表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/89

26歳 退会宣言

「あ、私、将棋辞めるんで」


その一言に協会関係者は絶望の渦に叩き込まれた



なにせ三矢香の人気だけに支えられているのだ


今、引退されたらスポンサーである新聞社も各種企業も一斉に手を引くだろう




小5で研修会入会


19歳ギリギリで奨励会1級編入


21歳ギリギリで初段に昇段


24歳でプロ直前の3段昇段と同時に結婚


そして26歳の奨励会退会年齢制限ギリギリで惜しくも4プロを逃した悲劇のヒロイン


その崖っぷちな人生は将棋に興味がない人間をもハラハラドキドキさせたという曰くつき





おまけに4段を逃したのが妊娠による欠席というのだ


そんな美味しいネタをマスコミが逃すはずがない




さらに言えば妊娠により欠席する前までは全勝しており、初の女性棋士誕生か?!とまで言われていたのだ


居るだけで将棋の人気があがるというのも当然であった




「なんとか続行を!」


という声に対して香は言った


「夫には高校の時から10年近く支えられたので、そろそろ倍返ししようかなと思います」




・・・完全に『倍返し』の使い方を間違えているよ、関係者一同の心の叫びだった





さらに説得を続ける面々に対して


「実際、夫孝行のため妊活しないと?」


とシビアな現実を突き付けた


・・・もうすでに妊娠しているが生まれるまでが妊活なので使い方は間違っていないはずである(たぶん)





香はもう26歳なのだ


子供が一人や二人いてもおかしくない年頃


言っていることは誰よりも正しかった





だからといってただでさえマイナーな将棋


居るだけに人気が爆上がりする香を手放すのはさすがに惜しいといえる


まさにワンアンドオンリー


なんとか思い留まるようにするために関係者は夫に縋った





「アンタらは『将棋界のため』と言いながら妻に続行を強要しているが、あんたらは妻に何をしてくれるつもりなんだ?」


夫はロジックモンスターだった





「ああ今まで何してきたんだ?でもいいぞ」


さらに追い打ちをかけてきた





なにせ高校時代から正論を吐きまくって数多の口論に勝利してきた問題児


さらに言ったことを自分で実行してみせた異端児


大人になっても健在であった



・・・人生経験と金がある分、タチが悪くなった、とは高校時代からの友人の談である




この嫁にしてこの夫あり


まさに夫唱婦随と言って良かった


いやこの場合は婦唱夫随の方が正しい?













今日も将棋界は大騒ぎだった

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ