【揺花草子。】[#3295] 同源。
Bさん「今日は立春です。」
Aさん「あぁ、そうか。昨日が節分だったんだったっけ。」
Cさん「そうね。
節分が2月2日になるのはなんでも124年ぶりだからしいわよ。
124年前と言えば1897年よ。
時はまさに世紀末って感じだったわけね。」
Aさん「なんでそんな淀んだ街角で出会う感じなんです?
それ100年違くないですか?」
Bさん「ともかく今日は立春。つまり節分の次の日。
それすなわち鬼を駆逐した時間軸と言う事になります。」
Aさん「いや駆逐はしていないのでは?
単に遠ざけただけでは?」
Cさん「あらその解釈はなるほど慧眼だわ。
『鬼は外』の字義に沿って考えれば確かに我々は
鬼を──つまり魔を滅したわけではなく追い払ったに過ぎない。
鬼たちは捲土重来を期して戦略的撤退をしただけと言えば
確かにその通りだと思うわ。」
Aさん「戦略的撤退だったんですかねえ。」
Bさん「それは戦線次第じゃない?
どこかの戦線では人間たちの抵抗により総崩れになって
逃げ去るように撤退したのかも知れないし、
あるところでは防衛側に一定の打撃を与えて
次回の攻撃のための楔を打つと言う最低限の戦果を手土産に
余裕を持っての撤退線となったかも知れない。
力技で突撃していたずらに損耗した上に撤退もままならず全滅、
って言うのが最悪のパターンだからね。」
Aさん「なんでそんな戦略論を。」
Bさん「思うに、人間たちと鬼たちは毎年こうして
1年にいっぺん激しい衝突を繰り返して来ているわけだけれども、
良い加減講和も考えた方が良いんじゃないかな。」
Aさん「いや・・・えっ? 鬼たちと?」
Cさん「そうよ。
鬼たちは毎年この時期に決まって人間の里に襲撃をかけてくるけれども、
彼らを滅ぼす事は今なおできていない。
そしておそらく、この先もきっとね。
となればもう共存こそが取るべき道なのではないかしら。」
Aさん「えぇー・・・。いやー・・・。」
Bさん「人間は鬼たちを受け入れ、鬼たちは人間を受け入れる。
そうすれば毎年節分の日に各地で繰り広げられる血の惨劇を
食い止める事ができるのではないかな。
お互いいがみ合う事をやめ認め合い慈しみ合い、
新たな時代を切り拓いていけば良いんじゃないだろうか。」
Aさん「いやー・・・うーん・・・。」
Bさん「だって鬼たちはもともと
人間の心の闇が生み出した
悲しき魔物なのだから・・・。」
Aさん「なにその設定!!???」
人の心に巣食うもの。




