故か自慢げだった。
「アンジェリカのおうちは何代も服のお店をやってるのよ、むかしは布のお店だったわ」
「大きいお店だね」
「一族みんなでちからをあわせてるのよ。努力は好きよ」
「勇気の妖精なのに?」
「がんばってるやつもがんばらないことを選ぶやつもパンダは好きよ、どっちも勇気だもの」
「ふーん」
店に入ってみると当たり前のことだが服が大量にあった。ハンガーに掛けられてラックに並べられた色とりどり、種類も様々な服たちにクララは出迎えられる。
カラフルだ、糸から染められて布になり服になったものがここには沢山ある。クララのワードローブと違って生き生きとしていた。
でもなんだかサイズが大きい服ばかりだな、と思っているとパンダが店の真ん中にある階段を指した。
「おんなのこのふくは二階なのよ」
「そうなんだ。行こう」
階段を上がってみると更にカラフルで元気の出る服が沢山並んでいた。デザインも可愛らしい。奥には下着も置いてある。
そうだ、下着だ。これはチェックしておかなければ。先日、同寮の女たちに下着は何処で買ってるかまで聞くのを忘れていた。
下着売り場に近づくと、パンダが肩から降りた。
「パンダ、階段の手すりでおどってるわ。またあとでね」
下着選びだと察して遠慮してくれたのかもしれない。
さて下着売り場だ。
シンプルなものは安くて、可愛いレースが付いているものは少し値が張る。ならシンプルなものを予備に買っておこうか。下着売り場に置いてあった籠に二枚シンプルデザインなものを入れて服売り場の方に戻る。
パンダが手招きしているのでそちらに行くと、ワゴンの中にリボンが沢山並んでいた。髪に着けてもいいし、ピンで服に留めてもいいアクセサリだ。
「クララ、まだおこずかい少ないでしょ?こういうのを買ってみるのもいいものなのよ。『差し色』っていうのよ」
「うん!そうだね!」
ワゴンの中に色別に並べられた中から綺麗だと思った青いリボンを取る。近くの鏡で髪に近づけて確認をした。
「いいじゃないの。クララの髪の色に合うわね」
「うん、これ買ってくる!」
今日はもう古着を買っている。オーキッド衣料品店には本当に様子見に来ただけだったのだが、細々したアクセサリや下着が売ってるのは大発見だった。二階の会計に籠を持って行って支払いを済ませる。
パンダも回収して店を出た。
「今日はたのしかったかしら?」
「うん!また一か月頑張れる!」
「それはよかったのよ」
パンダは気付いたら三匹集まってクララを先導していた。外が暗くなり始めていたからだ。
光の精霊が入って灯りを出す街灯も明るいが、パンダたちの耳も光って明るい。妖精なのだから本物のパンダと違って耳くらい光るだろう。
谷の都では「帰りはパンダと帰っておいで」と子供の親がよく言うことをクララは知らない。




