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クララとパンダとアンジェリカ  作者: 間取良可
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 あ、とクララとエルジャイブの口が同じ形に開いた。

「やあ、エルジャイブ、きみも戻ってきてたんだね」

 リンデがエルジャイブに声をかけるも、エルジャイブはどたどたとクララに近付いて、クララを持ち上げた。

「よう!クララ!久しぶりだな!元気か!」

「きゃー!きゃー!きゃー!」

 視線が高い!そんな簡単に人を持ち上げないで!ぐるぐる回らないで!それらが混ざった悲鳴はエルジャイブに届かないのか降ろしてもらえない。洗濯籠からも手を離してしまってタオルが廊下に落ちてしまった。

 クララが心の底から困っていると急に回転が止まって下に落ちる。落ちるのは嫌だ!と思った瞬間に柔らかく抱き留められた。

「エルジャイブ、うら若き乙女にする行動ではないね」

 クララはリンデの腕の中にいた。彼女は片手でクララを抱えてもう片手でエルジャイブの腹に拳を極めている。笑顔で。

「すまないね、クララ、同僚が失礼をした。降りれるかい」

「は、はい……」

 クララをそっと廊下に降ろすとリンデはエルジャイブにタオルを拾うように指示を出した。

「ひっでぇ……俺は久々の再会を喜んでただけなのに……」

「喜び方が問題だね」

 きっぱり言い切られたエルジャイブは益々落ち込む。あんまりな落ち込み方にクララはエルジャイブを少しだけ、ほんの少しだけ擁護しておこうと思った。

「あの、エルジャイブさんは、私にここの仕事を紹介してくれた方で、親しくはないですけど初対面でもないので、ギリギリセーフのスキンシップかと……」

 ギリギリなのかよ……、とエルジャイブは涙目になる。

「うーん、クララ、そういうところからつけ上がる人もいるからね、用心はしっかりしようね」

「はい!」

「良い返事だ」

 クララはリンデに褒められたことを素直に喜んでからエルジャイブを見る。何度見てもローブを着ているので精霊士だ。この人たちも火の交信室で炎に向かって話しかけたりするのだろうか。

「お二人も交信で火に向かって話しかけたりしてるんですか?」

 ストレートに聞いてみる。

「あれはね、一方的に話をしてるようで会話してるんだよ、私は暑いの苦手だから人手不足の時しか火の交信室には行かないけど」

「俺はテレパシー派だから話しかけるのはしないな」

 苦手だったら行かなくていいのか、精霊士とは自由な仕事のようだ。

「それにしてもリンデともクララとも久しぶりだな、お前らなにしてんの?」

「きみが地方の精霊殿へ出張になった後に討伐軍に出向して昨日帰ってきた。今日は精霊士長に報告」

「私は迷ったところをリンデさんに助けてもらってました」

 散らばった最後のタオルをエルジャイブがクララの洗濯籠に入れるとリンデが「行こう」とまた歩き出す。何故かエルジャイブもついてきた。

「討伐かー、どうだった、貪獣は」

「小型のものばかりだったよ、暫くは平和そうだ」

「え、谷の都には貪獣が出るんですか?」

 それは怖すぎるのでは?とクララが怯えた顔をすると、違う違うとリンデが首を振った。

「アンゼ=ルーカの周辺は強力な人域結界があるから貪獣は入ってこれないよ。それでも十年単位で大型の貪獣が生まれて獣域を拡大しようとするからね、調査と間引き目的で軍があちこちに遠征するんだ」

「そうなんですか……」

 人域と獣域についてはメイの集落から近い町の学校で学んだ。人が住んでるだけで発生する縄張り、獣が入って来にくくなる結界が人域。貪獣と呼ばれる神話の時代に生まれた、飢餓が形になってなんでも食べてしまう存在が発生するのが獣域、原初の世界。

 正直、クララには「原初の世界」という言葉の意味がわからなかった。人より先に貪獣がいたら人は繁栄しなかったんじゃ?、と思ったのだ。

 貪獣は怖い、世界の共通認識だ。

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