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その後もクララとアンジェリカは時折妖精パンダにアドバイスをもらいながら鱗を剥がしては集積所に積んでいった。
アンジェリカが疲れた様子を見せ始めた時にヴァルキリヤが大声を張り上げる。
「お昼休憩ー!屋敷に行けば色々用意してるから食べてー!」
その言葉にクララは目を輝かせてアンジェリカの手を引く。
「行きましょうアンジェリカさん!ご飯ですよ!」
アンジェリカは突然引かれた手を見つめ、家族と妖精パンダ以外では初めて手を繋いでいる気がしてきて顔を赤くしていた。アンジェリカより背の高いクララが小走りに歩くものだから少し早歩きになりながら。
屋敷には庭に面したガラス戸から入っていく。
ガラス戸はよく見ると分厚かった。それをじっと見ているのに気づいたのか近くにいた妖精パンダが解説をしてくれる。
「それ、ガラスに似てるけど、錬金術でつくったガラスっぽいものなのよ。竜のはばたきや咆哮にも割れないようになってるのよ」
お金持ちのお宅は凄いなぁ、とクララはアンジェリカの手を繋いだままガラス戸を潜ろうとするとアンジェリカがか細い声で「子供じゃないんだから、手は……手は……」と呟いた。
「あ!すみませんアンジェリカさん!私、お昼ご飯だと思うと気が急いて……つい手を繋いじゃいました!」
ぱっと離された手をアンジェリカはもう片方の手で撫でる。クララにはアンジェリカが不快なのかそうでないのかわからなかったが、パンダは照れてるのだと理解できた。
「……私たちだけじゃないのよ、ソフィア先輩を待ちましょう……」
不貞腐れたような照れ顔のアンジェリカにそう言われてガラス戸近くの邪魔にならない場所でソフィアを待つ間、妙な沈黙が続いたのだった。
ソフィアが屋敷に来ると、クララとアンジェリカの間で踊って間を持たせていたパンダもどこかにいってしまった。クララは妙に不貞腐れた顔をしているアンジェリカと目を合わせられなかったのでパンダには心の底から感謝だ。
「どうかしたの?アンジェリカ?お腹すいた?」
「そういうわけではありません!」
ソフィアが来ればアンジェリカはいつもの顔に戻る。
「そう、でもお昼ですからね、せっかくご用意してもらったのですから、みんなで頂きましょう」
にっこりと笑ってそう言うソフィアはユグ家の使用人に案内を頼む。
「こういうお家は勝手に歩くのも失礼になるからね」
いつもの顔のアンジェリカにそう教えてもらい、クララは「はい!」と元気よく返した。
「本日は当家のホールにお食事を用意させていただきました。どうぞごゆっくりお召し上がりください」
使用人はそう言って一つの部屋に三枚も両開きの扉が付いた大部屋へクララたちを案内した。
入ってみればやはり広い。精霊殿の祈りの場ほどではないが、クララは広く高い天井の部屋をぐるりと見渡した。
使用人に白いテーブルクロスのかけられた丸テーブルに案内されて三人は席に着く。
「どうしよう……私、テーブルマナーとかわかりません……」
「最低限、ナイフとフォーク使えばいいんじゃない?」
テーブルの上にはカトラリーはセットされていない。今日は色々な立場の者が集まると分かっているのでマナーは求められないだろう、とアンジェリカは考えていた。
「今日はヴァルキリヤの友人を中心に集められています。彼の人脈は旧貴族から探索者まで様々ですから、マナーとかそういう事にこだわる人ではないですよ」
ちなみに私の家も普通の中流家庭ですよ、とソフィアは続けた。そう聞くまでクララはソフィアはきっといいとこのお嬢様だと思っていたので驚き、その驚きは全て顔に出ていた。アンジェリカは強い視線で「先輩に何か文句あるのか」と訴えている。




