32歳 蜂屋女流棋士将棋教室
<パシッ>
「そこは銀ではなく金よ?だからこうなってよ?」
詰みまでの一直線が示され対戦相手はガックリ頭を落とした
<パシッ>
「そうよ、悪手を指しても我慢が大事よ?傷を広げないようにするのは良いわね」
そう言いつつ容赦なく攻める手を指す
褒めておいて落とすという高等テクニックにやられた方が怒るよりも関心していた
<パシッ>
「賢しいぞ少年!」
<パシッ>
「まだまだっ!」
<パシッ>
「そこっ!」
指導対局にも関わらず会話が弾んでいた
おまけに一手が数秒という早指し
もはや将棋ではなかった
事の起こりは蜂屋女流棋士、いやクイーンが弟子を採らないと宣言したことだった
女流棋士の最高峰のクイーン
男性棋士に勝ってタイトル獲得
将棋に興味がない人間でも名前をしっているほどの存在
弟子入り志願者は全国で1000人を超えた
ところが本人は
「(弟子が)一人前になるまで将棋界に居られないと思う」
と弟子を採るつもりはなかった
弟子を採る採らないは棋士の自由
採らないのならそれで仕方がないといえる
だがイジメ問題でタダでさえじり貧になっている将棋界
関係者は人気を独り勝ちの女流棋士に頼る以外に道はなかった
と言う訳で何度かの会談が設けられた
その末、苦肉の策として日本各地で将棋教室を開くことになった
某女流棋士は最後の御奉公
関係者は最適手で最大限の効果を得ようとする
そういうことだった
将棋教室は希望者多数のため抽選になった
当たった人間だけが指導対局を受けられる
そういうこと
だが抽選にしても人数が多いため指導対局(感想戦を含む)に掛けられる時間は一人当たり30分
当然対局→感想戦などという悠長なことは言っていられない
普通なら感想戦までいけない
あるいは感想戦が始まった途端時間切れ
なんどか将棋教室を開催した経験から、対局と感想戦を同時にやるという前代未聞の展開になった
とはいえそれでも普通に指していれば30分の時間内におさまりきらない
臨時の弟子からの不満は大きかった
そしていつしか一手数秒の早指しになっていた
まあ毎回の将棋教室の内容を動画サイトで公開していたのだ
ただでさえ研究が好きな将棋愛好者達が攻略法を探さないはずはなかった
その結果、30分の時間内に最大4局の指導対局(感想戦を含む)というとんでもない展開になった
・・・公開された動画を見た女流棋士の高校時代からの同級生のコメント
「話をしながら戦うなんてどこのアニメだよ!」




