表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【揺花草子。】(日刊版:2021年)  作者: 篠木雪平
2021年02月
34/364

【揺花草子。】[#3295] 同源。

Bさん「今日は立春です。」

Aさん「あぁ、そうか。昨日が節分だったんだったっけ。」

Cさん「そうね。

    節分が2月2日になるのはなんでも124年ぶりだからしいわよ。

    124年前と言えば1897年よ。

    時はまさに世紀末って感じだったわけね。」

Aさん「なんでそんな淀んだ街角で出会う感じなんです?

    それ100年違くないですか?」

Bさん「ともかく今日は立春。つまり節分の次の日。

    それすなわち鬼を駆逐した時間軸と言う事になります。」

Aさん「いや駆逐はしていないのでは?

    単に遠ざけただけでは?」

Cさん「あらその解釈はなるほど慧眼だわ。

    『鬼は外』の字義に沿って考えれば確かに我々は

    鬼を──つまり魔を滅したわけではなく追い払ったに過ぎない。

    鬼たちは捲土重来を期して戦略的撤退をしただけと言えば

    確かにその通りだと思うわ。」

Aさん「戦略的撤退だったんですかねえ。」

Bさん「それは戦線次第じゃない?

    どこかの戦線では人間たちの抵抗により総崩れになって

    逃げ去るように撤退したのかも知れないし、

    あるところでは防衛側に一定の打撃を与えて

    次回の攻撃のための楔を打つと言う最低限の戦果を手土産に

    余裕を持っての撤退線となったかも知れない。

    力技で突撃していたずらに損耗した上に撤退もままならず全滅、

    って言うのが最悪のパターンだからね。」

Aさん「なんでそんな戦略論を。」

Bさん「思うに、人間たちと鬼たちは毎年こうして

    1年にいっぺん激しい衝突を繰り返して来ているわけだけれども、

    良い加減講和も考えた方が良いんじゃないかな。」

Aさん「いや・・・えっ? 鬼たちと?」

Cさん「そうよ。

    鬼たちは毎年この時期に決まって人間の里に襲撃をかけてくるけれども、

    彼らを滅ぼす事は今なおできていない。

    そしておそらく、この先もきっとね。

    となればもう共存こそが取るべき道なのではないかしら。」

Aさん「えぇー・・・。いやー・・・。」

Bさん「人間は鬼たちを受け入れ、鬼たちは人間を受け入れる。

    そうすれば毎年節分の日に各地で繰り広げられる血の惨劇を

    食い止める事ができるのではないかな。

    お互いいがみ合う事をやめ認め合い慈しみ合い、

    新たな時代を切り拓いていけば良いんじゃないだろうか。」

Aさん「いやー・・・うーん・・・。」


Bさん「だって鬼たちはもともと

    人間の心の闇が生み出した

    悲しき魔物なのだから・・・。」

Aさん「なにその設定!!???」


 人の心に巣食うもの。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ