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固まったクララを前に、ヴァルキリヤはミシアに作業に戻るように言い、妖精パンダを呼ぶ。
「俺にはソフィアの考えはわからないよ、でも、パンダたちはソフィアのこともアンジェリカのことも詳しいと思うから、まずは聞いてみよう」
パンダを一匹持ち上げてクララに渡す。パンダはクララに抱っこされる形でクララの顔を見上げた。
「そうね、事情通のパンダはわかるわ。いろいろしってるわ。まあ、すわってすわって」
芝生の上にクララは座り、パンダは「まずは、」と話し始める。
「ソフィアはクララにいじわるしたんじゃないのよ。アンジェリカに気をつかったの」
「アンジェリカさんに?」
「そうよ、アンジェリカはがんばりやだけど、ようりょうは悪いわ。それは個性だからしかたないの。今日は、うまく体調管理できなかったわね」
「具合が悪くなるなんて、誰にでもあるよ」
「アンジェリカは自分のなかにためこむタイプだから、今ごろ自分にガッカリしてるの」
パンダはクララの腕の中からぴょん!と飛び出す。
「おちこんだ自分を見られたくないのはみんな同じよ。アンジェリカは今、パパとママとソフィアにしか見せたくない顔をしてるのよ」
そうか、落ち込んでるのか、とクララは理解し始めた。パンダは複雑で簡単なことを教えてくれる。
「だから、今はクララは会いにいっちゃダメよ。アンジェリカがふっかつしたら会うの。それまでは、アンジェリカの分までウロコをひたすらひろうのよ」
パンダは今やるべきことまで指示し始めた。
うん、言われてみれば、自分とアンジェリカはまだ親しくない。弱っている時の姿は見せたくないだろう。クララは立ち上がる。
「籠いっぱいに!石拾いします!」
「そうよ!黒い石よ!宝石のウロコよ!」
その後、一度集めたものを集め直すというモチベーションの上がらない作業でクララは素晴らしい働きを見せた。
ユグ家の使用人に案内してもらい、アンジェリカの休んでいる部屋にクララとミシアは来ていた。ミシアはアンジェリカを再度診る為である。
いざ!と客間のドアノブに手をかけようとするクララをミシアが止める。
「ま、待ってください……あの、ノックが先です……」
あ、そうか、とクララはかなり気が急いていたことを恥じる。
「すみません……」
「いえ、お友達が心配なんですよね……」
まだ友達じゃないんです、という言葉を飲み込んだクララは、ドアノッカーを三回鳴らして反応を待つ。分厚いドアの奥から声が聞こえた気がした。
「はい、あら、」
ソフィアがドアから顔を出すとクララとミシアの顔を見て「鱗剥がし終わってしまいましたか?」と聞いてきた。
「はい!最後はパンダたちの大活躍で終わりました!」
「それで……アンジェリカさんをもう一度診にきたんですが……大丈夫でしょうか……」
「うーん、ミシアさんは入ってもらって、クララはもう少しだけ待てるかしら?」
その言葉に、落ち込んだアンジェリカが脳裏に浮かんだクララは「はい!」と返事をする。自分だって失敗の後はあまり人に会いたくないものだ。アンジェリカの体調不良は失敗じゃないけど、パンダ曰く「アンジェリカの中では自己責任」なので仕方がない。
部屋に入っていくミシアの背中を見送って、廊下で待つことにした。




