14
出てきた昼食は使用人が運んできた以外はいたって普通に見えた。
スープボウルではなくマグカップに入ったスープ、小さなボウルにマッシュポテト、厚めのベーコン、スクランブルエッグ、サラダ。
なんとなく拍子抜けしたクララに、最後にホールに入ってきたヴァルキリヤの声が届く。
「追加でハンバーグ食べたい人ー?」
はいっ!!!!、と野太い声が複数上がる。
え?なに?ハンバーグ?
「食べたいです!」
クララも手を挙げる。アンジェリカの呆れた目もソフィアからの母のような視線にも気づかずに。
ホールにハンバーグの入った什器を持った使用人が入ってきて希望者のテーブルに置いていく。
「じゃあ次、アクアパッツァは一テーブル一皿ね」
ヴァルキリヤがそう言うと使用人がワゴンを押してホールに入ってくる。クララたちの席にもアクアパッツァが置かれた。
「お魚……海のお魚ですか?」
「川じゃないわね、これは」
「ユグ家は流通方面に顔が効くのよね」
谷の都では魚は基本的に川魚だ。近くに海はない。しかし竜を使った空輸で毎日海魚も入ってくる。
「あとはパン食べ放題。各テーブルを回るから、好きなパン食べてー、はい、じゃあ食べる前のお祈りー!」
言われるままにクララは食前の祈りをして食事と一緒に置いていかれたカトラリーを取った。
ハンバーグを一口サイズにして口に放り込む。
熱々の表面にはデミグラスソースがついていて、断面からは肉汁が溢れている。口の中で噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。なんだこれは魔法のハンバーグなのか。
「パンはいかがですか?」
ユグ家の使用人がトングとパンの入った籠を持ってテーブルに来た。籠の中には数種類のパンが入っている。
「私は、そのバゲットとクロワッサンをください!」
クララはカットされたバゲットを二つと焼き色の美しいクロワッサンを一つ新しい皿に載せてもらい、アンジェリカから「そんなに食べるの?」という視線ももらっていた。
「私はクロワッサン」
「その緑のパンはなんでしょうか?」
「こちらはバジルのパンとなっております」
「では、それとクロワッサンを」
それぞれ新しい皿の上にパンを載せると給仕の使用人は別のテーブルに行く。
クララはバゲットをちぎりデミグラスソースにつけて食べる。やはり美味い。
ここでマッシュポテトを食べてみると、クララは止まった。
口の中に入れた途端に滑らかに溶けるお芋……クリーミィで、ほんの少しの塩味があって、飲み込みたくないけど飲み込んでしまう……おいしい。
「はっ!?」
一瞬心がどこかに飛ぶほどに美味いこのマッシュポテトは一体!?
「美味しいわよね、マッシュポテト」
ソフィアは微笑んでいる。
「私も好きなの、こちらのお宅のお料理」
「マ、マッシュポテトって、もっともそもそしたものじゃないんですか?」
「何度も裏漉しして滑らかにしてるのね、生クリームも入ってると思いますよ。使ってる素材がいいのは勿論だと思いますけど」
「ほぁ〜」
間抜けな声で感心するクララの横でマッシュポテトを食べているアンジェリカも声には出さないがクララと似たような気持ちだった。
追記。
アクアパッツァもクロワッサンも美味しかったです。(クララ)




