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雑用係が昼休みを迎える時間、勤務時間が自由な精霊士も昼食を取っていた。何故なら腹が減ったからである。
精霊殿内のソフィアの部屋、あまり大きくもないテーブルを囲んでソフィア、リンデ、エルジャイブ、アンジェリカは座っていた。
女性陣は心の中で「エルジャイブが居なければもう少しスペースあるんだけどな」と思っていたが口には出さない。
テーブルの上にはリンデとエルジャイブが町に出て買ってきたサンドイッチやカットフルーツが置いてある。
「今回の出張でクララを見つけた時は『こいつだ!』と思ったんだけどなぁ、谷の都みたいな精霊だらけの場所に来ても目は開かなかったか」
「素質があっても精霊が見えるかどうか、声が聞こえるかどうかはわからないからね」
「でも竜には好かれるタイプでしたよ、無口なダイアの声を聞いたみたいです」
おや、とエルジャイブとリンデはソフィアの言葉に少し驚く。
「私はその場には居ませんでしたが、ヴァルキリヤなら見ていたかもしれません」
でも、とアンジェリカが言葉を継ぐ。
「クララは空を飛ぶの嫌いみたいだから、竜騎手になるのも無理ですよ」
「あー、惜しいなぁ!」
エルジャイブの出す声の大きさにアンジェリカは少しびくついた。
「精霊士も竜騎手も成り手が少ない、両方になれそうでなれないなんて勿体ないじゃねえか」
皮も種も丁寧に取られたオレンジを一欠片口に放りながらリンデは考える。
精霊殿四階で迷っていたクララを助けたのは精霊たちが「クララが困ってる!」「助けてあげて!」と近くにいたリンデに訴えてきたからだ。会った瞬間に分かったが、クララは精霊・妖精にとてつもなく好かれる体質である。それだけの愛情を受けて精霊士として目覚めないのは何故なのだろうか。
「とりあえず保留」
「え?」
「今は食事したいしね。このバケットサンドもらっていい?」
酢漬けとレバーパテの入ったバケットサンドを取ってかぶりつく。ソフィアから「行儀悪いですよ」と言われたが、リンデは家での食事にはテーブルマナーが必須の家で育った。昼食くらいだらしなく食べたいと思ったのだ。見れば、エルジャイブはカツサンドをあっという間に平らげてる。
「もう、二人とも……アンジェリカの前なんですからもう少し見栄を張ってください……」
そう言われてもな、とエルジャイブはミックスサンドの箱をアンジェリカに渡す。アンジェリカは少しソフィアを伺った後で箱を開けてハムサンドに手をつける。
ソフィアはため息を吐くと、紅茶に口をつけてからテーブルに残っていたエビとアボカドのサンドイッチを手元に寄せた。
何故なら腹が減ったからである。




