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【揺花草子。】(日刊版:2021年)  作者: 篠木雪平
2021年12月
339/364

【揺花草子。】[#3601] きぼう。

Bさん「パイロットになりたくて。」

Aさん「・・・。」

Cさん「ちょっと阿部さん。

    大人への扉を開き始めた少女が将来を見据えた一歩を

    勇気を出して今まさに踏み出そうとするその瞬間を

    そんな嫌そうな顔をしながらスルーするなんて

    大人の風上にも置けないわね。」

Aさん「いやそう言うやつじゃないでしょ絶対?」

Bさん「これだから大人は信じられないんだ。」

Aさん「ここぞとばかりに思春期振りかざすんじゃないよ!」

Bさん「あのですね、ご存知 JAXA。」

Aさん「んん?」

Cさん「正確には国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構ね。」

Aさん「長い・・・。」

Bさん「国内いろんなところに拠点があるけど、

    とりわけつくば市にある宇宙センターが有名だね。」

Aさん「だね。

    種子島には射場があるよね。」

Cさん「それに私達が住む街より少し南に行ったところにも

    研究施設があるわ。」

Aさん「ええ、はい。」

Bさん「そんな JAXA さんですが、このたび宇宙飛行士候補者を

    募集する事になったわけですよ。」

Aさん「宇宙飛行士?

    んっ、あぁ、だからパイロット?」

Cさん「そう言う事ね。阿部さんようやく気付いてくれたわね。

    本当に阿部さんは読解力がないわね。」

Aさん「いや前提なしにいきなりパイロットになりたいって言われて

    それでここまで読み取れとか無理筋にも程がありますよ?

    行間広すぎて GPS でも位置情報見失うレベルでしたよ?」

Cさん「あらここで人工衛星の話題に繋げて来るなんて

    意外とやるじゃない。」

Aさん「(めっちゃたまたまでしたけどね)」

Bさん「まあともかく JAXA さんが求める宇宙飛行士候補者ですよ。」

Aさん「あぁ、うん。それに興味があるって事?」

Cさん「そう言う事ね。

    言っても本当に宇宙飛行士になるには様々な試験や訓練を

    クリアしなければならないわ。

    阿部さんも今のうちから真っ白なジグソーパズルに

    挑戦しておいたほうが良いわよ。」

Aさん「いやなんでぼくも一緒に受ける事になってるんです?」

Bさん「阿部さんの素質的に選抜を突破できるとは到底思えないけどね。」

Aさん「いやそう言う・・・いやまあ、

    実際のところそれはそうだとは思うけども・・・。」

Bさん「なんだけど、残念ながら諦めようと思う。」

Aさん「えっ早。なんで?」

Cさん「少女が夢敗れる瞬間よ。

    こんなに切なく悲しく胸を打つ物語があるかしら。」

Aさん「いや本来ならそうだと思いますけどね?

    なんか諦める理由があるって事?」


Bさん「募集要項の中にこんな条件がある。

    『以下の医学的特性を有すること。

     身長 149.5-190.5cm』」

Aさん「んっ・・・おぉっ・・・。」


 他にも色々条件クリアしてないけどな。

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