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25歳 美羽の敗北
「ありません」
美羽の投了の言葉に奨励会にどよめきが起こった
常勝の天才が負けたのだ
まあ常勝とはいっても奨励会の格上にはたまに負けていたので正確ではない
だが負けた方としてはラスボス感満載なので間違いではない
タダの負け惜しみとも言う
そんなラスボスに勝ったのが三矢香♀
天才に勝つのは格上の男だけだろうと思われたからである
それがまさかの女性
二重の意味でどよめきが走った
美羽は超攻撃型の棋風
対して三矢は穴熊で護りを固めた防御型を選択した
当初、美羽の攻撃で穴熊の丸焼きができると思われていた
ところが三矢はまさかの大脱出
わずかな隙をついて逃げ出した
それも相手陣地に
いわゆる入玉というやつである
将棋の駒と言うのは攻撃が前方に偏っている
それゆえ相手の玉が自陣に入ると途端に攻撃力が低下する
防御を最低限にする超攻撃型の盲点を突いたと言ってよい
棋譜を見た奨励会員達は
「その手があったか!」
と感嘆するのはこの後の話
三矢が『入玉の女王』と呼ばれるのもこの後の話




