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クララとパンダとアンジェリカ  作者: 間取良可
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 ヒッポグリフ車は谷の都の空を飛んでいた。

 車内ではクララが爪が白くなるくらい強い力でベルトを掴んでいる。

「クララ、大丈夫?」

「大丈夫ではないですが、我慢です」

 普段から空を単身飛んでいる谷の都産まれのソフィアにも、上下移動が苦手というクララの気持ちはわからない。クララは産まれた時から地に足をつけて大地を駆け回っていたのだ。空を飛んだのは谷の都に来た時の宝石竜が初めてだった。

「こ、このヒッポグリフ車はどこに向かっているのでしょう?もう着きます?まだ着きません?」

 車酔いではなく怖がっているだけなので平気だとは思うが、流石に様子が哀れなのでアンジェリカは答えてやった。

「西側の町の外れにあるユグ家に行くわ。町の外れだからね、もう少しかかるわ」

 その答えを聞いてクララは窓の外を見た。別に外を見るのは平気なのだ。ただヒッポグリフ車の浮いてる感覚が体に伝わって怖いのだ。


 ユグ家にヒッポグリフ車が到着した時、クララは既に疲労感が満載な顔をしていたが、車から降りてその場でジャンプを三回したら何故か元気いっぱいに戻った。それを見てアンジェリカは「なんだこいつ」と思わないでも無かったが黙っておくことにした。今日誘ったのは自分なのだ、友達になれるかもしれないのだ、と。

 ヒッポグリフ車の御者には「迎えは午後三時くらいに」とソフィアが言っているのを聞いてクララは「また貸切か?」と思ったので素直に聞いてみた。

「違いますよ、今日は時間と場所を指定して来てもらってるだけです。精算はその都度してますよ」

「あ!私もお金払います!」

「今日は私たちの用事に付き合ってもらってるのでいりません。これから頑張って『鱗剥がし』してください」

 そう言うとソフィアはユグ家の呼び鈴を押した。

 ユグ家は大邸宅であったのだ。


 ユグ家から出てきた使用人(「お金持ちの家だ!」とクララは叫びそうになった)は三人をそのまま庭の方に案内した。

「……お庭が……広い!!」

「大声やめて」

 ユグ家の庭は広大で、ちょっとした黒い山のようなものが中央に鎮座し、その山に人々がわらわらと集まっている。なんだこの庭、とクララは思い、じっと山を見つめると、段々輪郭がハッキリしてきた。黒い山は少しキラキラと輝いている。

「あれは!竜です!黒い竜!」

「大声やめて。人の家よ」

 凄い凄い!大邸宅らしき方のお庭に竜が!とクララははしゃいでしまう。

「そうですね、ユグ家は竜騎手を輩出している家で、今は竜が二頭います。今日は一頭はお出かけしているみたいですね」

「あの竜、アナタが乗ってきた竜よ、宝石竜」

「え!?」

 空を飛んでいる時は岩みたいにゴツゴツした竜だな、と思っていて宝石竜の宝石たる所以は全く分からなかった。そういえば降りる時に石を一個貰っている。あの石は宝石なのか。

 少しずつ宝石竜に近づいていくと、宝石竜の顔の辺りにいた人がこちらに気づいた。

 あの人は、とクララは気づく。どう見ても自分と同年代の少女に見える成人男性の竜騎手だ!

 今日もショートパンツにニーハイソックスが似合っている。

「ハーイ!ソフィアにアンジェリカ!それとハーネスぐるぐるちゃん!ようこそ我が家へ!」

 変な名前を付けられている!

 手を挙げて走ってくる竜騎手の男性に「可愛い見た目の人だなぁ」と思っていると妖精パンダたちもわらわらとクララたちの元に集まってきた。

「ソフィア、アンジェリカ、クララ、おはようなのよ」

「三人が来ることはパンダたちが伝えておいたのよ」

「仕事のできるパンダなのよ」

「そんなパンダたちから『クララが来るのよ』って言われて誰か分からなかった俺です。そうかー、ハーネスぐるぐるちゃんがクララだったのかー」

 収集がつかない感じに好き勝手喋るパンダと竜騎手にソフィアが間に入ってくれる。

「クララ、こちらがユグ家のヴァルキリヤ、宝石竜の竜騎手よ」

「あ、はい!クララ・メイです!精霊殿の雑用係です!」

「よろしくね、今日は力仕事だけど、女の子には楽な仕事振るから大丈夫大丈夫」

 え?今日って働くの?アンジェリカを見てもこちらを見る気もなさそうで、仕方なくそのまま「わかってますよ」という風を装った。

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